ここから本文です

フレデリック「オンリーワンダー」を読み解く、隠された原点回帰と強い確信

MusicVoice 6月20日(月)7時1分配信

 フレデリックが15日に、自身初のシングル「オンリーワンダー」をリリースした。目標に向かって頑張る人々の背中を押す応援ソング。これまでの“ディスコロック”を基調とする“フレデリックサウンド”を踏襲した曲調で、彼らの強い意志がのぞく。フレデリックの楽曲は一度聴いたら頭から離れない、いわゆる“中毒性”のある楽曲として知られている。その代名詞ともなった「オドループ」はMV再生数1000万回を超え、続く「オワラセナイト」も300万回を突破。しかし、その一連の流れを、昨年発表の「トウメイニンゲン」で区切った。今作はそれ以降にリリースされた新曲で、彼らの新たな方向性が掲示されるとして期待が集まっていた。なぜ、三部作を踏襲したのか。原点回帰の意味とは。

■中毒性楽曲として脚光

 これがフレデリックだ! と言わんばかりの一切の迷いがない晴れやかな楽曲となった。「オドループ」から始まり、「オワラセナイト」、「トウメイニンゲン」と続いた、ディスコロックを基調とする“フレデリックサウンド”は、「トウメイニンゲン」を最後に三部作として一区切り。新曲では、新たな“フレデリックサウンド”を掲示されるものと思われていたが、蓋を開けてみれば、その三部作を踏襲したもの。ずっと聴き続けてきたファンからすれば、一瞬「あれ?」と疑問符が浮かぶが、そこには彼らの強い信念が隠されていることに気付く。

 振り返れば一昨年の夏。デビューミニアルバム『oddloop』で、彼らの印象を決定付けさせる「オドループ」を掲示することができた。特長のあるボーカル三原健司の声質と歌声、つい踊りたくなる軽快なリズムとグルーヴ、言葉遊びに隠されたメッセージ性のある歌詞。様々な要素が重なりあった彼らの楽曲は“中毒性”のある楽曲として脚光を浴びることになった。

 リズムを映像でみせる、視覚化されたミュージックビデオ(MV)の役割も大きく、それがきっかけで、初出場した年末フェスには多くの観客が詰めかけ、入場規制がかかるほど。その後もMV再生数は伸び、「オドループ」は1000万回超を記録。その後にリリースした「オワラセナイト」(OWARASE NIGHT収録)は340万回超、「トウメイニンゲン」(OTOTUNE収録)は120万回超を記録。ちなみに今作の「オンリーワンダー」は公開1カ月で150万回を超えている。

 にわかに騒ぎだったフレデリック現象は、業界関係者にも知れ渡る。全国のレコードショップ店員が優れた作品を表彰する『CDショップ大賞』で関西地区に選ばれると、今年1月にはNHK総合『MUSIC JAPAN』に初出演。この放送回では彼らのほかに2組が出演したが、次世代を期待されている「NEW GENERATION」という枠での出演。司会のユースケ・サンタマリアが「この曲好き」と「オドループ」を推す姿も印象的だった。フレデリックにとって初めての地上波テレビ出演がこの番組だったことからもその期待の高さがうかがえる。

■欠けたリズムを求めたツアーが起因

 しかし、必ずしも順風満帆だったわけではない。昨年、インディーズ時代からともに歩んできたドラムが脱退した。両者円満に話し合った結果ではあるが、4人で奏でてきたリズムが1つ失った。デビュー前の「SPAM生活」(うちゅうにむちゅう収録)で築き、「オドループ」で確立した“フレデリックサウンド”にとっては大きな痛手だった。

 そのなかで生まれたのが「トウメイニンゲン」。「オドループ」と「オワラセナイト」を継承する、いわば彼らの王道サウンドだが、どこか迷いも感じさせた。事前情報では“ネットなどにおける匿名投稿への警鐘”を訴える曲であったが、作詞作曲を手掛けた三原康司は後に“聴いてくれる人が多くても、ライブに来ていない、隠れたリスナーに観覧を訴えかける意味もある”と語っている。

