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相続税対策で「アパマン購入」 早すぎると失敗するワケ

ZUU online 6/20(月) 11:30配信

広い土地を持っている地主の方々にとって、相続税は悩ましい問題だ。2015年1月1日から、相続税の基礎控除額が引き下げられたのと同時に最高税率が引き上げられた。本題に入る前にこの改正点をいま一度おさらいしよう。

■相続税の改正ポイントのおさらい

相続税の基礎控除額は以下のように引き下げられた。

◯2015年1月1日 以前
5000万円+(1000万円 x 法定相続人の数)
◯2015年1月1日 以降
3000万円+(600万円 x 法定相続人の数)

相続税の税率も、相続人の法定相続分の取得価格が2億円超に関しては、累進性がきつくなり、最高税率も50%から55%へと引き上げられている。

5%の引き上げというと、さほど負担感がないと思われるかもしれない。しかし、この法定相続分の取得価格(課税される遺産総額(=課税価格の合計額-基礎控除)を法定相続人が法定相続分に応じて取得したものとして計算した価格)が仮に3億円と仮定すると、従来の「3億円 x 40%-1700万円=1億300万円」が、新税率のもとでは「3億円 x 45%-2700万円=1億800万円」と500万円も増税となる。

しかもトータルの相続税額は相続人ごとに計算したものを合計するので、もし法定相続人が2人なら、トータル1000万円が増えることになる。

このような状態で、いざ相続が起こった時、何も対策を打っていない場合、①多額の相続税を払う必要が出てくる ②遺産分割でもめる ③納税資金が足りない といったことが起こりかねない。

さらに相続税は、相続人が被相続人の死亡を知った日の翌日から10カ月以内に申告納付をしなければならない。

この10カ月という期間は、長いようであっという間に来てしまう。まず、死亡から4か月以内に準確定申告をしなければならない。また、もし不動産が主な相続税の対象物件の場合、最悪処分し、換金するまでを10カ月の間に行う必要があるわけだ。

一般的に相続税対策は、おもに以下の3つが必要となる。

遺産分割 = 家族間のもめごとをいかに排除していくか
納税対策 = 相続税納税資金を準備すること
節税対策 = 相続税の圧縮を図ること

②と③はその順番をケースバイケースで考えなければならない。

■アパマンの節税対策 効果が高いのは「建築直後」

不動産が主な相続税の対象財産の地主の方々、また有効活用されていない土地を多くお持ちの方々は、アパートを経営することで相続税の評価額が下がることを御存じだと思う。その理由は、現金より不動産の方が相続の評価額が低くなるからだ。

しかし、早めに対策をした方が良いと考え、実際に相続が発生する時期よりかなり早くアパート経営に踏み出すと、節税効果が薄れてしまうことがあることは御存じだろうか。

マンション経営による相続税対策の効果が最も大きくなるのは、建物を建てた直後だ。時間の経過により節税効果は小さくなり、やがてはマイナスになってしまう。

■マンション経営「節税効果のシミュレーション」

高い入居率を保ち順調に賃料収入を得れば得るほど、その時期は早まる。下記の前提条件をもとに、その節税効果の推移をシミュレーションで検証してみよう。

①建物:1億円(現金で建て、借金しない)
②減価償却:木造22年
③建築費1億円の建物の相続税評価額:3500万円(※)
④家賃による建物建築費を10年で回収(表面利回り10%)

※建物の相続税評価額を建築費の35%、22年後には評価はゼロになる。35%としたのは「建築費の50%(固定資産の評価額) × (1-借家権割合30%)」から。

まず、1億円の現金がアパートの建物に代わることによって、3500万円に圧縮される。これは、アパートを建築した途端に6500万円、評価減になることを意味する。

3500万円をスタートとし、22年かけて建物の価値が下がっていき、22年目に建物の価値が0円になる。その一方家賃収入が入ってくるので、その土地建物のオーナーである被相続人の財産が毎年増えてくることになる。

そうすると、被相続人の相続財産は、(ア)減価償却した後の建物の価値(22年で0円)+(イ)毎月入ってくるアパート経営から生じる家賃(10年で1億円)の合計金額になる。

建物を建築した後は建物の価値が高いが、累計家賃収入が低いので相続評価額が低く済む。一方、年月が経つにつれて建物評価額は下がってくるが、累計家賃収入が上がってくる。その速度は、上記(イ)の方が早いので、結果時間が経過すればするほど、相続対策に役立たなくなってくるのである。

■アパート経営の相続対策はタイミングに注意

家賃収入が順調に入ってくる事は、大家業にとっては望ましいことだが、こと相続対策でのアパート建築が目的の場合、あまりに早すぎる対策は、逆効果となってしまうのだ。また、被相続人がアパート建築後認知症になってしまうと、信託などの有効な手立てをしておかないと、その資産が凍結されてしまいかねない。したがって、アパート建築だけで十分な相続税を行った、と考えるのではなく、並行してさらなる対策を講じる必要があるのだ。

現金を不動産に変えてアパート経営をするタイミングが、相続税対策にはとても大切なことを十分に認識しておくと、振り返ってみて何のためのアクションプランだったのかを見失うことがなくなるのではないだろうか。

マネーデザイン( http://moneydesign.co.jp/ )代表取締役社長 中村伸一
学習院大学卒業後、KPMG、スタンダードチャータード銀行、日興シティグループ証券、メリルリンチ証券など外資系金融機関で勤務後、2014年独立し、FP会社を設立。不動産、生命保険、資産運用(IFA)を中心に個人、法人顧客に対し事業展開している。日本人の金融リテラシーの向上が日本経済の発展につながると信じ、マネーに関する情報を積極的に発信。

最終更新:6/20(月) 11:30

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