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シャインマスカット苗木 海外で品種登録せず 中国業者が無断販売

日本農業新聞 6月20日(月)12時30分配信

 農研機構が育成した人気のブドウ「シャインマスカット」の苗木を、中国の業者が無断で生産、販売している疑いが出ている。中国での品種登録の出願を期限内にしなかったため、有効な対抗策がない。農研機構は近く現地に職員を派遣し、実態を調査する。イチゴなど他の国内育成品種でも同様の問題が起きている。日本の農産物輸出に影響しかねず、海外の品種登録促進など知的財産戦略が課題となっている。

知的財産戦略に課題

 「食味極上」「品質抜群」――。中国の苗木業者が「日本の品種『陽光玖瑰(Shine Muscat)』」としてこう宣伝する。インターネット上では複数の業者が苗木を販売。さらに現地報道では、広西チワン自治区が昨年7月、試験栽培に成功するなど今後栽培が広がる兆しもある。高級果実として現地の消費者の人気も高い。

 「シャインマスカット」は、農研機構が2006年に国内で品種登録した。良食味と皮ごと種なしの食べやすさが人気で高価格で販売され、栽培面積も増えている。日本からは持ち出せないため、中国の苗木が本物ならば、何者かが無断に中国に持ち出したとみられる。

 植物新品種の育成者は、品種登録によって種苗や果実を販売する「育成者権」を得る。ただ、海外への品種登録の出願には期限があり、野菜などは国内発売から4年以内、果樹は6年以内だ。農研機構は中国で期限内に「シャインマスカット」を出願しなかった。

 同機構はその理由について、「逆輸入は考慮したが、積極的に輸出する観点で検討はなかった」とする。日本は検疫上の理由で中国からブドウの輸入を認めておらず、中国産が逆輸入する可能性はない。同様の理由で日本から中国へ輸出もできないが、アジアなど第三国で国産と中国産が競合する可能性がある。

 農研機構は日本の栽培技術が優れているため輸出への影響は限定的とみる。今後中国での調査を踏まえ、可能な対抗策を検討するという。

 他にも、イチゴやサクランボ、カーネーションなどが無断で栽培される事例も起きている。海外で農産物の知的財産を保護する意識や申請のノウハウが足りないことに加え、出願にかかる費用負担の大きさなども背景にある。品種登録には10年近くかかる場合もあるが、年間数十万円の審査料がかかり、申請先の国ごとに支払う必要がある。

 農研機構は今後、政府の輸出戦略を踏まえ、必要な品種登録出願先の検討を進める考え。

最終更新:6月20日(月)12時30分

日本農業新聞