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若年層の消費実態(3)-「アルコール離れ」・「外食離れ」は本当か?

ZUU online 6/20(月) 11:30配信

■要旨

◆本稿では、総務省「全国消費実態調査」における30歳未満の単身勤労者世帯の食費内訳の変化を確認したところ、男性では「外食離れ」・「アルコール離れ」をして、家で料理をしたり調理食品を食べるようになっている様子がうかがえた。

◆一方、30歳未満の単身勤労者世帯の女性では「外食離れ」のほか、男性並に働く女性が増えた影響か、家で料理をすることが減り、調理食品を食べるようになっている様子がうかがえた。

◆男女の食費内訳を比べると、外食は男性、食材は女性で多い傾向があるが、支出額の男女差はバブル期より縮小しており、食料費内訳における性差は薄まっていた。

◆「外食離れ」の背景には、若年層の厳しい経済環境による節約志向や国民的な健康志向の高まりのほか、外食産業の多様化・価格競争の激化等の恩恵を受けていることもあげられる。現在では安価で高品質な外食サービスが増えている。

◆「アルコール離れ」については、厚生労働省「国民健康・栄養調査」の飲酒習慣率も確認すると、この10年余りで20代男女の飲酒習慣率は半数以上低下し、確かに「アルコール離れ」をしていた。なお、男性では30~50代でも「アルコール離れ」をしており、今、飲酒が増えているのは高齢男性と30代以上の女性であった。

■はじめに

「若年層の消費実態(2)」http://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=53117?site=nliでは、総務省「全国消費実態調査」における30歳未満の単身勤労者世帯の消費支出の変化に注目した。

1989年のバブル期と2014年を比べると、男女とも可処分所得が増えているにも関わらず、消費支出は減っていた。また、消費支出の内訳を見ると、男女とも食料費や被服費が減り、住居費が増えていた。

なお、食費は1989年以降、男女とも減少傾向にあり、直近ではバブル期と比べて3割程度も減っていた。また、男女の支出金額の差を見ると、多くの内訳項目で男女の金額差が小さくなっており、消費内容の性差が薄まっている様子がうかがえた。

第三弾の本稿では、食料費の内訳の変化に注目する。世間では若者の「アルコール離れ」や「外食離れ」など、若者の「○○離れ」がよく言われるが、実際はどうなっているのだろうか。現在の若者の特徴をよりイメージしやすくするために、バブル期の若者と対比していく。

■食料費の内訳の変化

◆若年単身勤労者世帯の男性の変化~「外食離れ」、家で料理・調理食品が増加。「アルコール離れ」も。

30歳未満の単身勤労者世帯の食料費の内訳について、まず、男性の変化を捉えていく。

男性の食料費に占める個別品目で多いものは、1989年のバブル期では、圧倒的に1位「外食」(3.1万円)であり、食料費の実に62.7%を占める。以下、2位「賄い費」(3.8千円)、3位「調理食品」(3.3千円)、4位「飲料」(3.1千円)、5位「酒類」(2.1千円)と続く。なお、2位以下の各品目が食料費に占める割合は、いずれも1割に満たない。

2014年でも圧倒的に多いものは1位「外食」(1.7万円)だが、1989年と比べると、支出は半分程度に減り(△1.3万円、実質増減率は△54.1%)、食料費に占める割合も46.0%(△16.6%)へ低下している。

2位以下については、2位「調理食品」(6.6千円)、3位「飲料」(3.4千円)、4位「穀類」(2.4千円)、5位「菓子類」(1.8千円)と続く。1989年では上位5位までに「賄い費(*1)」と「酒類」が入っていたが、2014年ではこれらの代わりに「穀類」と「菓子類」が入っている。

個別品目の実質増減率を見ると、最も増加しているものは「油脂・調味料」(+285.6%)であり、大幅に増えている。このほか、「肉類」(+86.3%)、「穀類」(+82.5%)、「野菜・海草」(+72.4%)、「調理食品」(58.2%)も50%を超えて比較的大きく増加している。

一方、最も減少しているものは、「賄い費」を除くと、「外食」(△54.1%)であり、次いで「果物」(△50.8%)、「酒類」(△43.4%)の減少幅も比較的大きい。

つまり、30歳未満の単身勤労者世帯の男性では、調味料や食材、調理食品の支出が増えて、外食が減っており、外食を減らして、代わりに調味料や食材を買って家で料理をしたり、惣菜などを買って家で食べるようになっている様子がうかがえる。30歳未満の単身勤労者世帯の男性では、確かに「外食離れ」をしているようだ。

なお、「外食離れ」の背景には、(1)現在の若者は厳しい経済環境にあり、将来の収入増に対して明るい見通しも持ちにくい(*2)ため、節約志向が高いと考えられること、(2)近年の国民的な健康志向の高まり(*3)などが影響している可能性がある。これらのほか、(3)外食産業の変化も考えられるが、(3)については3節で述べたい。

