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【アジア・新興国】東南アジア・インドの経済見通し~当面は底堅い消費と金融・財政政策が支えに、輸出は徐々に回復へ

ZUU online 6/20(月) 10:30配信

■要旨

東南アジア5カ国およびインド経済は、総じて底堅い成長が続いている。低インフレ環境による家計の実質所得の向上を受けて民間消費は堅調で、インフラ投資や景気刺激策といった財政支出の拡大も景気を支えている。もっとも輸出と民間投資は停滞しており、自律的回復に向けた動きは見られない。

消費者物価上昇率は、昨年後半からはエネルギー価格の下落による物価の押下げ効果が低減し始めて上昇に転じている。先行きも上昇傾向が続くと見ているが、農業生産の回復による食料のインフレ圧力が後退するほか、米国の利上げペースの遅れによって新興国通貨の下落リスクは昨年対比で低下しており、物価上昇は緩やかなものとなりそうだ。

金融政策は、資金流出を懸念して政策金利を据え置く新興国は昨年より増えているが、米国の金融引き締めが一層ペースダウンしたことを受けて、4-6月期にインドネシアとインドが利下げしている。年内はタイが景気下振れ懸念が高まる局面で利下げすると予想する。

経済の先行きは、海外経済の伸び悩みで輸出の持ち直しが遅れるなか、年内に自律的な回復軌道に入ることはないだろうが、低インフレ環境と安定した雇用・所得環境が続くなかで個人消費を中心に底堅く推移すると見られる。また金融・財政政策も引き続き景気をサポートするだろう。

■東南アジア・インド経済の概況と見通し

◆経済概況:内需主導の底堅い景気

東南アジア5カ国およびインド経済は、総じて底堅い成長が続いている。

景気の牽引役は内需だ。資源価格の低迷による低インフレ環境を背景に家計の実質所得が向上し、民間消費は堅調に推移しているほか、インフラ投資や景気刺激策など財政支出の拡大も景気の支えとなっている。

もっとも中国や資源国の景気減速を受けて世界経済が停滞するなか、輸出と民間投資は停滞し、自律的回復に向けた動きは見られない。なお、足元ではエルニーニョ現象による干ばつ被害を受けて農業生産が減少していることも景気を下押ししている。

◆物価:原油安要因の一巡で緩やかな上昇が続く

消費者物価上昇率(以下、インフレ率)は、14年半ばからの国際商品市況の下落や景気の弱含みを受けて幅広い品目で価格が下落したが、昨年後半からはエネルギー価格の下落による物価の押下げ効果が低減し始めて上昇に転じている。また干ばつ被害による食品価格の高騰もインフレ圧力となっている。

原油価格は今年2月から上昇基調に転じており、先行きもインフレ率の上昇が続くと見ている。もっとも(1)年後半にはエルニーニョ現象の影響が弱まって農業生産が回復し、食料インフレが和らぐこと、(2)米国の利上げペースの遅れによって新興国通貨の下落リスクは昨年対比で低下していること、(3)各国の景気回復が緩やかなことからインフレ率の上昇ペースは緩やかなものとなりそうだ。

◆金融政策:緩和的な政策スタンスを維持

金融政策は、15年前半には資源安による物価下落を追い風にタイやインドネシア、インドが利下げに踏み切ったが、年末には米国の利上げ、年明け早々には国際金融市場の動揺し、資金流出を懸念する新興国はたとえ景気が弱含んでいても、政策金利を据え置くケースが増えている。

なおインドネシアとインドは長らく続けた高金利を是正するために、年明け以降も政策金利を引き下げている。インドは政府が2月に公表した16年度予算案で財政規律を堅持したことを受けて4月に0.25%の利下げを実施した。

インドネシアは燃料補助金削減に伴う物価上昇圧力の一巡によって昨年11月からインフレ率が急速に低下したことや経常赤字の縮小といったマクロ経済環境の改善、そして通貨の安定化などを評価して、年明けから3ヵ月連続の利下げ、6月には追加利下げを実施し、政策金利を計1.0%引き下げている。

