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酒井高徳、25歳の進化…ボスニア戦で見せた「ドイツ仕様の守備」

ゲキサカ 6月20日(月)7時15分配信

 15年夏、3シーズン半を過ごしたシュツットガルトからハンブルガーSVへ新天地を求めた日本代表DF酒井高徳のドイツ5シーズン目が終わった。移籍当初は出場機会に恵まれなかったが、チームメイトの負傷もあって昨年11月7日の第12節・ダルムシュタット戦で初スタメンを飾ると、その後はレギュラーに定着。第12節以降の23試合のうち21試合に先発し、右サイドバックの定位置をつかんだ。海外では初となる移籍を経験した25歳は、どんな進化を遂げたのか。ゲキサカが直撃インタビューした。

先発定着までの時間は
そこまで長くなかった

―移籍1年目でしっかりスタメンを勝ち取ったというのは大きな自信になったのではないですか?
「そのとおりだと思います。試合に出られなかった時期が苦しかったのは確かですが、昨シーズンの途中からあまり試合に出ていなかったので、試合勘や自信を取り戻すには時間がかかると覚悟もしていました。試合に出られない時期の我慢が、結果としてシーズン後半につながっていったと思いますし、海外での移籍は初めてで、新しいことがたくさんありました。環境やチームメイトに慣れるのには時間がかかります。欲を言えば、もっと早く出たかったですが、一般的に考えれば、試合に出られるようになるまでの期間はそこまで長くはなかったのかなと思っています」

―新チームで慣れるのに一番大変だったことは何でしょうか?
「ドイツで長い間、プレーしているので、それぞれのチームがどういうスタイルかというのはある程度分かっています。ただ、実際に自分がプレーするとなると、自分がどういうプレーをしないといけないか、どういう個性のある選手がいて、自分はどういうふうに生きないといけないのか、そういうことを確認する必要があります。自分のフィーリングと相手のフィーリングを合わせるまでにはどうしても時間がかかるし、向こうも新しい選手が来れば、“どういう選手だろう”“コミュニケーションは取れるのかな”という不安があったと思います。いかにそこを早く埋めるかというのが大事で、いい経験になりました」

―シュツットガルト時代に指導を受けたブルーノ・ラッパディア監督の下でも、やはりチームスタイルに適応することは簡単ではなかったですか?
「監督は昨季の途中から就任して、入れ替え戦の末、残留しました。当時は僕は外から見ていましたが、“絶対に降格できない”という戦い方で、死に物狂いでサッカーをやっている印象でした。それが新しいシーズンになって、ガラッとスタイルを変えたんです。もともと監督はバルセロナのサッカーが好きで、攻撃的で、パスをつなぐサッカー、同時にインテリジェンスがある理想の高いサッカーを求めています。チームとしてそういうサッカーに慣れていなかったので、キャンプは“どうやってパスを回すのか”“チームのバランスをどう取るのか”というところからスタートしました。個人的に新しい要素が入ってきたというわけではなかったですが、プレーする選手が変わればやはり違いますし、選手間のフィーリングを合わせていく作業が大事でしたね」

―今季の経験は今後にも生かせそうですか?
「我慢することもそうですが、コンディションづくりは本当に大事だなと思いました。試合に出ずに試合並みのフィジカルコンディションをキープするためには相当な量のトレーニングが必要だということを痛感しました。普段の2倍、3倍というレベルでは利かないですね。通常のトレーニングにプラスアルファで追い込んでやっていましたが、実際に試合に出たときはすごくきつくて、すぐ疲労もたまりました。試合に出ていないときのパフォーマンス管理は、簡単にできるようで、意外に難しい。試合に出られない日々が続くと、ストレスもたまりますからね」

―居残り練習や自主トレを増やしたということですか?
「チームとしてフィジカルトレーニングをやるときに自分だけプラスアルファでやったり、試合翌日の練習が終わったあとにコーチを呼んでインターバルのシャトルランを入れたり、いろいろ工夫しました。自分の中では“いつ来ても大丈夫だよ”という状態をつくって、そういう姿を監督に見せることを意識していました。少しシチュエーションは違うかもしれないですが、日本代表のサポートメンバーとして南アフリカに行ったとき、試合に出たくても出られない選手、それまでずっと試合に出ていたのに本番で急に出られなくなった選手というのを見てきました。ブラジルW杯では僕自身がその一人でしたが、そういう選手の姿勢、その中でチームに貢献する力というのは、見ていてすごく勉強になりました。日本代表でそういう先輩の姿を見てきたからこそ、自分も心が折れたり、腐ったりするようなことは決してなかったですね」

