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故郷の島、料理に夢のせ 離島で予約限定レストラン  佐賀・唐津

佐賀新聞 6月19日(日)11時14分配信

島出身のシェフ宗勇人さん

 唐津市鎮西町の離島・松島にこの春、イタリア料理のレストランが開店した。厨房に立つのは、島出身のシェフ宗勇人さん(26)。ふるさとの食材で腕を振るい、料理にとどまらない島の魅力を「若い世代で発信して盛り上げたい」という思いを膨らませている。

 東松浦半島の波戸岬から北西約3キロに位置する松島。呼子港との間を1日3往復の定期船が15分ほどで結ぶ。人口は4月末現在、55人で、市内にある七つの有人離島の中で最も少ない。生活必需品などを売る店はなく、船着き場に自動販売機が1台あるだけだ。

父が捕った食材

 宗さんは中学卒業後、島を離れて調理師コースのある牛津高校に進学した。料理の道を志したのは、海士(あま)として働く父の勇さん(54)の影響だ。「背中を見て憧れていた。島に関わり、父が捕った食材を料理する仕事をしたかった」

 宗さんはフランス料理店を経て、現在はJR博多駅ビルのイタリア料理店で腕を磨く。昨年3月、離島活性化協議会の企画で「1日限定レストラン」が松島で開かれることになり、「地元への恩返しになれば」とシェフを引き受けた。

 ウニやアワビ、サザエといった、島の恵まれた食材を使った宗さんの料理は評判を呼び、数カ月に1度のペースで開かれるようになった。今年3月には自宅の台所を改装し、予約限定のレストラン「リストランテマツシマ」を開店した。

若者が集まり

 宗さんの活動は島に変化を与えている。レストランの開店日には宗さんを手伝うため、島に住む若者だけでなく、就職で離れた人も休みを利用して集まり、給仕や接客を手伝っている。回を重ねるごとに、その姿は板に付いてきた。

 人口減少は離島に共通する課題だ。若者は高校進学を機に島を離れ、帰らないケースが多い。唐津市離島地域コーディネーターの小峰朋子さんは「仕事さえあれば帰ってきたいという若者は多い。(レストランが)島の明るい未来につながるきっかけになれば」と話す。

 店を構え、海士の仕事も手伝いたいという息子の決断を勇さんは当初、「不安で、賛成じゃなかった」。それでも「若者が力を合わせている姿を見ると、これでよかったのかな」。今では一番の理解者だ。

 宗さんは、福岡の勤務先の好意で籍は残しつつ、島を拠点にした活動に軸足を置くため、6月いっぱいで福岡の住まいは引き払う。

 イタリア料理のフルコースが味わえるレストランは5月までに15日間営業し、111人が訪れた。生計を立てられるほど予約が安定しているわけではない。「今は島を訪れる目的が料理だけ。磯歩きや漁体験、絶景ポイントの整備とか、観光でも楽しめるようにしないと」と課題を挙げる。

 加工品や土産も開発したいという宗さん。「島の若い人たちと知恵を出し合いたい」。小さな島でもできることを探し続けていく。

最終更新:6月19日(日)11時14分

佐賀新聞