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世界初タッチ操作付きスマホVRゴーグルMilboxTouchを組み立てて、遊んで、開発者にお話しを聞いてみた!

ファミ通.com 6月20日(月)18時2分配信

文・取材:編集部 北埜トゥーン、取材・撮影:編集部 古屋陽一

●手軽にVRを体験!
 世界初タッチ操作付きスマホVRゴーグルとしてWHITEより発売中のMilboxTouch。本商品は、組み立て式のゴーグルにスマートフォンをセットすることで、手軽にVRを楽しめるというものです。価格は2500円[税抜]。

 MilboxTouchは、WHITEと明治大学が共同で開発したTouch Interface Moduleを用いることで、ゴーグル内に設置したスマホの操作をゴーグルの上から実現しているのが大きな特徴です。これは世界初の技術で、これまでのスマホVRゴーグルでは、ジャイロを使用した操作しかできませんでしたが、MilboxTouchでは、タッチだけでなく、スクロール、スワイプといったさまざまな操作も行えるため、スマホVRゴーグルの新たな可能性を拓くテクノロジーとして注目を集めています。また、“カタログIPオープン化プロジェクト”(※)へ参加し、本商品の対応アプリとしてバンダイナムコエンターテインメントの『パックマン』をVRゲーム化した『MilboxTouch ver. VR PAC-MAN』が配信されたことも話題を呼びました。

※バンダイナムコエンターテインメントが実施している、ネットワークエンターテインメントのさらなる事業領域の拡大を目的とした取り組み。クリエイター登録することで、同社が保有するオリジナルIPの21タイトルを使った二次創作が、デジタルコンテンツの領域において可能となる。作品の公開は日本国内のみとなる。


 本記事では、MilboxTouchの組み立てから、『MilboxTouch ver. VR PAC-MAN』の体験リポート、さらにはWHITE代表取締役社長 神谷憲司氏へのインタビューをお届けします。

 まずは、MilboxTouchの組み立てから。MilboxTouchは、組立てが非常に簡単で、写真を撮影しながら組み立てでしたが5分も掛かりませんでした。

 MilboxTouchが完成したので、『MilboxTouch ver. VR PAC-MAN』をさっそく遊んでみました。プレイして驚いたのは、やはり視点の変化ですね。俯瞰視点から主観視点になったことで、ゲームの基本的なルールは同じにも関わらず、いい意味でまったく違ったゲームになっているとの印象を受けました。主観視点は、VRとの相性もよく没入感が増しているのですが、俯瞰視点と違い、敵の位置を把握し辛いという難点もあります。ただ、その点については、代わりに操作(スクロール)するスピードを上げれば、パックマンの移動スピードも上がり、敵から一気に逃げることも可能になっているなど、別の部分でしっかりバランス調整されていました。また、クッキーの残りが少なくなってくると、クッキーの上に旗が表示されて見つけやすくなるなど、ユーザーフレンドリーな設計になっている点も好印象です。そのほかにもコーヒーブレイクが表現(※コーヒーブレイクはオリジナル版のままです)されていたのもファンにはうれしいところですね。ちなみに『MilboxTouch ver. VR PAC-MAN』は、MilboxTouchがなくてもプレイ可能なので、興味を持った方は、まずはアプリだけでもダウンロードしてみてはいかがでしょうか?

■『MilboxTouch ver. VR PAC-MAN』
価格:iOS版:360円、Android版:300円
※iOS版ダウンロードページ
※Android版ダウンロードページ

●「世界に名立たるVRコンテンツが日本から生まれる環境を作りたいです」
 ここからは、WHITE代表取締役社長 神谷憲司氏のインタビューをお届けします。MilboxTouchの開発経緯やVRの未来、そして次回作についてなど、さまざまなことを伺いました。

――まず、MilboxTouchがどういった商品なのか簡単に説明していただけますか?
神谷 MilboxTouchの前にMilboxという商品を発売しました。こちらは、VRをカジュアルに楽しんでいただこうというコンセプトで開発した商品で、自分の持っているスマホを使用することで、手軽にVR体験を楽しめました。そこに操作できる仕組みを追加したものがMilboxTouchです。

――VRをカジュアルに提供したいということは、VRに大きな可能性を感じていたからですよね? VRのどういった点に魅力を感じられていたのでしょうか?
神谷 少し未来の話にはなりますが、VRは目で見る映像以外に、体へのフィードバックなども感じられるようになるなど、いままでにない“体験”としてのコンテンツを提供できると考えています。その未来の到来を早めるために、VRを普及させたいという想いから、Milboxを開発することにしました。

――なるほど。そういう意図があったのですね。
神谷 ただ、見るだけのコンテンツだとどうしても飽きてしまうんです。やはり、入力に対して反応があるインタラクティブなコンテンツは何度も体験したくなりますよね。