なお、30歳未満の単身勤労者世帯の男性では、酒類や果物の支出が減っていることから、「アルコール離れ」や「フルーツ離れ」の様子もうかがえる。「アルコール離れ」については4節で再度触れるが、「フルーツ離れ」は国民的な課題のようだ。

農林水産省「果樹をめぐる情勢(平成28年4月作成版)」によれば、果実摂取量は70歳以上を除く全ての年代で10年前より減少している。果実を食べない理由は、買い置きできないことや価格、手間、食べる食品が他にあること等があがっている。

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(*1)「賄い費」の大幅減少については、「若年層の消費実態(2)」でも述べた通り、1989年調査では調査対象に下宿や賄い付き世帯居住者を含んでいたが、2014年調査では含んでいない影響がある。
(*2)久我尚子「若者は本当にお金がないのか?―統計データが語る意外な真実」(光文社新書、2014年6月)第5・6章等
(*3)例えば、厚生労働省「平成26年版厚生労働白書 健康長寿社会の実現に向けて~健康・予防元年~」より、特定保健用食品の市場規模の成長(10年間で倍増)や喫煙率の低下傾向等から、近年の国民の健康意識の高まりが指摘。
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◆若年単身勤労者世帯の女性の変化~「外食離れ」のほか家での料理も減り、調理食品が増加。

次に、女性の変化を確認する。食料費の内訳を見ると、1989年のバブル期では、男性同様に1位「外食」(1.2万円)が目立つが、食料費に占める割合は男性ほど高くなく、39.0%にとどまる。

以下、2位「調理食品」(3.1千円)、3位「菓子類」(2.6千円)、4位「野菜・海草」・「穀類」(いずれも2.1千円)と続く。2位以下の食料費に占める割合は、男性ではいずれも1割にも満たないが、女性では「調理食品」が1割を超えて比較的高い。

2014年でも女性で最も多いものは、1位「外食」(1.1万円)だが、1989年より支出が減っている(△1.5千円、実質増減率△28.2%)。しかし、女性では「外食」が食料費を占める割合(39.4%)は1989年と同様である。

2位以下については、2位「調理食品」(4.5千円)、3位「菓子類」(2.4千円)、4位「飲料」(1.9千円)、5位「穀類」(1.8千円)と続く。2014年では「野菜・海草」が上位から姿を消す一方、「飲料」が上位に入っている。

また、個別品目の実質増減率を見ると、男性ほどではないが女性でも、最も増加しているものは、「油脂・調味料」(+31.7%)である。このほか「調理食品」(+14.2%)や「飲料」(+6.9%)も増加している。

女性ではこの三品目を除くと、各種食材から外食まで幅広く減少している。最も減少しているものは、「賄い費」を除くと、「果物」(△75.1%)であり、次いで「魚介類」(△50.1%)、「野菜・海草」(△43.0%)、「肉類」(△35.6%)、「乳卵類」(△31.5%)、「外食」(△28.2%)、「菓子類」(△25.9%)の減少幅も比較的大きい。

このように、女性では調味料や調理食品の支出が増えて、各種食材や外食が減っている。女性でも男性同様に調味料は増えているが食材全般が減っているため、女性では家で料理をすることが減っていると考えた方が自然だろう。

つまり、現在の30歳未満の単身勤労者世帯の女性では、外食や家での料理を減らして、代わりに惣菜などを買って食べるようになっている様子がうかがえ、女性でも「外食離れ」をしているようだ。なお、女性が料理をする機会が減っている背景には、男性並みに働く女性が増えたことが考えられる。

なお、30歳未満の単身勤労者世帯の女性では、男性同様に「フルーツ離れ」の様子がうかがえるが、「アルコール離れ」の様子はさほど見られない。

◆若年単身勤労者世帯の男女差~外食は男性、食材は女性で多い。薄まる食料費内訳の男女差。

食料費の内訳について男女差を見ると、1989年では「外食」や「酒類」、「飲料」、「調理食品」など、食材以外の項目では、男性より女性の方が消費支出額も食料費に占める割合も大きい。

しかし、2014年では食材の支出額や支出割合が男性では増えた項目が多く、女性では全体的に減った結果、「穀類」や「肉類」の支出額は男性が女性を上回るようになっている。また、その他の食材の支出額も全体的に男女差が小さくなっている(男女差の絶対値が小さくなっている)。

これは食料費に占める個別品目の割合を見ても同様である。また、男性の支出額の方が女性より多い品目については、「外食」や「酒類」で支出額や食料費に占める割合の男女差が縮小している。

食料費の内訳を眺めると、12品目(「賄い費」を除く)のうち10項目で男女差が縮小していることから、若年単身勤労者世帯では食料費の使い方の性差が薄まっている可能性がある。