2016年内は各国中銀が景気への配慮から緩和的な金融政策を続けるだろうが、物価が上昇するなかで金融緩和の余地は以前より限られていくと見ている。前回の見通し作成時点(3月)から米国の金融引き締めは一層ペースダウンしており、新興国通貨の急速な下落リスクは低下している。

もっとも中国経済の不安定化に加え、米景気の失速懸念や英国のEU離脱リスクといった新興国からの資金流出が生じかねない新たな火種も浮かび上がってきており、新興国の中央銀行は金融緩和のタイミングを慎重に計らざるを得ないだろう。

◆経済見通し:当面は底堅い消費と金融・財政政策が支え、輸出は徐々に回復へ

2016年の東南アジア・インドの成長率は前年対比で小幅に上昇すると予想する。

海外経済は先進国が回復するも中国経済が減速して輸出は伸び悩むとみられる。一方、内需は底堅く推移しそうだ。投資は景気の先行き不透明感から製造業を中心に伸び悩むだろうが、低めのインフレ率と安定した雇用・所得環境が続くなかで個人消費を中心に底堅く推移すると見込む。

また政府の財政政策と緩和的な金融政策も景気を下支えとなるだろう。しかし、輸出の持ち直しが遅れるなかでは、企業の設備投資意欲や雇用・所得環境の改善が進まず、民間部門が自律的な回復軌道に入るとは見込みにくい。

2017年も若干の成長率の上昇を予想する。原油価格の緩やかな上昇によって資源国の景気が持ち直し、先進国経済も回復基調が続くことから、輸出は拡大傾向が続くだろう。また輸出回復で企業の設備投資マインドが改善し、緩和的な金融政策も追い風となって投資が持ち直すほか、景気回復による税収の増加を背景にインフラ投資など政府支出の拡大が続くなど、徐々に自律的な回復軌道に入ると見ている。

一方、個人消費は雇用・所得環境が改善するものの、インフレ率が緩やかに上昇して家計の実質所得が目減りすることから若干鈍化すると見込む。

先行きの下方リスクとしては、米国の景気失速や中国の過剰設備・過剰債務を抱える製造業の相次ぐデフォルトや住宅バブルの崩壊、そして英EU離脱や米利上げをきっかけに国際金融市場のリスクオフの動きが強まって新興国から資金流出が加速することなどが懸念される。

■各国経済の見通し

◆マレーシア

マレーシアの16年1-3月期の実質GDP成長率は前年同期比4.2%増と、前期の同4.5%増から一段と低下し、6年半ぶりの低水準となった。

14年後半から続いた資源価格の下落に昨年4月の物品・サービス税(GST)の導入の影響が加わり、内需の鈍化が続いている。また輸出も海外経済の停滞とリンギ安の恩恵が薄らいで景気の牽引力が失われている。さらに資源関連収入の減少で財政が逼迫しており、政府支出による景気の梃子入れもできない状況にある。

4-6月期以降は徐々に景気が持ちなおすと見ている。4月にGST導入の影響が一巡し、7月には最低賃金の改定と公務員給与の見直しによる可処分所得が向上、さらに年後半にはエルニーニョ現象の終息によってパーム油や天然ゴムなどの生産が回復すると見られ、消費は改善するだろう。

もっとも世界経済の伸び悩みによって輸出は低調に推移するなかでは、企業の設備投資マインドの回復が遅れ、投資は資源関連産業を中心に弱含むだろう。このほか原油安や景気低迷による税収不足で財政面の景気の梃入れは期待できない状況が続くことから、景気回復は緩慢なものとなりそうだ。

またリンギは足元こそ安定しているが、海外投資家が注目する政府系投資会社1MDBを巡る債務問題と政治不安、経常黒字縮小など周辺国に対して相対的に通貨が売られやすい状況にある。

従って、足元で上昇傾向にある原油価格が下落に転じたり、国際金融市場が混乱する事態が到来すれば、再びリンギ安が進む展開が予想される。この場合、通貨安による輸入インフレを通じて実質所得が目減りして消費が冷え込む、景気回復が遅れる恐れがある。