――そうですね。
神谷 Milboxでは、ジャイロ機能などを利用した限られた操作しか行えないため、見るだけの映像コンテンツしか提供できないという課題がありました。でも、それが、明治大学が開発したExtensionSticker(エクステンションステッカー)なら、技術的にも解決できて、価格的にも安く提供できそうだということで、共同研究をスタートしました。

――手軽に安くというのが命題としてあったわけですね。
神谷 そうです。通信モジュールを付けたコントローラを作れば簡単に解決できますが、それだとお金が掛かってしまいます。MilboxTouchは、段ボール製ですし、ExtensionStickerも印刷技術で作れてしまうので、大量に作ればどんどん安くすることができます。電源も通信のモジュールも不要で、安く大量生産が可能です。

――ちなみにMilbox Touchはいつごろから開発されていたのでしょうか?
神谷 2015年3月です。じつは、ExtensionStickerの技術が使えるんじゃないかということで、Milboxの商品化前から明治大学との共同研究はスタートしていました。

――そうだったんですね。開発するうえで苦労されたことはありましたか?
神谷 ExtensionStickerは静電容量式タッチパネルを拡張するという技術なのですが、
MilboxTouchのように折りたたんで使用するという用途は考えられていませんでした。ステッカーを折るということは、割れが発生して断線状態になるので、解決するために試行錯誤を重ねました。あと、人間の静電容量を使用するので、操作の反応に個人差が発生してしまうという問題もありました。その個人差を減らす方法として、ステッカーのデザインパターンや素材を工夫しました。

――ステッカーのデザインは変更できるんですね。
神谷 はい。変更可能なので、ゲームの操作に合わせた専用のステッカーを作ることもできます。現在のデザインは、タップ、スクロール、スワイプが実現できる、標準系として捉えています。SDK(開発キット)を公開しているので、それを使って、さまざまなコンテンツを簡単に作ることができますよ。

――汎用性があるのですね。
神谷 そうですね。SDKは、Gear VRとの互換性を重視して制作しているので、Gear VR用に作られたコンテンツを簡単に移植できるというのも、大きな特徴です。

――Gear VRはある程度端末が限られますし、自分のいま持っているスマホで体験できるとなると、敷居がかなり下がりそうですね。
神谷 そうすることで、VRの普及に貢献できると思っています。やはり、ある程度市場がないと、コンテンツを制作する側も困ってしまうので、お届けしやすいフォーマットを作る必要があるのかなと。

――VR市場におけるゲームコンテンツは、どのような位置づけだと考えていらっしゃいますか?
神谷 VRはさまざまな可能性を秘めていますが、どこから大きくなっていくのか? というとゲームではないかと言われています。VR市場は2020年に7兆円規模になると予想されていて、その3分の1をゲームが占めるであろうと。ただ、それは、Oculus Rift、HTC Vive、プレイステーション VRといった入力を持ったデバイスしか考慮されていないので、そこにMilboxTouchのようなスマホゲームのVR市場が加味されてくると、想定以上に大きくなってくる可能性があると考えています。

――ライブなども需要があると言われてますよね。
神谷 ライブは、ライブ会場の体験をそのまま移植するという考えなので、撮影機材もゴーグルもどんどんハイスペックかつ小さいものになっていくと思います。そういう意味では、いまのVR市場は過渡期なんですよね。でも、その中間の状態であっても、コンテンツを多くの人が作っていかないと、その未来には絶対に辿り着かないんですよ。デバイスの普及にはどうしてもコンテンツが重要になってくるので。それがMilboxTouchなら、コンテンツを作って、お客さんに体験してもらって、フィードバックを参考につぎにトライというくり返しが、比較的手軽に行えるので、VRに興味のある開発者の方には、ぜひ使っていただきたいです。

――ちなみにMilbox、MilboxTouchときて、そのつぎは考えられているのでしょうか?
神谷 ゴーグル自体の大きな変化はそんなに考えてないです。ただ、クリティカルな部分ではないですが商品性の向上のために、もっと組み立てやすくできないかということや、スマホに接触するステッカーの縞模様部分を気にならないように透明化できないかといったことなどは検討しています。でも、やはりここから先はコンテンツが重要な気がします。僕たちはゲームの専門家ではないので、移植しかやっていないですが、まったく新しいゲーム体験を皆さんに作ってもらえるとすごくおもしろいことになると思います。

