ここから本文です

[2016年 参院選] 広島ルポ 中山間は置き去りか 景気回復、地方創生・・・実感できぬ

日本農業新聞 6/17(金) 12:30配信

 22日の参院選公示まで1週間を切り、経済政策「アベノミクス」の効果について各党首が舌戦を繰り広げている。大胆な金融政策や構造改革で景気を回復させ、地方創生につなげると与党はアピールするが、中山間地域を抱える農山村の受け止めは冷ややかだ。米価は低迷し、人口流出が進み、地元の小学校は統廃合が進む。中山間地は置き去りか――。現場からは「国の施策からこぼれ落ちてしまう」と、悲痛な声が上がる。

農地狭く高齢化 担い手経営先細り TPPで不安さらに

 今回の参院選で安倍晋三首相が前面に押し出す経済政策。農業では所得倍増を打ち出した2014年の衆院選に続いて、「この道で力強く前進する」と訴えるが、小規模農地を抱える中山間地域では、景気回復を実感できる農家は少ない。

 広島県北東部の庄原市で農業を営む藤本聡さん(37)も同様だ。

 現場では、農家の高齢化と米価低迷で、農地を預かってほしいという声は年々増える一方だ。だが受け皿となる担い手の経営は厳しく、慢性的に人手が不足している。「TPP(環太平洋連携協定)合意で、政府は海外との競争力を強めるというが、われわれの地域はそうした政策からあぶれてしまうのではないか」と気をもむ。

 集積が難しい傾斜がきつい農地では、政府が主導する農地中間管理事業は機能しない。農地は宙に浮き、荒廃が進む。藤本さんの集落も例外ではない。自身が経営する法人は約40戸から43ヘクタールを預かるが、面積はここ1年で4ヘクタール増えた。地権者との貸借契約の更新が数年後に迫るが、再び全てを預かれるのか、不安だという。

 「この地で生きる農家として、全ての農地を守りたい。でも経営者の立場に立てば、きれい事ばかり言えない。米価の低迷、TPP合意で経営の先行きは厳しい」。農業経営が成り立たなければ、農地は守れず、地域も守れない。アベノミクスによる経済効果はこうした農村に届いていないのが実態だ。

また廃校 集落の機能保つ政治を

 「地方創生」についても、現場の見方は懐疑的だ。政府は「まち・ひと・しごと創生基本方針」で人口減を食い止め、都市への一極集中を防ぎ、地方回帰を進めようと青写真を描く。

 だがその一方で、地域コミュニティー維持に欠かせない小学校について文部科学省は、学校区の範囲を広げて「通学時間1時間以内」という目安を示した。これまでは徒歩通学を意識して自宅からの距離が小学校で4キロなどとしていたが、このままでは統廃合が一層、加速しかねない。

 庄原市の山本一守さん(50)が管理する農地から程近い小学校も、15年春に廃校になった。「農政も地域政策も、言うこととやることが逆。結局、地方創生もキャッチフレーズとして打ち出しただけ」と山本さん。

 政治に求めるものは何か。「規模拡大を進め、小規模農家の退場を促すような施策には反対。コミュニティーを守る役割を担う中山間地の農家が、農業にずっと携われる仕組み作りこそ必要だ」。農村に寄り添う政策を打ち出す候補者に一票を投じる考えだ。(橋本陽平)

日本農業新聞

最終更新:6/17(金) 12:30

日本農業新聞