2017年は緩やかな回復が続くと見ている。海外経済の回復によって輸出が拡大するほか、原油価格の緩やかな上昇が続くなかで、企業と消費者のマインドが回復し、民間部門が回復すると見込む。また原油関連収入の増加によって政府支出が拡大に転じることも、景気を支えとなるだろう。

結果、16年の成長率は前年比4.3%増と減速し、17年は同4.5%増の緩やかな回復を予想する。

◆タイ

タイは14年5月の軍事クーデター後に政治が安定化した後、景気が伸び悩んでいる。

16年1-3月期の実質GDP成長率は前年同期比3.2%増と3年ぶりに3%台まで加速したが、これは昨年8月のバンコク爆弾テロで落ち込んでいた外国人観光客数の反動増によるサービス輸出の拡大、また年後半に政府が打ち出した農家・低所得者と中小企業向けの短期的な景気刺激策の実施による政府支出拡大が景気を押し上げたためである。

一方、財輸出は停滞し、製造業を中心に民間投資が弱含んでいるほか、民間消費も昨年の景気対策の反動や干ばつによる農業所得の減少を受けて伸び悩むなど、自律的回復に向けた動きは見られない。

2016年内は成長率が低下し、2%台後半の緩慢な景気が続くと見ている。中長期の大型インフラ事業の推進や景気刺激策など政府支出の拡大は引き続き景気を支えるだろうが、サービス輸出は政情安定化による訪タイ外客数の反動増が一巡していることから伸びは鈍化するだろう。また海外経済の伸び悩みによって輸出が停滞し、企業の投資意欲は弱含みと見込む。

消費については、エルニーニョ現象の終息を受けて年後半から農業所得が回復して上向きに転じると見られるが、物価上昇や高水準の家計債務が足枷となって回復感が乏しい状況が続くだろう。景気の下振れ懸念が高まる局面では追加の景気刺激策や追加の利下げが打ち出されると見込む。

2017年は、成長率が3%前後に若干加速すると予想する。海外経済の緩やかな回復によって輸出が拡大する上、企業の設備投資マインドの回復や緩和的な金融政策も追い風となって民間投資も持ち直すと見ている。また個人消費は農業部門と非農業部門が揃って所得が回復して、前年対比で上昇すると予想する。一方、政府支出は景気対策の反動減で景気の押上げ効果は弱まるだろう。

結果、成長率は16年が前年比2.9%増、17年は同3.0%増と小幅に上昇すると予想する。

◆インドネシア

インドネシアの15年の実質GDP成長率は前年比4.8%増と4年連続で減速したが、16年1-3月期が前年同期比4.9%増と、2期連続で7-9月期の同4.7%を上回り、景気は底打ちしたと見られる。

昨年後半から予算執行の迅速化による政府支出の拡大が景気の牽引役となっている。またこれまで景気を押下げていた高インフレは資源価格の下落を受けて沈静化し、16年初にはインドネシア銀行(中央銀行)が3ヵ月連続の金融緩和に踏み切るなど金利の高止まりも改善に向かっている。

しかし、資源価格の低迷と中国経済の鈍化によって資源関連産業の投資抑制や輸出の低迷は続いているほか、これまでの景気減速の影響で家計の購買力が弱まっており、顕著な持ち直しの動きは見られない。

2016年内は昨年より高い5%前後の成長が続くと見ている。海外経済の伸び悩みによって資源関連の輸出不振と投資抑制は続くほか、地方政府の予算執行の遅れや税収不足による歳出削減によって政府支出が昨年対比で鈍化するだろう。

しかし、同国はマクロ経済環境の改善と金融規制の強化によってルピアには過度な売り圧力がかかりにくくなっており、インフレ率は中央銀行のインフレ目標(3-5%)の範囲内で安定的に推移すると見られる。

また15年に実施した利下げ効果や昨年9月から政府が打ち出している計12本の経済政策パッケージの実施も追い風となって、民間消費と民間投資は徐々に持ち直すと見られる。

