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【いま大人が子供にできること(11)】子供が楽しんでいるかどうかが大切

ニュースソクラ 6月17日(金)18時0分配信

「絵本は本だから読まなきゃ」と思うなかれ

 『ぴょーん』(ポプラ社)という絵本があります。

 これは一枚目の見開きに、座ったカエルの絵が描いてあって、二枚目を開くとぴょーん、と飛んでるカエルが描いてある、という仕組みになっています。

 つまり、この本を読んでやってきゃっきゃっと笑うのなら、その子はもう一枚目と二枚目が連動している、ということがわかっている、ということになるでしょう(ちなみに、三枚目と四枚目、というように、二枚一組で全ページ連動していて、全体としてのオチもつきます)。

 この絵本は赤ちゃんから年長さんあたりまで、多年齢の子どもに幅広くウケるのと、縦横50センチくらいある大型本もあるので、赤ちゃんの検診のときの読み聞かせにもよく使われています(検診にはきょうだいが一緒にくる赤ちゃんも多いので、多年齢にウケる本が必要なのです)。

 見たとたん、ハイハイしてカエルを触りにくる赤ちゃんも多いです。

 それがかつては7ヶ月とか8ヶ月だったのですが、いまではもっと小さいのに喜ぶ子も増えてきている感じがあります(こういうことのかつての統計はないので、証明はできないのですが)。

 赤ちゃんの絵本、というのは基本、図鑑のように見開き一枚ずつで完結する…… つまりストーリーのないものです(この前紹介した「だるまさんが」は、基本、見開き一枚ずつの完結で、そうやっても楽しめるし、全体を連続して楽しめるようにもなっています)。

 で、この二つが連動する、という段階のものは、別に絵本でなくてもかまわないのです。

 私の知り合いがあるとき公共図書館にいったところ、一人のお父さんが娘さん(ハイハイしてるくらい)と赤ちゃん用のちょっと高くなっているカーペットスペースにいて、太陽の描いてある絵本の表紙だけ使って、カーペットの縁から、は~い、お日さまがでましたよ~、沈みましたよ~、と出し入れするだけ! をやっていたそうです。

 娘さんはもう大喜びできゃっきゃっいって笑い崩れていて、それがまた、あまりにもうまくて面白かったのでついみいってしまい(大人でも面白かったそうな)気がついたら人だかりができていたそうなんですが、そのお父さんは有名な役者さんだったらしいです。
 さすが……。

 絵本は本なんだから、読まなきゃだめだ、と思ってらっしゃるかたは多いです。はじめから読んで、おわりまで読まなきゃだめだ、と思ってらっしゃるかたも……。

 日本人て、基本、真面目なんですよね。
 でも、本は道具で、どんな使い方をしてもかまわない……。そりゃ、破いたり叩いたりは困りますが、本からどれだけの楽しみを引っ張り出せるかは使い方次第……。

 というような使い方ができるのも赤ちゃん時代が中心で(ストーリーがわかるようになると、その完成された世界を楽しみたくなってしまうので)それが赤ちゃんに本を出すこちらの楽しみでもあるのですが、大事なことはそうやって子どもが知的に刺激されて喜ぶこと、楽しむこと、なのです(だから嫌がったらやめてくださいね)。

 人間の子どもは幸福でないとまずいのです。幸福でないとすくすくと成長できなくなるからです。
 子どもには、できればその子の遺伝子情報に載ってる設計図のめいっぱい、大きく強くなってもらいたい……。

 でも、いくら遺伝子上では大きくなるはずの子どもでも、ご飯を食べさせてもらえないと、からだは大きくなれません。
 それと同じように心配事があり、心から楽しんで満ち足りていないと、人間の子どもは精神的にすくすく大きくなることが難しいのです。

 なぜ、大人が子どもに本を読んでやるのか……。

 それは、子どもが成長するのに必要な知的な刺激と知識を運んできてくれる、大人にとっては一番手っ取り早くて楽な、道具だからです。
 そう、本は楽! なんですよ。

 本なしでも本と同じ刺激を与えることはできます。話してやればいいのです。

 でもそうなると、あらかじめ話せるだけの知識を持ち、それを子ども相手に噛み砕いて話してやる技術が要ります。

 それが大変だから、既製品の、本に頼るのです(そうして読んでやっていると自分も知らなかったことにぶつかって、自分の知識も豊かになります)。

 でも本は目の前の子どもにあわせて作られているわけではないので、本という商品はその子を見て、その子に合わせて選んでくることが大事になってくるのです(既製品というのはオーダーメイドではないので、服だって手当たり次第持ってきたら似合わないし、サイズもあわなくて着られない可能性のほうが高いでしょう)。

 前にも書いたかもしれませんが、外に連れていけるようになったら図書館に、本屋に連れていって「どれにする?」とご本人に聞いてください。

 そうしてその読み方も、途中でひっかえしてもよし、さかさまに読んでもよし、本人が読んで欲しいように、読んでやってください。

 何を読んでいるかより、どう読んでいるかより、「結果的にどれだけ深く楽しんでいるか」の質が、問題なのです。

■赤木 かん子(本の探偵)
1984年、子どもの本の探偵としてデビュー。子どもの本や文化の評論、紹介からはじまり、いまは学校図書館の改装からアクティブラーニングの教えかたにいたるまで、子どもたちに必要なことを補填する活動をしている。
高知市に「楽しく学校図書館を応援する会」として学校図書館モデルルームを展開中……。著書多数。

最終更新:6月17日(金)18時0分

ニュースソクラ