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資金循環統計(16年1-3月期)~個人金融資産は前年比10兆円減の1706兆円、株安・円高で大きく目減り

ZUU online 6月17日(金)18時40分配信

■個人金融資産(16年3月末): 15年12月末比では35兆円減

2016年3月末の個人金融資産残高は、前年比10兆円減(0.6%減)の1706兆円となった。前年比での減少は2010年6月末以来のこととなる。年間で資金の流入超過が15兆円あったものの、株価の下落と円高の進行を受けて、時価変動(*1)の影響がマイナス26兆円(うち株式等がマイナス14兆円、投資信託がマイナス10兆円)発生したためだ。

四半期ベースで見ると、個人金融資産は前期末(15年12月末)比で35兆円の減少となった。例年1-3月期は一般的な賞与支給月を含まないことからフローで流出超過となる傾向があり、今回も13兆円の流出超過となった。

さらに、1-3月期は中国不安の再発や原油価格下落などから株安・円高となったため、時価変動の影響がマイナス21兆円(うち株式等がマイナス16兆円、投資信託がマイナス4兆円)発生し、資産残高を大きく目減りさせた。

ちなみに、家計の金融資産が、既述のとおり1-3月期に35兆円減少する一方で、金融負債は10兆円増加したため、金融資産から負債を控除した純資産は、1316兆円と、15年12月末の1360兆円から44兆円減少している。

なお、その後の4-6月期については、一般的な賞与支給月を含むことから、例年フローで流入超となる時期にあたる。ただし、米利上げ観測の後退や英国のEU離脱懸念などから、4月以降も株安・円高が進行しているため、足元の個人金融資産残高は3月末から殆ど増加していないと推測される。

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(*1)統計上の表現は「調整額」(フローとストックの差額)だが、本稿ではわかりやすさを重視し、「時価(変動)」と表記。
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■内訳の詳細: 投資信託から資金が流出

1-3月期の個人金融資産への資金流出入について詳細を見ると、季節要因(賞与等)によって例年同様、現預金からの資金流出(取り崩し)が多い。近年の同時期と比べると、現金からの資金流出が少ない一方で、定期性預金からの資金流出が拡大している。マイナス金利政策導入の影響で、定期預金金利がほぼゼロにまで引き下げられた影響が出たものと考えられる。

リスク性資産に関しては、株価下落局面での押し目買いもあったとみられ、小幅ながら株式等へ資金が流入した(0.7兆円増)。一方、投資信託は例年この時期には資金流入が進みやすいが、今回はわずかながら資金が流出(0.1兆円減)している。

マイナス金利導入に伴う運用難によってMMFの販売停止が相次ぎ、一部で払い戻しが行われた影響が大きいとみられる。実際、MMF・MRFから見た資金流出入(家計以外も含む)は1-3月の間に2.1兆円の流出超過となっている。

なお、株と投資信託に外貨預金や対外証券投資などを加えたリスク性資産の残高は264兆円、その個人金融資産に占める割合は15.5%と、12月末の282兆円、16.2%からそれぞれ低下している。株価下落等によって時価が減少した影響が大きい。

その他証券では、信託受益権(貸付信託等)への資金流入が顕著だが、要因は不明。

今回はマイナス金利導入後初の公表であるだけに、個人金融資産の動きに特に注目していた。既述のとおり、投資信託からの資金流出は特殊要因もあり評価が難しいが、株式等に資金が流入したほか、対外証券投資への資金流入(0.6兆円、前年同期は0.01兆円)も目立った。

全体から見ればわずかな変化ではあるが、預金金利がほぼゼロとなる中で、一部家計が収益性を求めてリスク性資産投資を積極化した可能性がある。

■その他注目点: 企業の資金余剰が大幅増、現預金残高は過去最高を大きく更新

15年度の資金過不足を主要部門別にみると、従来同様、企業(民間非金融法人)部門と家計部門が資金余剰となり、一般政府の資金不足を補い、残りが海外へ流出した形となっている。

前年度からの変化では、業績が好調であった企業の資金余剰が30兆円(前年度は9兆円)と大きく増加する一方で、家計の資金余剰が4兆円(前年度は19兆円)と大きく減少した。

また、3月末の民間非金融法人のバランスシートを見ると、現預金残高は261兆円と、過去最高であった12月末の245兆円から17兆円増加し、過去最高を大きく更新した。

例年年度末に現預金が増加する傾向があるものの、前年同期と比べても、20兆円増加している。負債サイドの借入金はこの間にほぼ横ばいであったため、純借入金残高(借入金-現預金)は95兆円と、12月末から17兆円減少している。

国庫短期証券を含む国債の3月末残高は1075兆円と、12月末の1034兆円を大きく上回り、過去最高を更新した。前年比では54兆円の増加となる。

国債の保有状況を見ると、従来減少が続いていた預金取扱機関(銀行など)の保有高がわずかに増加(239兆円、12月末比2兆円増)したが、分母となる全体の国債残高が大きく増加したため、保有シェアは引き続き低下(22.3%、12月末は22.9%)した。

一方、異次元緩和で国債の大量買入れを継続している日銀の保有高は引き続き大きく増加(364兆円、12月末比33兆円増)し、シェアも33.9%(12月末は32.0%)まで上昇した。日銀のシェアが初めて1/3を突破したことになる。なお、海外部門の保有高は110兆円と12月末から1兆円増加したが、シェアは10.2%(12月末は10.5%)と若干低下している。

最後に、国内銀行・保険・年金基金(の合計)の1-3月の資金フローを確認すると、現金・預金の流入超過(主に日銀当座預金)が急ピッチで進んだ点、国債からの流出超過が進んだ点は例年と変わりがない。ただし、貸出が流出超過に転じている点、対外証券投資への流入超過が急拡大している点は特徴的だ。

日銀はマイナス金利政策導入の狙いの一つに、ポートフォリオ・リバランス(リスク資産への資金シフト)を挙げており、金融機関等でも実際にポートフォリオ・リバランスが起こったようだ。ただし、資金のシフト先は海外資産(対外証券投資)に集中している。

上野剛志(うえの つよし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 シニアエコノミスト

最終更新:6月17日(金)18時40分

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