――ちょうどコンテンツのお話が出たので、『MilboxTouch ver. VR PAC-MAN』を作ることになった経緯を教えていただけますか?
神谷 先ほども少しお話しましたが、僕たちはMilboxなどのプラットフォーム以外にも、
SDKといった開発者さん向けのソフトウェアなどを提供しています。しかし、サンプルがないと皆さんもどういったものが作れるのか、わかり辛いだろうと思ったんですね。そこでどういったサンプルがいいのか考えていたとき、バンダイナムコエンターテインメントさんの“カタログIPオープン化プロジェクト”の動きがあり、『パックマン』をVR化して提供することに決めました。

――開発をスタートされたのはいつごろでしょうか?
神谷 2016年の年明けですね。

――ということは、約5ヵ月で作られたのですか。
神谷 そうですね。オリジナルの『パックマン』でゲームの仕組みは完成しているので、あとはどのようにVR空間に落とし込むかということだけでした。操作もシンプルだったので、開発はスムーズに進みましたね。でも、複数入力が同タイミングで発生するようなゲームはたいへんかもしれないですね。

――操作やゲーム性がシンプルとはいえ、3D化するのはたいへんだったのでは?
神谷 その点はUnityさまさまでしたね。本当にUnityのおかげで、ゲーム制作はかなり楽になっていると思います。スマホゲームは、機種によって性能が違い、処理できる情報量も異なり、そこも意識する必要があります。でも、今回はオリジナルが8bitゲームということで、負荷の大きいキャラクターモデルのポリゴン数も抑えることができたので、あまり苦労しなかったです。ただ、“カタログIPオープン化プロジェクト”は、ソースコードやキャラクターのグラフィックデータをもらえるわけではなく、もとの作品を“二次創作していいよ”というような取り組みなので、少したいへんでした。ですので、厳密に言うと、グラフィックや敵の動きなどは少し異なっている部分があるかもしれません。

――3D化したことによって、ゲーム性が少し異なる部分があると思いますが、その際に工夫された点などはありますか?
神谷 俯瞰視点の『パックマン』は、どこに敵がいて、どこにクッキーが残っているのかという情報をもとに敵の動きを先読みしながら、クッキーを集めていく戦略性の高いゲームです。しかし、主観視点になると、それらの情報が把握し辛くなってしまってアクション性が高くなってしまうという問題がありました。そこで、主観視点の迷路というと壁の高さが自分の目線の上まであり、壁の向こう側が見えないというのが一般的ですが、あえて低くして壁越しでも敵が見つけられるようにしました。さらに、残りのクッキーが少なくなってくると、クッキーの上に旗を表示して発見しやすくするなどの工夫をしています。

――なるほど。では、遊ぶ際にコツなどがあれば教えてください。
神谷 後ろから敵にやられてしまうことが多いですが、後ろを気にせず前に進み続けるほうがいいと思います。後ろを確認しているあいだに時間をロスして、やられてしまうこともあるので。あとはやっぱり、ワープを有効活用すると楽になるかもしれません。

――制作するうえでこだわった部分はありますか?
神谷 256面のバグですね。もともとのMilboxTouchのコンテンツのサンプルという意味でいうと、3面もあれば十分だと思いますが、今回のプロジェクトは、『パックマン』をそのままVRに置き換えてみようというコンセプトだったので、こだわって制作しました。

――ちなみに次回作などは考えられているのでしょうか?
神谷 まだ、詳細はお話しできませんが準備中です。今度はシューティングゲームを作ろうかなと考えています。

――なるほど、楽しみにしています。
神谷 VRの学会は日本とフランスにしかないくらい、日本のVR研究は昔から盛んでした。しかし、最近のVR関連ニュースはほとんどアメリカという状況になってきています。これまで日本人ががんばってきたのに、全部持っていかれようとしている中で、日本発の技術で世界に向き合っていきたい、世界に対してポジションを作っていきたいという想いがあります。現在はハード争いが中心となっていますが、これからはコンテンツの時代になってきます。そのときにすごく進んでいて、おもしろいコンテンツがどんどん生まれてくる状況にしていきたいです。それができる可能性があるタイミングがいまだと思っています。日本には、優秀なクリエイターさんがたくさんいらっしゃるので、早いうちにVRコンテンツに作って、いろいろトライアルしていただけると、世界に名立たるVRコンテンツが日本から生まれるという状況が作れるはずなんです。僕らはそれを後押するために、大きな会社さんだけでなく、個人のクリエイターさんであっても、気軽にVRコンテンツを作って、ユーザーさんに遊んでもらって、フィードバックを得て、また新しいものを作るという、トライがしやすい環境を提供していくので、ぜひMilboxTouchを使っていただければと思います。


※株式会社WHITEは、株式会社バンダイナムコエンターテインメントが実施している「カタログIPオープン化プロジェクト」に参加しています。
※カタログIPオープン化プロジェクト公式サイト

最終更新:6月20日(月)18時2分

ファミ通.com

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。