2017年も緩やかな景気回復を予想する。ジョコ大統領は国会第2党のゴルカル党の支持を取り付けて政権基盤がより強まり、今後も規制緩和や事業認可の加速や効率化などの投資環境の改善を進めると見られるほか、15年に実施した金融緩和の効果が波及(*1)し、民間投資は拡大するだろう。

またインフレ率は上昇するが、雇用・所得環境の回復によって消費は堅調を維持、インフラ整備の進展によって公共投資も拡大傾向を維持する。海外経済の緩やかな回復によって輸出は拡大するだろうが、輸入も内需拡大で増加すると見られ、外需は成長率に対してマイナスに働くと見込む。

結果、成長率は16年が前年比5.0%増、17年は同5.3%増と緩やかな回復を予想する。

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(*1)インドネシア銀行(中央銀行)は4月15日、8月19日から政策金利を現行のBIレートから7日物リバースレポレートに変更すると発表した。これにより、中央銀行は金融政策が貸出金利に波及し易くなると見込んでいる。
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◆フィリピン

フィリピンの16年1-3月期の実質GDP成長率は前年同期比6.9%増と、前期の同6.5%増から一段と上昇し、2013年4-6月期以来の高水準を記録した。

1-3月期の高成長は、5月の正副大統領選を含む統一選挙を前に官民の支出が拡大したことが背景にある。政府支出の拡大で政府消費が同9.9%増、投資が同25.6%増と高い伸びを記録したほか、個人消費はインフレの低位安定と海外就労者の送金額が二桁増となったことも追い風となって同7.0%増まで上昇した。

一方、輸出はBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシグ)が好調だったものの、海外経済の停滞によって主力の電子機器が伸び悩み、外需は成長率に対してマイナスに働く状況に変化が見られない。

2016年内は内需主導の堅調な景気が続くだろうが、選挙関連支出によって過熱した成長率は6%弱まで鈍化しそうだ。選挙終了後は政府の予算執行ペースが落ちると予想され、前年4-6月期から景気を押上げてきた資本支出拡大の反動もあり、公共投資と政府消費は鈍化するだろう。

民間消費についても7-9月期以降は選挙特需の反動が表れる上、インフレ率は今後も原油安要因の一巡で緩やかな上昇が見込まれ、直近1年で続いた6%台後半の高い伸びは見込みにくい。また民間投資は自動車産業振興策や官民パートナーシップ(PPP)によるインフラ整備の進展などによって拡大基調が続くだろうが、ドゥテルテ新政権の政策の不透明感から企業が投資を手控えて鈍化すると見込む。

外需は欧米の景気回復を受けてサービス輸出を中心に拡大傾向を維持する一方、輸入がやや鈍化することから成長率に対するマイナス寄与は縮小するものと見ている。

2017年は、新政権が外資規制の緩和に向けた憲法改正の動きを積極化するなかで再び民間投資が拡大するほか、インフラ整備予算も拡充され、景気は投資主導で徐々に加速していくだろう。また海外経済の緩やかな回復によって輸出は拡大するだろう。一方、民間消費はインフレ率の上昇や選挙特需の反動で前年対比では鈍化し、景気は横ばい圏で推移すると見られる。

結果、成長率は16年が前年比6.3%増、17年は同6.0%増と周辺国に比して高めの成長が続くと予想する。

◆ベトナム

ベトナムは安価な労働コストや地理的に中国と近い立地の優位性、そしてTPP交渉参加国であることを外資系企業が好感し、製造拠点をシフトしており、投資主導の成長が続いている。

15年は雇用・所得環境の改善とインフレ率の低下によって実質所得が向上し、個人消費が景気を大きく押上げた。しかし、16年1-3月期の実質GDP成長率は前年同期比5.5%増と、前年1-3月期の同6.1%増を下回った。北部の寒波や中・南部における干ばつや塩害によって農業生産に影響が及び、農業所得の減少を受けて個人消費が鈍化したこと、また輸出が伸び悩んだことも成長率低下に繋がった。

2016年内は成長率が前年に比べて低下するも、内需主導の底堅い成長が続くと予想する。低調な海外経済を受けて輸出が伸び悩むと見られ、景気の先行き不透明感から外資系企業の投資が落ち込む可能性はあるものの、1-3月期の対内直接投資の認可額は好調で、投資が景気を支えるだろう。

