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悪いけど“楽しい”エンタメ映画『日本で一番悪い奴ら』監督が語る

ぴあ映画生活 6月20日(月)16時47分配信

『凶悪』で高い評価を集めた白石和彌監督が、綾野剛を主演にした新作『日本で一番悪い奴ら』が公開になる。“日本警察史上、最大の不祥事”といわれる実際の事件を題材に、ひとりの刑事があらゆる悪事に手を汚していく様を描く作品だが、完成した映画は登場人物たちの愚かさと孤独と輝きが一体になった“日本で一番悪い青春映画”になっていた! 白石監督に話を聞いた。

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本作の基になったのは、2002年に北海道で実際に起こった事件で、北海道警察に勤務する警部が覚せい剤取締法違反容疑と銃砲刀剣類所持等取締法違反容疑で逮捕、有罪判決を受けた。公判では、単なる犯罪ではなく、警察による“やらせ捜査”や“銃刀法違反偽証”などの不祥事が発覚し、日本中に衝撃を与えた。白石監督はこの事件が書かれたノンフィクションを読み「ここに書かれている話って、警察の話なんですけど、やっていることがほとんどギャングなんですよ(笑)。日本はギャング映画というものがなくて、ヤクザ映画になってしまう。前々から『カジノ』とか『グッド・フェローズ』みたいなチーム感のあるギャング映画をやってみたいと思っていたので、この題材ならそれができるんじゃないかと思った」と振り返る。

映画は、綾野演じる刑事・諸星が、“S(エス)”と呼ばれるスパイから情報を入手して捜査を続ける中で、いつしか裏社会に自らのめりこんでいき、おとり捜査・拳銃購入・覚せい剤密輸など、あらゆる悪事に手を汚していく過程と、諸星とSたちの人間模様、そして手柄のために進んで違法行為を容認する警察組織の姿が描かれる。

映画は実話を基にしており、凄惨な場面も描かれるが、白石監督は“楽しさ”を描くことにこだわったという。「起こっていることはヒドいことなんですけど、軽妙に描いた方がこの映画の本質が見えてくると思ったし、僕はこの映画で“社会正義”を描こうとは思ってないんです。諸星はたまたま、こういう組織に入って悪いことをしてしまうんですけど、人間ってやっぱり基本的に“楽しいこと”をして生きていたいと思うんです。基になった本を読むと『こんなことしてヒドいな』って思うし、本人はつらいこともあったでしょうけど、楽しいことが多かったと思うんですよね。普通の刑事って、マル暴(暴力団対策担当)をやっていても、生涯に拳銃を10丁挙げられたらすごいのに、この主人公は100丁挙げている(笑)。そりゃ楽しい以外にないと思うし、それを描くことができたら、それだけでOKだなって」

一方で、白石監督は主人公と仲間たちが楽しさや快楽を追求していく過程で、悪事に対する耐性ができ、善悪の感覚が“麻痺”していく様を丁寧に描いている。「“ふと気がついたら、まったく違う景色の中にいる”という物語はいつも意識しています。人間はどんなに意思が強くても全体の中で流されていく部分はありますし、映画のタイトルが悪い“奴ら”なのは、この映画が組織の話だからなんです。(前作の)『凶悪』でもそうですけど、何らかのコミュニティに所属した瞬間にその人の立ち位置がブレてしまうという現象はいつも意識しているし、映画の中に自然に出てきていると思います」

この映画で描かれることはタイトル通り“悪い”ことばかりだ。しかし、諸星は悪事を繰り返しながら、仲間たちと友情を築き、相手を家族のように感じ、いつしか別れを経験して成長していく。「撮る前は、この映画がここまで青春映画になるとは思ってなかったんです。でも、諸星はSとも女たちとも、ひとりひとり出会っては別れて……を繰り返すんです。それがこの映画の魅力だと思うし、それってやっぱり“人生”ということだと思うんですよ。だからこの映画で、人生の1ページではなくて、まとまった人生の時間を描けたことは本当に良かったと思っています」

『日本で一番悪い奴ら』
6月25日(土) 全国ロードショー

最終更新:6月20日(月)16時47分

ぴあ映画生活

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。