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宿泊業の「特別清算」が倍増した理由とは? その背景とインバウンド効果の2極化を解説 【コラム】

トラベルボイス 6月18日(土)17時0分配信

「倒産」というと、会社が破綻し無一文になってしまうような暗いイメージが付きまといますが、最近の宿泊業倒産ではインバウンド需要等の追い風も受け、再出発のための「特別清算」が増加し、再建への動きが顕著に表れています。

宿泊業では「再出発」のための特別清算が増加

一言で「倒産」といっても、その形態は「破産」のように会社を清算し消滅させてしまうものから、「会社更生法」や「民事再生法」のように債務をカットし再生手続きに入るものなど様々です。宿泊業ではこの倒産形態のうち本来消滅型である「特別清算」を再出発のための通過点として利用するケースが増加し、2015年度(2015年4月~2016年3月)では26件と前年度の2.6倍も増えました。

宿泊業の特別清算は旅館やホテル事業など運営に係る業務は別会社に移して継続し、元々あった会社は借入金等の債務を清算するために特別清算を利用して、会社ごと清算消滅させる手続きが多くなっています。つまり第二会社方式によって事業を再生させようとする手続きです。

特別清算は本来、消滅型手続きであり、解散した会社について債権者との調整を図りつつ、残った債務を清算し会社を消滅させる倒産処理法です。会社を清算する手続きなので、明るいイメージとは捉えられませんが、宿泊業の需要に追い風が吹き、第二会社を利用して再出発するためと考えれば、前向きな処理と言えるのではないでしょうか。

破産と特別清算の全体傾向は?

ここで示したグラフは2009年度から2015年度の宿泊業の倒産件数(東京商工リサーチ調べ)を示したものです。下段の棒グラフは宿泊業全体の倒産件数で、上段の折れ線グラフがその内訳として破産と特別清算の件数を示したものです。棒グラフの宿泊業全体の倒産件数は近年低水準に推移し、東日本大震災が発生した2011年度は141件でしたが、2015年度では92件と景気回復とともにその6割5分程度のところまで来ています。

これに連動するように破産も2011年度75件が2015年度では59件に減少。ところが、特別清算は2011年度19件が2015年度26件と1.4倍近く増加しています。

最近の国をはじめ関係機関の中小企業対策では、各種の金融支援を行い、事業再生のための取り組みも積極的に行われています。こうした効果が宿泊業全体の倒産件数減少に影響していると考えられ、これはその他の業種についても同様で、全体的に企業倒産は減少傾向に推移していると言えます。

石川県にある温泉旅館が2015年3月に特別清算開始決定を受けました。同社は経営者の世代交代を機に金融機関より支援を受け、債務整理を実施することとしました。会社分割により旅館業務を新会社に移管し、旧会社は金融機関等の債権者の了解を得て特別清算手続きに入りました。旅館の屋号は新会社が引き継いでいることから、宿泊客には外見上、全く変化があったようには見えません。北陸新幹線が開通し、業績もそれまでの2割以上の増収が見込めることから、このような手続きをとったものでした。

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最終更新:6月18日(土)17時0分

トラベルボイス