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ゲノム編集で初のがん治療臨床試験へ。米ペンシルベニア大が承認申請

ニュースイッチ 6月17日(金)14時8分配信

ゲノム編集の医療応用で日本は後れとる

 最先端のゲノム編集技術であるCRISPR/Cas9(クリスパーキャスナイン)を使い、米ペンシルベニア大学ががん治療の臨床試験に向けた適用申請をおこなっていることがわかった。来週開かれる「組み換えDNA諮問委員会(RAC)」の議題の一つとして、米国立衛生研究所(NIH)が公表したもので、MITテクノロジーレビューが伝えた。提案されているのはがんの免疫治療の一種。自分の免疫細胞の特定の遺伝子をCRISPRで働かないようにし、がんを攻撃しやすいようにするという。

 これまでにもHIVや白血病に対し、遺伝子を組み換えた免疫細胞による治療が試みられたことがあったが、CRISPRはそれらよりはるかに容易かつ正確に、さらに低コストで遺伝子操作が行えると考えられている。

 ペン大はすでに、今回提案した遺伝子組み換えでの免疫治療法の基本技術を確立済み。骨髄腫やメラノーマ(黒色腫)、肉腫といったがんに対するもので、体外に取り出した免疫T細胞の表面にある受容体のPD-1を遺伝子組み換えで除去し、体内に戻す。こうすることで、リンパ球の活性化を抑制するPD-1を利用して、がん細胞が免疫機構から逃れるのを防ぐ仕組みだ。

 21ー22日にNIHで開かれるRACで審査されることになるが、組み換えT細胞が患者自身の細胞を攻撃するようなことのないよう、副作用なども含め厳密にレビューされることになるという。NIHのキャリー・ウォリネッツ副所長も公式ブログで「ゲノム編集の応用は人類の健康にとって非常に大きなポテンシャルを持つ半面、懸念がないわけではない」としている。

 これ以外にも、CRISPRの発見者の一人、フェン・チャン博士が創設メンバーとなった米エディタス・メディシン(マサチューセッツ州)が、従来の遺伝子治療では難しい希少な網膜疾患などを対象に、CRISPRを使って2017年の臨床試験開始を表明している。だが、ペン大のほうがそれより先になりそうだという。

 ちなみに、全く新しい機序を持つ抗悪性腫瘍薬として注目される小野薬品工業の「オプジーボ」(成分名ニボルマブ)もPD-1に着目したもの。PD-1受容体を阻害することで、がん細胞を異物として認識・除去する免疫反応を高める作用がある。

《解説》
 CRISPRが登場して3年ほどになるが、関連の研究論文が次々と発表され、かなりのスピードで応用研究も進む。iPS細胞による再生医療も先行き有望だが、ゲノム編集の医療応用で日本は後れを取ってしまうのだろうか。

最終更新:6月17日(金)14時8分

ニュースイッチ

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