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何度もスマホ掲げ、セミナーの「スライド」を撮影…同僚とSNSで共有したらダメ?

弁護士ドットコム 6月19日(日)8時43分配信

「カシャ!」「カシャ!」。セミナーや講演会に参加していると、投影されたスライドが切り替わる度に、夢中になって撮影する人をよく見かける。登壇者の話そっちのけにスマートフォンやタブレット端末で撮影する姿はどこか滑稽でもある。

あるメディアビジネス関連のセミナーでも、登壇者が「撮影は控えてください」と呼びかけているにもかかわらず、こっそり撮影している人がいた。登壇者は「撮影するなら、もう話すのをやめますよ」と怒り心頭の様子だった。

撮影したスライドは、仕事がらみであれば同僚と共有している人もいる。中には、SNSでスライド写真を公開して、セミナーの報告をしている人もいる。スライドの写真を撮影して、他人と共有することに法的な問題はないのだろうか。唐津真美弁護士に聞いた。

●私的な利用はOKだけど、SNSでのアップは十分な注意が必要

「スライドが著作物に当たるかどうかが問題になります。セミナーで使用されるスライドには、いろいろな情報が含まれていますから、それぞれの内容次第でしょう。内容がデータやグラフのみの場合は、通常は著作物にはあたりません。思想や感情を表現したものではないからです。また、キーワードやキャッチコピーのようなごく短い語句のみ記載されているスライドも、著作物には該当しない可能性が高いですね。

一方、写真やイラストを含むスライドや、ある程度まとまった文章が書かれているスライドであれば、著作物である可能性が高いといえます。こうしたスライドの撮影は、カメラやスマホの中の記録媒体に著作物を『複製』することになります。これを著作権者に無断で行えば、原則として著作権侵害にあたります」

「個人で後でじっくり見る」という利用でもダメだろうか。

「その場合は、著作権法の問題としては大丈夫です。著作権法には、私的使用目的の範囲であれば、権利者に無断で複製しても著作権侵害にはあたらないという規定があります。個人的な記録として撮影するだけなら、著作権侵害にはあたらないでしょう。

ただし、私的な使用は大丈夫といっても、撮影禁止と明確に言われているセミナーの場合は、注意が必要ですね。たとえば、セミナーの広告やチラシに撮影禁止が明記されているとします。これを見た上で、受講者が申し込んでいれば、『撮影禁止』は主催者・受講者間での契約の一部になるといえます。主催者の指示には従うべきでしょう」

では、SNSやブログにアップするのはどうだろう。「私的な使用」と言えるだろうか。

「これは著作権法上、別の問題を考える必要があります。ネットにアップする行為、つまり公衆送信は、私的使用目的による例外規定の対象になっていないからです。撮影したスライドをネットにアップする行為は、私的使用目的だとしても許されるわけではないのです。もっとも、著作権法には他の例外規定もあります。例えば、あるセミナーの報告を自分のブログで、自分の文章で書いたとしましょう。その一部としてスライドの画像が入っていれば、著作権法上、引用として認められる可能性もあります。

ただ、裁判所が引用の成立を判断する場合、利用の目的や方法、態様、利用される著作物の種類や性質、著作権者に及ぼす影響などを総合的に判断するのが最近の傾向です。判断基準は決して単純ではありません。

引用する場合も、使い方には十分注意することをお勧めします。なお、著作権者に経済的な損害を与えるかどうかという点も判断要素になるので、有料セミナーの方が、より厳格に判断される可能性が高いといえるでしょう。

いずれにせよ、セミナー中にカシャカシャと音を立てて撮影を繰り返す行為が、周囲の受講者に迷惑をかけることは間違いありません。法律論だけでなく、周囲への気遣いも忘れないでほしいと思います」

唐津弁護士は、このように話していた。



【取材協力弁護士】
唐津 真美(からつ・まみ)弁護士
弁護士・ニューヨーク州弁護士。アート・メディア・エンターテイメント業界の企業法務全般を主に取り扱う。特に著作権等の知的財産権及び国内外の契約交渉に関するアドバイス多数。第一東京弁護士会・法教育委員会副委員長、東京簡易裁判所・司法委員、第一東京弁護士会仲裁センター・仲裁人。

事務所名:骨董通り法律事務所
事務所URL:http://www.kottolaw.com

弁護士ドットコムニュース編集部

最終更新:6月19日(日)8時43分

弁護士ドットコム

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