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立命館大、iPS細胞での再生網膜機能を数理科学で評価

日刊工業新聞電子版 6月17日(金)11時40分配信

 立命館大学システム視覚科学研究センターは7月に、iPS細胞(人工多能性幹細胞)による再生網膜の機能を数理科学(用語参照)で評価するプロジェクトを始める。機能評価は一般的に移植後の経過観察など生物学的手法に頼っていたが、数理モデルを使ってシミュレーションすれば効率的な研究につながる。数理科学は政府の第4次産業革命でも重視されている。高齢化社会でニーズの高い最先端医療技術の実用化を後押しする事例として注目される。

 高橋政代同センター客員教授(理化学研究所プロジェクトリーダー)が取り組むiPS細胞の網膜の再生医療に応用する。再生組織の低コスト化に向け、絞り込んだ機能で本来の組織の代替として使えるかを検証する。

 プロジェクトではまず、網膜の動作原理を分析し、細胞と情報処理の回路をモデル化した数式を確立する。この数式をコンピューターシミュレーションに適用すると、刺激を入力として与えた時、高次の視覚情報処理がなされて大脳視覚野に送られる反応が出力として得られる。再生網膜と本来の網膜のデータを使ったシミュレーションで、この入出力を比較。機能を定量的に評価し、実用的な再生網膜かどうか調べる。

 立命館大システム視覚科学研究センターは細胞が協調して複雑な情報伝達をする脳研究の一つとして網膜を研究対象とする。生物系の神経科学と情報科学の異分野融合が特徴。

【用語】数理科学=数学的な論理や定理証明を基に、現象を解明したり課題を解決したりする学問分野。数学、統計学、暗号科学、計算機科学、計量経済学などを指す。複雑な仕組みを評価するには数理的モデルの記述が必須となり、医療、経営、農業など新分野への応用が注目されている。政府の「日本再興戦略」に基づいて文部科学省は、大学における数理科学と異分野の融合研究を推進している。

最終更新:6月17日(金)11時50分

日刊工業新聞電子版