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【ライブレポート】HAYATO(→Pia-no-jaC←)「音を抜いても成立する」

BARKS 6月23日(木)8時35分配信

→Pia-no-jaC←/HAYATOの<HAYATO PIANO CONCERT>が、2016年6月18日、キリスト品川教会グローリア・チャペルにて開催された。この日は昼・夜の二回開催。HAYATOがソロでステージに上がるのは今回が初めて。一日の模様をレポートする。

◆HAYATO画像

本番前、楽屋にお邪魔すると、いつもと少し違う風景が見られた。普段、本番前はわりとリラックスしているHAYATOの表情が、かなり強ばっていたのだ。「初めてのソロなので、さすがに緊張しますね。教会っていうシチュエーションもあるし。→Pia-no-jaC←が始まって10年以上、いつも隣にHIROがいるんで。いないってなると“ん?”ってなるんです」と苦笑いしながら話す。しかし、「不安もありますけど、楽しみもありますね」と微笑む瞳に、この初めてのチャレンジを成功させたいという強い意思を感じた。

昼の部の公演がスタート。シックなスーツスタイルでHAYATOがステージに現れ、「組曲『』」の静かなアルペジオが流れ出す。会場の雰囲気も→Pia-no-jaC←とは異なるが、途中でHAYATOがオーディエンスにクラップを促すと、こちらも少々緊張気味の観客に笑顔が戻り、体が揺れ出す。「ずっと(ソロコンサートは)やりたかった企画なので嬉しい。せっかくこういう機会をもらったので、今回は敢えてマイクを通さず生音でやります」とHAYATOが語りかけると、会場からは大きな拍手が起こった。その後も多少の固さは感じさせつつも、非常に締まった演奏が続く。しかし、敢えて強い言葉を使えば、HAYATOが“覚醒”したのは「TASOGARE」だった。それまでより格段に集中度が上がり内へ内へと入っていく、本人もコントロールし切れていないような激情的なプレイに、思わずこちらも鳥肌が立ってしまう。続く本編最後の「残月」でも高揚感溢れるプレイで完全に場の空気を支配したHAYATO。アンコールでも→Pia-no-jaC←でお馴染みの「PEACE」をブルージーに奏で、昼の部は終了。

昼の部を終えて帰ってきたHAYATOは「こんなに(緊張で)指が動かないとは思わなかった」そうだ。しかし、その少し固い雰囲気は自身が望んだものでもあったという。「このシチュエーションの中で、本当のピアノの音をしっかりと聴いてもらいたかったんです。残響もすごく心地いい。お客さんの手拍子の音とかも響くんですけどね。それで凄く助けられました」と笑うHAYATO。夜の部に向けても「いい意味でリラックスできているし、昼とは違う、できることがあるとも思った。変えてみようかなと思うところもあります」と、休憩中も意欲的に楽屋のピアノに向かっていた。

さて、今回のライブでは、ソロコンサート用に制作した「Song of birds」も初披露。山の中のスタジオに籠もり、自身の原点である“見たもの、感じたものをそのまま曲にする”ことに立ち返り作られた楽曲である。しかしこの曲の制作に関しては、並々ならぬ苦労があったようだ。「ソロライブをやるということが決まった段階で、そのための新しい楽曲を書きたいという気持ちがあったんですけど、意気込みだけが凄過ぎて空回りして(笑)。鍵盤に向かうんですけど全然出来なくて、『ちょっとピアノを離れます』というところまでいったんです(笑)。陶芸にハマったりとか(爆笑)。でもそれで“ムダなものを削る”っていう感覚を覚えて。→Pia-no-jaC←では2人でどこまで音数を増やして表現できるか、っていうところが大きいんですけど、ソロでは音をどこまで削ってブラッシュアップできるかっていうのが大事だってことに気がついた」と制作秘話を語ってくれた。

ちなみに、この日は→Pia-no-jaC←の相方HIROも駆けつけていた。「見てるだけの方が緊張しますね(笑)。でも後半にいくにしたがって、凄く良くなっていって。『TASOGARE』なんかはソロピアノでずっと聴いてたいって思っちゃった(笑)。もちろん今日のHAYATOのプレイだったらこう絡みたいな~みたいなことも思ったけど、昼の部を聴いて、何も心配ないなと思いました」と笑顔で語る。しかし「嬉しい反面、悔しい気持ちもあるんですよ。自分でも何かやりたいなと、背中を押されたような感じです」と、コンビならではの気持ちも覗かせたのが面白い。

あっという間に中休みの時間が終わり、夜の部がスタート。昼の部の前よりは幾分肩の力が抜けたHAYATOがステージに向かう。一曲目、昼の部よりも余裕を感じさせる「組曲『』」でスタートし、二曲目のカバー曲「Dorothy/Dr.John」では、成熟した大人の色気を感じさせる情感たっぷりなプレイで魅了する。8月に発表されるニューアルバム『Cinema Popcorn』から初披露の「クワイ河マーチ」では、音のひとつひとつが生き生きと跳ね回り、新曲「Song of birds」ではどこまでも広がる旋律が景色を描いていく。

昼の部では命を削るかのようなプレイが刺さった「TASOGARE」。夜の部では作品として非常に完成度の高いものとなった。丁寧に楽曲に命を吹き込んでいくような真摯な音楽との向き合いに胸が震える。そして本編ラストの「残月」では、なにか大きな力に突き動かされているかのような迫力あるプレイで、ピアニストとしてのHAYATOの新境地を見せ、夜の部の本編は終了。アンコールで「今回のソロコンサートで、本当に強くなれました。この変化を→Pia-no-jaC←に持ち込んで、進化していきたいです」と感慨深げに語ったHAYATO。最後の曲「PEACE」では、ずっと客席の方を向いて演奏するHAYATOから笑みが零れた。やはりHAYATOは、笑顔で楽しそうにプレイするのがよく似合う。オーディエンスから自発的に巻き起こったクラップが大合唱する中、この日のコンサートが終了。総立ちのスタンディングオベーションに見送られ、HAYATOはステージを後にした。

楽屋に戻ってきたHAYATOに、やりましたね、と伝えた。するとHAYATOから正直な感想が零れる。「何をそんなにビビってたんだろうって思って。→Pia-no-jaC←と逆のことをやらなきゃって意識しすぎてたのかなって思いました。俺は俺だから、そのまま自由に行こうって決めてやったんです」とはにかむ。「もっとこういう風にやれたらいいのにって思ったりもしたんです。でも、それは今の俺にはまだできないから、今後の課題としてやっていけたらいいなって」と、吹っ切れた表情で語ってくれた。

→Pia-no-jaC←に持ち帰れそうな収穫はあったかと尋ねると、「間が怖くなくなった。特にバラード曲に言えるんですけど、音を抜いても成立するような聴かせ方を学べたんです」と、得るものの多いソロコンサートであった様子。研ぎ澄まされた世界観をさらに自分のものにして、ピアニストHAYATOはこれからまたひとつ、前に進む。

TEXT:岡野里衣子

→Pia-no-jaC←『Cinema Popcorn』
2016年8月3日(水)発売
2,100円(税込)XQIJ-1012
1.PROLOGUE: BOOK II AND THE ESCAPE FROM THE DURSLEY'
2.The River Kwai March ; Colonel Bogey
3.GHOST BUSTERS
4.Oh Pretty Woman
5.MISSION IMPOSSIBLE THEME
6.I DON'T WANT TO MISS A THING

最終更新:6月23日(木)8時35分

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