■若年層の「外食離れ」の背景~節約・健康志向だけでなく、外食産業超過・価格下落の恩も。

これまでに見たように、30歳未満の単身勤労者世帯では男女とも外食費が減っている。この理由には、前述の通り、若者の節約志向や健康志向の影響が考えられるが、外食産業における変化も考慮すべきである。

バブル期から現在までを振り返ると、外食産業ではサービスが多様化し、価格競争が激化している。外食産業にはレストランや居酒屋、ファストフード、ファミリーレストラン、カフェなど、いくつかの業態が存在するが、バブル期から現在にかけて、それぞれにおいて食のジャンルや店舗形態が多様化している。

また、バブル崩壊以降、デフレ進行の中で価格競争は激化してきた。特に、ハンバーガーや牛丼といったファストフードでは、極限まで価格が引き下げられる施策もあった。また、価格を下げるだけでなく、無料のWi-Fiサービスの提供など、食以外の面でも付加価値を提供してきた。つまり、バブル期と比べて現在の若者は、低価格でも高品質、かつ多様な飲食サービスを楽しめる環境にある。

さらに、最近ではコンビニエンスストアでも、コーヒーやドーナッツをはじめとしたテイクアウト商品の充実化や、イートインスペースを設けるなどの取組みをしている。コンビニとファストフードの境界が曖昧になっており、外食の選択肢が増えている。

以上より、若年単身勤労者世帯で外食費が減っている理由は、若者の節約志向や健康志向によって、家で食事をする機会が増えたことだけでなく、現在では安価で高品質な外食サービスが増えたことも影響しているのではないだろうか。

■若年層の飲酒状況~20代と中年男性で「アルコール離れ」、高齢男性と30代以上の女性で飲酒増。

ところで、若者の「アルコール離れ」については興味深い統計データがある。厚生労働省「国民健康・栄養調査」では、飲酒習慣率(*4)を見ているのだが、2003年から2014年にかけて、20代の男性は20.2%から10.0%へ、女性は7.0%から2.8%へと、いずれも半数以下に低下している。

2節で見た通り、30歳未満の単身勤労者世帯の「酒類」支出額をバブル期と現在で比べると、男性では減少していたが、女性では元々男性より支出が少ないためか(1989年で男性2,101円に対して女性510円)、さほど変化は見られなかった(実質増減率△1.2%)。一方で、飲酒習慣率は、20代の女性でも低下しており、やはり若年層では女性でも「アルコール離れ」をしている。

なお、男性では、30~50代でも飲酒習慣率が低下しており、「アルコール離れ」をしているのは20代だけではない。この理由としては、前項までにも触れたが、国民全体の健康志向の高まりなどが考えられる。特に中高年男性では、BMI25以上(肥満)に分類される割合が上昇しており(*5)、2008年に開始された「特定健康診査・特定保健指導」を懸念する層も拡大しているのだろう。

一方、飲酒習慣率が上昇しているのは、男性では60代以上、女性では30代以上である。つまり、今、飲酒が増えているのは、高齢男性と30代以上の女性のようだ。

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(*4)週に3日以上飲酒し、飲酒日1日あたり1合以上を飲酒すると回答した者の割合。
(*5)厚生労働省「国民健康・栄養調査」
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■おわりに

本稿では、総務省「全国消費実態調査」における30歳未満の単身勤労者世帯の食費内訳の変化を確認した。1989年のバブル期でも2014年でも、男女とも食費で最も多くを占めるのは「外食」だが、その支出額は減っており、「外食離れ」の様子がうかがえた。

「外食」のほか、男性では「果物」や「酒類」が減り、調味料や食材、「調理食品」が増えていた。女性では「果物」をはじめ各種食材が減り、「調理食品」が増えていた。

これらの変化から、男性では外食を減らして、家で料理をしたり調理食品などを食べるように、女性では外食や家での料理を減らして、調理食品を食べるようになっている様子がうかがえた。また、これらの変化を背景に、食料費の内訳の男女差は薄まっていた。

なお、男女とも外食が減った背景には、若者の節約志向や健康志向のほか、外食産業における変化の影響もあるようだ。近年、外食産業ではサービスの多様化、価格競争の激化により、安価で高品質な選択肢が増えている。また、男女とも「果物」の支出が減っており、「フルーツ離れ」が見られるが、果実摂取量の減少は国民的な課題である。

若者の「アルコール離れ」については、30歳未満の単身勤労者世帯の男性では「酒類」支出額が減少していたが、女性ではそもそも「酒類」支出額が小さいためか、さほど変化が見られなかった。

しかし、厚生労働省「国民栄養・健康調査」によれば、20代の飲酒習慣率は男女とも低下しており、女性でも「アルコール離れ」をしていた。なお、飲酒習慣率を見ると、男性では30~50代でも「アルコール離れ」をしていた。一方、高齢男性と30代以上の女性では飲酒が増えていた。

久我尚子(くが なおこ)
ニッセイ基礎研究所 生活研究部 准主任研究員

最終更新:6/20(月) 11:30

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