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[コラム]同盟強化の陰で消えない米兵犯罪

ハンギョレ新聞 6月17日(金)14時12分配信

 怖いもの知らずで、だからこそ世間の怖さも知らなかった20代前半のことだ。

 私は京畿道議政府(ウィジョンブ)にある米軍部隊の「キャンプ・スタンレー」のカトゥーサ(KATUSA/Korean Augmentation Troops to United States Army)だった。補職が憲兵だったため、週末には米軍の制式拳銃の「ベレッタ9」に実弾10発をこめ、部隊前の米軍クラブの取り締まりに出かけた。最盛期のキャンプ・スタンレー前の基地村は「一度足を踏み入れたら抜け出せない」という意味で「深い干潟」と呼ばれていた。しかし、私が勤務していた1990年代後半には10店舗あまりの米軍クラブが細々と営業を続ける基地村に転落していた。

 基地村の韓国人女性は多くはなかった。彼女たちが去った「干潟」を埋めたのは、フィリピンと旧ソ連出身の女性たちだった。基地村前のクラブにロシアの女性が新たに入ってきたと、部隊全体が大騒ぎになったことを思い出す。憲兵の腕章をつけてクラブを回っていると、薄暗い店内でポールダンスを踊る女性の姿を目にすることもあった。

 ソ・ジョンマンさんは、その基地村にある黒人専用のロクシー(Roxy)というクラブの片隅によく座っていた。黒人クラブでは騒々しいラップ音楽が、白人クラブでは幼稚なカントリーソングが流れていたが、不思議にもこの二つは絶対交わることがなかった。そこで厚化粧のソさんを見かける度に、「あの年で、ここで何をしているのだろう」と軽蔑めいた視線を送ったこともあった。

 時は過ぎ、私が兵長になった頃、ソさんは2000年3月11日、部隊前の古びた屋根裏部屋で亡くなったまま発見された。 40代後半くらいだと思っていたソさんの年齢は68歳だった。いつも話しかけても返事がなかったため、不思議に思っていたが、ソさんは聴覚障害者だった。遺体の両目と口元にはひどいあざが残っており、上半身裸のパンツ姿で、歯が2本折れていた。米軍に類似性行為をする代わりに、少しばかりの金をもらって生活していたことを知った。 綺麗だったソさんの20代の白黒写真を見ながら、分けもなく涙がこみ上げてきたことを憶えている。

 どのぐらい多くの韓国人が共感しているのか定かではないが、今、沖縄の怒りは爆発寸前である。今回の怒りの導火線となったのは、元米海兵隊で軍属のシンザト・ケネフ・フランクリン容疑者(32)が、今年20歳になったばかりの沖縄の女性に性的暴行を加えた後、惨殺した犯罪事件だ。以降、オバマ大統領が遺憾の意を表し、再発防止を約束したが、沖縄の怒りは収まっていない。

 NHKは15日にも、沖縄の事態に関する内容を放送した。朝8時15分から始まる人気情報番組の「あさイチ」で沖縄問題が取り上げられ、夜10時に放送される報道情報番組の「クローズアップ現代」でも沖縄が登場した。番組を注意深くみていたが、これといった解決策はなく、「沖縄に関心を払うべきだ」というありふれた結論を下しただけだった。

 ソ・ジョンマンさんの事件は、いまだ解決されていない。除隊後、韓国警察が有力な容疑者の米軍を一度も直接尋問できず、米軍犯罪情報捜査隊(CID)が彼を本国に連れ出した疑惑があるという事実を知った。

 東アジアでの米軍の存在理由とは何なのか。夜12時を過ぎても様々なことが頭をよぎる。米中の対決、北朝鮮の核問題、米軍の抑止力、これを最大化するための米日同盟の強化。これに対抗する中国の接近阻止・領域拒否(A2AD)戦略と、朝鮮半島のどこかに配備されることになる米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)。もう跡形もなく消えたコウノトリの生息地を守ろうとした平沢(ピョンテク)農民の涙のトラクターと、沖縄辺野古の海岸を守ろうとする市民の切実な反対運動。ユン・グムイ、ソ・ジョンマン、そして殺害から2週間以上もスーツケースの中で朽ち果てていった沖縄の女性、島袋里奈。

キル・ユンヒョン東京特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

最終更新:6月17日(金)14時12分

ハンギョレ新聞