個人消費は年前半の悪天候の影響が残るものの、5月の公務員給与の5%の引上げや年後半のエルニーニョ現象の終息によって底堅く推移すると見込む。一方、原油安を背景に財政状況は厳しく、公共投資の鈍化も景気の押下げ要因となるだろう。

2017年の成長率は若干ながら再び上昇に転じると予想する。原油価格の上昇やドン安に伴う輸入インフレによって物価上昇が続き、消費は前年対比で鈍化するだろうが、海外経済の緩やかな回復とドン安を追い風に輸出が拡大し、外資系企業の製造拠点シフトの動きが加速すると見込む。

結果、成長率は16年が前年比6.1%増、17年は同6.3%増と予想する。

◆インド

インドは15年度の実質GDP成長率が前年度比7.6%増と、14年度の同7.2%増から加速した。中国の15年の成長率(前年比6.9%)を大きく上回り、インド経済の力強さを印象付ける結果となった。

16年1-3月期の実質GDP成長率は前年同期比7.9%と、10-12月期の同7.2%増から大きく上昇した。投資減退と輸出不振は続いたものの、GDPの約6割を占める民間消費の好調が成長率を押し上げた。

この消費拡大の背景には、14年後半から続く原油安によるインフレ率の安定と金融緩和がある。消費者物価上昇率は14年前半に8%台の高水準にあったが、14年末から現在まで概ね5%前後で推移している。また物価下落をはじめ政府による財政規律の維持や米利上げ観測の後退も追い風となり、中央銀行は15年1月から政策金利を段階的に計1.50%引き下げている。

インフレ率の安定によって家計の実質所得が堅調に推移し、利下げによって耐久消費財の購入意欲が高まり、消費は景気の牽引役となっている。一方、世界経済の停滞による輸出の低迷で、製造業の設備稼働率が低迷しており、民間投資も減退している。また内需主導の景気が続き、外需の成長率への寄与度はマイナスが続いている。

先行きについても消費主導で7%台後半の高い成長が続くと予想する。まずインフレ率の安定と公務員給与の大幅引き上げによる政府支出拡大が消費を押上げるだろう。さらに今年は南西モンスーン期(6-9月)の雨量が平年並み(*2)に回復して3年ぶりに農業所得が改善すると見られ、年後半も消費は高い伸びを維持するだろう。

一方、投資はインフラ整備の進展によって公共部門が支えとなるも、民間投資を中心に伸び悩むと見込む。これまでの金融緩和が貸出金利に浸透すれば、民間投資が回復する可能性もあるが、商業銀行は不良債権問題を抱えており貸出金利の低下には時間が掛かりそうだ。また輸出は低調な世界経済よって引き続き伸び悩むと見られ、外需の牽引力には期待できない状況が続きそうだ。

金融政策は当面据え置きとなりそうだ。モンスーン期の降雨の改善は、食品インフレを和らげるが、農村部の消費需要が増えることから時間を置いて物価上昇を引き起こす恐れもある。また足元のCPI上昇率は17年3月までに5%のインフレ目標をやや上回っていることや、今後も原油安の一巡による物価上昇圧力は続くこと、そして米国の追加利上げを踏まえると、中央銀行は金融緩和に慎重にならざるを得ないだろう。

2017年度は海外経済の緩やかな回復によって輸出が拡大するなか、今年5月に成立した「破産法」は銀行の不良債権処理の後押しとなって投資は停滞局面から抜け出すだろう。しかし、農業所得の向上と公務員給与の引き上げといった消費の押上げ要因が一巡することから、景気はやや鈍化すると見込む。

結果、成長率は16年度が前年度比7.6%増、17年は同7.4%増と予想する。

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(*2)6月2日、IMD(インド気象局)は2016年の南西モンスーン期の全国の雨量は長期平均の106%程度になるとの見通しを公表した。
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斉藤誠(さいとう まこと)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部

最終更新:6/20(月) 10:30

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