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社説[哀悼のあとに]理不尽な現実変えよう

沖縄タイムス 6/20(月) 5:00配信

 世代を超えて女性の姿が目立った。彼女たちの多くが弔意を表す喪服を着用している。モノトーンの色調で埋め尽くされた会場に渦巻いていたのは沖縄の「公憤」だ。
 復帰後、最も残虐な事件に対する強い怒り、被害者の痛みを想像することによって生まれる新たな痛みの感情、若い命を救うことができなかった自責の念などが入り交じった思いである。
 20歳の女性の命が奪われた元海兵隊員による暴行殺人事件を受けて19日、那覇市の奥武山公園陸上競技場で開かれた被害者を追悼する県民大会。梅雨明けの強烈な日差しが照りつけ、玉のような汗が噴き出す会場に約6万5千人(主催者発表)が集まった。
 「なぜ娘は殺されなければならなかったのか。次の被害者を出さないためにも全基地撤去を願っている」
 亡くなった女性の父親が寄せたメッセージからは、個人の尊厳を奪う卑劣な犯罪への怒りと、もはや基地政策を見直すしかないという思いがにじむ。
 登壇した大学生の玉城愛さんは、時折言葉を詰まらせながら思いの丈をぶつけた。
 「生きる尊厳と時間が軍隊によって否定される社会を誰がつくったのか」
 沖縄では1995年の暴行事件以降、米兵による性暴力を基地がもたらす人権侵害ととらえ、安全保障のあり方を問う運動が女性たちによって続けられてきた。
 米軍基地が過度に集中し、その結果、女性の人権が脅かされている現実をこれ以上見過ごすわけにはいかない。
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 今回「海兵隊の撤退」という踏み込んだ要求を大会決議に加えたのは、県民の怒りが限界を超え「妥協できない」という声が高まったからだ。
 翁長雄志知事はあいさつの中で、日米地位協定の抜本的な見直しと海兵隊の撤退・削減を含む基地の整理縮小に取り組んでいく「不退転の決意」を示した。
 沖縄の海兵隊はベトナム戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争など、米軍がかかわった戦後の主な戦争のほとんどに投入された。
 沖縄で事前訓練を受け、激しい戦闘に従事し、任務を終え、沖縄に帰還する。このような軍隊が狭い島に常駐していることが、地域の人々にとってどれほど大きな負担となっているか、本土の人たちは自分のこととして想像したことがあるだろうか。
 しかも沖縄では演習場や飛行場が住民の生活空間と隣接しているのである。 
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 県民大会は子を慈しむ母の愛を歌った古謝美佐子さんの「童神」で始まり、沖縄戦をテーマにした海勢頭豊さんの「月桃」で締めくくられた。
 3日後の23日、沖縄は「慰霊の日」を迎える。71年前の米軍上陸直後から始まった米兵による女性への性犯罪は今も続く。戦争ははたして終わったといえるのだろうか。
 「これを最後に」との思いが強くにじみでた大会は、県民の心の奥底で大きな意識の変化が起きていることを印象づけた。静かに、しかし確実に沖縄社会の内部で地殻変動が起きている。

最終更新:6/20(月) 5:00

沖縄タイムス