 サウンドへの支持は、楽曲の配信数やMVの再生数という数字で表れても、実感に結びつかない。そうした迷いは、ミニアルバム『OTOTUNE』にも表れている。「オドループ」や「オワラセナイト」はそれぞれの作品の1曲目に収録されているのに対し、リード曲「トウメイニンゲン」は6曲目。1曲目に収録にしたのは、グルーヴィーなディスコサウンドとは一線を画した、ロックサウンドの「FUTURE ICE CREAM」だった。このことについて健司は取材でこう振り返っている。「実は『FUTURE ICE CREAM』がこれからの決意を歌った曲なんです」。

 そうしたこともあってか、次に発表される新曲は、「FUTURE ICE CREAM」のようなロックサウンドが軸になると思われた。しかしながら、「オンリーワンダー」はこれまでの曲調を継承した王道サウンド。何があったのだろうか。それは、昨年下期に開催された自身初の全国ツアー『フレデリズムツアー』が大きく影響している。

 このツアーのコンセプトは、欠けたリズムを観客に求めるというものだった。そして、その狙いは見事に達成するのである。各公演で起きたとてつもない手拍子。完全に観客の手拍子が4つ目のリズムとして機能し、想像を超えるグルーヴが生まれていた。特に、最終公演の恵比寿リキッドルームでの手拍子から発せられる振動は、会場の床や壁をも震わせるほどだった。そして、彼らは確信するのである。「このままでいい」と。

■否定されて続けた過去

 今の流行りではないから――。デビュー前、ライブのブッキングスタッフに言われた言葉だった。今の流行りの音楽ではないから、このライブにはブッキングできない、と何度も言われてきたという。そうした苦汁を舐めた想いを心の底に抱えたまま走ってきた。しかし、それが解けたのが今回のツアーでもあり、その後に生まれた「オンリーワンダー」だった。

 オンリーワンダー。三部作を継承する、それまでのディスコロックを基調とする完全なるフレデリックサウンドだ。この新曲は今年1月からライブで度々披露してきた。健司は語る。「最初に披露した時よりも曲調も歌詞も変わってきています」。まさにライブを重ねてファンとブラシュアップしてきた、迷いなき歌である。

 そして、その想いは歌詞にも表れている。

 「どうなったってさ 最後まで 君は君のもの」
 「ほっとけ ほっとけ ほっとけないほど 大切なんです」
 「悲しみがなんだってんだ 歌ってんだ 歌ってんだ ずっとずっと」
 「扉を開くのは ワンダーテンダー オンリーワンダーなんだ」

 すべてはここに集約されている。

 昨年12月、NHK『MUSIC JAPAN』の収録に密着した際、康司がニヤリとして語った。「既に楽曲の構想はあります」。自信をのぞかせたその表情の意味が今作で明らかになった。彼らの強い確信は、楽曲からあふれ出て、歌詞の意味さえも超えた「応援歌」になっている。「他人がどういようと、自分が思う道を進むべきである」、音でそう語っているように。

■初のシングルでリリース

 そして、その楽曲を、自身初のシングルとしてリリースすることも意味深い。これが彼らの新たな代名詞とも言わんばかりだ。この楽曲を高らかに掲げておこなう『フレデリズムツアー』第2弾は、会場もZEPP規模と大きくなる。しかも、チケットはソールドアウト。「トウメイニンゲン」で問いかけた、実感のない“数値”はそれぞれの会場で“視覚化”されるのである。

 成長著しい彼らにとっては、一つひとつが彼らの音楽人生における歴史的価値を有する。しかし、今回の「オンリーワンダー」、そして『フレデリズムツアー』は迷いし昨年の分岐点をしっかりと選んで進んだ一歩。そういう意味においても重要な作品なのである。(文・木村陽仁)

最終更新:6月20日(月)7時1分

MusicVoice