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地震に負けない。100万円でできる”一室”補強

SUUMOジャーナル 6月17日(金)7時0分配信

いつやってくるか分からない大きな地震への備えとして、古い住宅の耐震補強が注目されている。しかし木造住宅の場合、一軒をまるごと耐震補強するとなると、手を加えなければならない箇所が多く、仮住まいも必要になり、費用の負担も多い。そこで、注目したいのが、家の中の一室だけ耐震補強する「壁柱(かべばしら)」工法だ。いざというとき、家の倒壊を防ぎ家族が生き残るための備え、「壁柱」工法を解説しよう。

■震度7以上の揺れでも耐震壁で倒壊を防ぎ、人の命を守る

近年、日本で起こった大震災で、津波災害を除けば死者の大多数が、住宅倒壊による圧死が原因とされている。阪神・淡路大震災における死因の8割は家屋の倒壊による窒息・圧死だった(平成7年度版「警察白書」より)。建築基準法の「新耐震基準」は1981年に導入されたが、特にそれ以前の「旧耐震基準」で建てられた住宅も多く残っており早急な対策が必要だ。

地震による住宅の倒壊を、なぜ防がなければならないのか。重量物である梁や屋根が落ちてくることによって、生命が奪われることはもちろんだが、住宅の倒壊によって、構造物や部材が散乱し、外の通路や道路を塞ぐことになる。これにより、救助隊の進入などに大きな支障をもたらすのだ。

倒壊を防ぐため一般的な木造住宅の耐震補強となると、基礎から、構造躯体の接合部、壁、屋根と多岐にわたり、数百万円の費用と数カ月の工期が必要となる。

そこで、住宅一棟を補強する考えに変えて生まれたのが「一室補強」という考え。一般社団法人大阪府木材連合会が京都大学防災研究所との共同研究で生み出した「壁柱」工法という耐震補強技術だ。

【画像1】壁柱の模型。赤で囲った部屋が耐震壁で補強されている(写真撮影:コハマジュンイチ)

建物全体を補強するのでなく、揺れを吸収する壁に囲まれた一室だけ補強することによって、建物は壊れても倒壊を防ぎ、人の命は守るということを主眼に置いている。

■角材を連結したパネルの壁が、揺れを吸収し倒壊を防ぐ

リビングや寝室など、一棟の住宅の中で柱と壁に囲まれた一室。この壁の中にスギの角材をボルトで連結したパネルを埋め込み耐震壁として補強するのが「壁柱」工法だ。

【画像2】左:実際の壁柱。右:角材をボルトで連結しており、地震による水平の力に対して変形性能が高い(写真撮影:コハマジュンイチ)

角材を連結したパネルは一般的な合板のパネルと違って、変形性能が高く元に戻ろうとする力が働く。つまり、「やなぎに風」のように、揺れを吸収することで家屋全体の重さがかかっても倒壊を防ぐ。京都大学防災研究所の実物大振動実験では震度7と言われた阪神淡路大震災の1.2倍の振動を与えても倒壊しなかった。

生存空間を確保するといえば、いわゆるシェルター補強と思われがちだが、シェルターは構造躯体との連結がなされないため、建物の倒壊は防げない。一方で「壁柱」は揺れに対して自ら変形し揺れを吸収し、家全体の重さを支えて倒壊を防いでくれる。

一棟全体の耐震補強では、数百万円かかる費用も、「壁柱」工法では部屋の大きさにもよるが80万円から100万円と言われている。工期も1週間から10日間と短期間ででき、工事中の引越しも不要だ。

一般社団法人大阪府木材連合会は、「壁柱」工法の部材にスギの間伐材を使用している。需要が減少している国内の森林資源の有効活用を図るためだ。「壁柱」施工は、同連合会が認定した技術レベルを持った国内の材木店や工務店が担う。お住まいの近くに、「壁柱」工法を扱う材木店や工務店が見つからない場合は、直接、一般社団法人大阪府木材連合会に問い合わせをすれば、紹介してもらえる。

大きな地震が来るたびに、古いわが家は大丈夫だろうか。と思いつつ、費用的にも踏み切れなかった木造住宅の耐震補強。壊れても、倒壊させず、生き延びるために何をすればいいのか。このように考えを転換させれば、住宅の地震への備えも、すこしハードルが低くなったと思われるが、いかがだろうか。

●取材協力
・一般社団法人 大阪府木材連合会

コハマジュンイチ

最終更新:6月17日(金)9時23分

SUUMOジャーナル