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AV出演強要「一度発売された作品の削除は困難」 弁護士が契約解除交渉を振り返る

弁護士ドットコム 6月18日(土)10時2分配信

アダルトビデオ(AV)の出演強要問題について、NPO法人ヒューマンライツ・ナウが今年3月に被害実態をまとめた報告書を発表してから、関心があつまっている。

6月には、20代の女性をAV撮影現場に派遣したとして、大手プロダクションの社長ら3人が労働者派遣法違反の疑いで逮捕された。「モデルの仕事」と説明して契約を結んだあと、AV出演を迫ったという。

エンターテインメントに関する法律にくわしい高木啓成弁護士のもとにも、AV出演をめぐるトラブルについての相談が複数寄せられたことがあるという。実態はどうなっているのか、高木弁護士に聞いた。

●スカウトからLINEでしつこく勧誘された

−−一連のAV出演強要問題をどう見ていますか?

今回の逮捕により、この問題が、より社会に認知されることになるのではないかと思います。弁護士会の委員会などでも、この問題に積極的に取り組もうとする動きが出始めているようです。

被害件数はごくわずかだというような意見もあるようですが、被害件数が多い、少ないでなく、現実にある被害にどう対応するかという問題です。

−−被害に遭うきっかけはどのようなものなのですか?

大きくいって、2パターンあります。1つは、一般のモデルやタレントの芸能プロダクションを装って、スカウトされるパターンです。もう1つは、キャバクラやガールズバーなど、高収入バイトを紹介するといって勧誘されるパターンです。

ある女性は、スカウトから「高収入バイトに興味ないか?」と声をかけられ、その後LINEでしつこく勧誘されたため、「キャバクラやガールズバーなら・・・」くらいに思っていたようです。しかし、最終的にサインしたのは「専属モデル契約」。その後、数本のAVに出演することになりました。

●杜撰な契約内容だった

−−契約の際に監禁されたり、脅迫されるようなことはあったのでしょうか?

私がこれまで相談を受けたケースでは、契約の際には、監禁や脅迫はなかったようです。ただ、被害者の方たちは、性格的に断りづらかったのだろうと思います。また、契約当時は未成年の方もいました。年齢的にも、冷静に判断してサインすべきかどうか見極めることができなかったのでしょう。

−−契約書にはどんなことが書かれているのでしょうか?

ある契約書を例に取ると、制作会社(メーカー)から受託して、映像メディアに出演するというアバウトな内容です。具体的にどういう業務をするのか、明確にしていない杜撰なものです。

また、損害賠償や著作隣接権の譲渡、雇用関係は一切生じていないことを確認する条項があります。

−−いわゆる「出演強要」ということでしょうか?

被害者は「出演しないのならば、損害賠償が発生する」「親に話す」「親にも請求する」などと言われて出演していますので、強要だと考えられます。

ある被害者は、初めから出演するつもりがなく、数本撮影されるうちに本当にやめようと思い至った。それで、(1)今後、出演したくない、(2)今ある作品を削除したい、と相談に来ました。

●未成年は「契約」を取り消せる

−−プロダクションとは、どんな交渉をするのでしょうか?

未成年の場合、成年と比べて経験がなく、判断能力も未熟なので、法律上、契約を取り消すことができるとされています(民法5条)。ある未成年の相談者の件は、プロダクションとの契約をすぐに取り消すことができて、この方は、それ以降、AVに出演しなくてよくなりました。

一方で、今ある作品を削除したいというのは、とても難しい。というのも、作品の権利は、プロダクションではなくて、メーカー側がもっているからです。

法律的には、未成年が契約を取り消せば、契約時にさかのぼってすべて無効になりますので、メーカーに対しても差止めを請求できるはずです。しかし、交渉段階では差止めに応じないメーカーもあります。また、いったん流通にのって、消費者に購入されたものは、手の出しようがありません。

●割に合わないどころじゃない「出演料」

あるケースでは、メーカー側からの弁護士から、金銭での解決を提案されたことがあります。たしか、60万円程度の金額を支払えば差止めに応じるという内容だったと思います。メーカー側の言い分は、プロダクションに払ったギャラや撮影にかかった費用がそれくらいだったということです。

しかし、この女性は出演1回について、出演料として数万円しかもらっていませんでした。割にあわないどころじゃなく、下手したら永久に流れつづけるのに、あまりにも低い金額だったのです。

−−成年の場合は?

成年の場合であっても、AVへの出演は出演者の意に反して従事させることが許されない性質のものであるとして、出演を拒否することが裁判で認められています。

したがって、たとえプロダクションと契約を締結した後であっても、出演を拒否することはできます。

−−女性たちにアドバイスすることは?

スカウトについていかなかったり、契約をしないことが大事ですが、やはり契約しても解除できることを知ってもらいたいと思います。

解除の方法は簡単です。プロダクションとのやりとりがLINEの場合は、LINE上で「貴社との契約は解除します」「今後一切出演しません」ということを明確に伝えればいいだけです。

LINEだと不安という人は、配達証明付き内容証明やレターパックライトを使いましょう。それでも出演を強要してくるようだったら、支援機関や弁護士に相談してください。

(了)

弁護士ドットコムニュース編集部

最終更新:6月18日(土)10時2分

弁護士ドットコム

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