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英のEU離脱「本当のヤバさ」とは? 日経平均は最大3000円下落も

ZUU online 6月19日(日)10時10分配信

イギリスは欧州連合(EU)に残留すべきか、離脱すべきか、是非を問う6月23日の国民投票に世界の耳目が集まっている。英国離脱が決定した場合、短期的にはリスク回避の動きでポンド急落、ユーロ安、新興国通貨安、円高、株安、債券高(金利低下)などが予想される。金融市場の動揺が起き、日米欧の中央銀行が金融市場への緊急のドル資金供給を迫られる可能性もある。

■英離脱の本当の「ヤバさ」 グローバル化のうまみが無くなる

では、英離脱がどれだけ「ヤバい」のか、具体的に見ていこう。まず、「英経済は短期的に景気後退に陥り、50万人強が失業する」と英財務省が試算している。経済協力開発機構(OECD)は、「離脱で英国の国内総生産(GDP)が2030年までに最大7.7%落ち込む」とする。一方、英シンクタンクのオープン・ヨーロッパは、「離脱の悪影響は小さく、GDP下押し幅は、0.5~1.5%にとどまる」と見ており、見解は割れている。いずれにせよ、離脱で英国は貧しくなるというのが共通した見方だ。

だが、英離脱の本当の「ヤバさ」は、世界経済の標準となった国境や規制の撤廃によってもたらされるグローバル化の「うまみ」が、薄れるきっかけになることだ。デイビッド・キャメロン英首相は6月12日、「残留すれば、多くの(域外からの)投資が期待できるが、離脱すれば今後10年の先行きは不透明になる」と警鐘を鳴らした。

英国の最大の貿易相手地域はEUであり、輸出の40%を超える。EUを離脱すれば、これまでゼロだったEU加盟国との関税が復活し、ビザ無しで域内を自由に移動できる特権も失い、貿易規模が縮小する。企業活動のコストが確実に増え、収益を抑圧するわけだ。

■日本企業への打撃も深刻 日経平均3000円下落の試算も

英国には、自動車や金融を中心に1089社の日本企業が進出し、ヨーロッパ市場の統括拠点として位置付けている。2014年末時点の対英直接投資の残高は9兆2626億円で、米・中・蘭に次ぐ第4位だ。英国がEU加盟国であり、関税やビジネス費用を域内で低く抑えられるメリットがあることが、最大の理由である。

そのため、経団連の榊原定征会長は、「英離脱によって、日本企業に大きな影響が及ぶ懸念がある」と懸念を表明。みずほ総研は、英離脱で日本のGDPが0.1~0.8%の下押し、日経平均株価が1000~3000円程度の下落をすると試算している。日本貿易振興機構(JETRO)は、「ビジネスの利便性や雇用の面から英国以外の国に欧州の拠点を移転するなど、見直しを迫られるケースも出てくる」と予測する。

グローバル化の波に乗って英国に拠点を構えた主な日本企業は、現地で鉄道車両を製造し、原子力発電所も建設する日立製作所、2015年に英国で生産された乗用車158万台の半数近くの生産台数を誇る日産自動車・トヨタ自動車・ホンダ、同国にIT事業の中核拠点を置く富士通、世界金融の一大中心地ロンドンで活発に動く野村ホールディングスや三菱東京UFJ銀行など、数多い。

特に英国で生産された自動車の多くは、人口5億人の単一市場であるEU各国に向けて輸出されており、離脱で関税が復活すれば10%の輸入税がかかる。専門家は、「英国でのEU向け生産は、成り立たなくなる」と見ている。英国は離脱が決定しても3年間はEUに残留するため、日本メーカーはその間に英国から逃げ出すと予想される。

一方、今年度の鉄道事業の売り上げ目標を2年前のおよそ3倍に当たる5000億円に定めた日立は、英国高速鉄道の車両合わせて866両と27年間の保守点検事業をおよそ1兆円で受注している。同社の東原敏昭社長は5月18日、「英国がEUの一員であるからこそ鉄道工場を造り、そこからEUに展開する前提でいる。だから、離脱は絶対に反対だ」と、強い口調で語った。

翻って、全国銀行協会の國部毅会長は5月19日、「英国が離脱することになれば、日本で円高や株安が進む懸念もある。日本の銀行の事業が直ちに大きな影響を受けるとは考えていないが、中期的には大きな影響があるイベントだ」と述べた。

■「勝ち組」エリートが固唾を呑んで見守っている

このように、英離脱は日本企業を含むグローバル企業にも少なからず影響を及ぼす。だが、それは細部に過ぎない。離脱の真の影響は、自由貿易や規制撤廃・国境開放など、1980年代以来スタンダードとされた世界経済のあり方そのものがひっくり返る契機になり得ることだ。

離脱は、自由貿易によって地位が不安定になって職が失われたり、賃金が減ったりしている「負け組」労働者の主張の一部勝利を意味する。英国民投票の結果を見て、世界中の「弱者」「負け組」が、保護主義的な政策を求めて勢いづき、脱グローバル化の動きが加速するのだ。

米国とEUの間で交渉が進む環大西洋貿易投資パートナーシップ協定(TTIP)は、英国の離脱と米国内の保護主義の高まりで挫折しよう。もちろん、ただでさえ各国での批准が危ぶまれるTPPこと環太平洋パートナーシップ協定も巻き添えを喰って、頓挫する。

それだけではない。現行のEUの枠組みそのものの存続が危ぶまれることになる。離脱後、投資家はEU内の亀裂に注目し、財政不安を抱えるギリシャやポルトガルなど周縁国に圧力がかかる。EU崩壊の前兆だ。「英国がEU離脱なら世界恐慌の引き金になる」とする極論もある。

一方、政治的に安定した自由主義のメッカ英国で離脱ポピュリズムが勝利すれば、世界中の大衆迎合主義者が勢いづき、共和党のドナルド・トランプ候補が米国大統領に当選し、マリーヌ・ルペン国民戦線(FN)党首が、フランス大統領になる流れが起きると危惧する声もある。

自由貿易や国際共通ルール制定、規制緩和など過去30年ほどの大きな潮流が逆方向に渦巻きを始め、グローバル経済のあり方そのものが変わるのか。「勝ち組」である投資家や企業やエリートたちは、固唾を呑んで見守っている。(在米ジャーナリスト 岩田太郎)

最終更新:6月25日(土)12時5分

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