守備で見せた進化
「最近、守備が楽しい」

―来季はどんなシーズンにしたいですか?
「終盤は残留争いに巻き込まれて、最終的に10位で終わりましたが、シーズンを通して見たら、上にもすぐに行けるし、下にも簡単に落ちるような位置にいました。ただ、個人的には5位とか6位で終わらなくて良かったかなと思っています。昨季は入れ替え戦まで回ったチームですし、いきなりグッと上がってしまうと、ドイツ人のメンタリティーとして“やっぱり俺らは強いんだ”ってなりやすいので(笑)。サボればすぐに落ちるけど、このサッカーを続けていけば上に行くチャンスもあるんだというのがハッキリ見えたシーズンでした。僕は、上に行く可能性をもっと信じたいと思っています。来季の目標は当然、今季より上の順位となる10位以内。できれば、欧州カップ戦圏内までいきたいですね」

―個人の目標はいかがでしょうか?
「自分に対する周りの評価という意味では、これまでは攻撃に関する部分が多かったと思います。ただ、今シーズンは守備のポジショニングや対人のところで崩れることが少なくなったという手応えをつかむことができました。22試合に出場して、自分の中でひどい守備だったという試合はなかったし、そこは守備が向上したのかなと思う部分でした。日本代表として出場した(6月7日の)ボスニア・ヘルツェゴビナ戦でも、カウンターへの対応はしっかりできましたし、対人でもほとんど負けませんでした。もちろん、もっともっと向上したいと思っていますが、少しは成長できたのかなと。一方で、攻撃には課題を感じています。“あのパスを通せたら”“あのシュートをもっと落ち着いて狙えていたら”“あのクロスの精度が高ければ”というシーンがすごく多かった。ドイツでも、日本代表でも、そこが自分の力を示せるポイントだと思いますし、結果の部分にはもっともっと磨きをかけたいですね。シュート、クロス、パス。すべてにおいて最後の精度を高めないといけないと思っています」

―確かにボスニア戦の守備には安定感がありました。同じ右サイドバックの内田篤人選手もドイツに行ってから守備がすごく上達したイメージがありますが、やはりブンデスリーガでの経験が大きいのでしょうか?
「ドイツに行った最初のシーズンは荒削りだったかもしれないですね。球際にフォーカスし過ぎて、何でも食いついて、とにかくボールに行こうと。ドイツ人はそういうプレーが好きなんですよ(笑)。でも、毎回、体に当たりに行くのではなく、一歩引いて相手の状況を見ると、意外と向こうがミスすることもあるし、インターセプトも狙いやすくなります。攻撃が好きなサイドバックとしては、インターセプトは常に狙いたいんです。カットして、そのままオーバーラップできますし、今季はそういうポジショニングをすごく意識してプレーしました。相手の前でボールを取るというのはハリルホジッチ監督が要求しているところでもあります。そこは今季、自分の中でも成長した部分かなと思っています。(内田)篤人くんの話じゃないですけど、僕もずっと攻撃が好きでした。ただ、最近は“今日は攻撃がダメだな”と思ったら、“その代わり守備では絶対にやられないようにしよう”と考えるようになりました。そこは自分でも変化なのかなと思いますね」

―内田選手も『ドイツに行って守備が面白くなった』と言っていました。
「(内田)篤人くんはもっとそう思うんでしょうね。僕は球際で五分の争いに持っていけたら、身体的に勝てる自信があります。篤人くんの場合、五分の競り合いではなかなか勝てなくても、読みや駆け引きでうまくボールを奪いますからね。そこは僕以上に楽しさがあるのかなと思います。でも、僕も最近、守備が楽しいんですよ。ボスニア戦も守備ではやられなかった印象が自分の中にありますし、周りの人からも『本当に安心して見られるようになった。前はヒヤヒヤするシーンが多かったけど』って言われますから(笑)」

―あの試合ではそういう印象を持った人も多かったと思います。
「ああいう体格の大きい選手とはいつも(ブンデスリーガで)対戦していますからね。若干、ドイツ仕様の守備にしたというのもあります。アジアだと、動きが読めないような選手も多いんですよ。“そこで裏を取ってくるのか”とか、全然狙ってないようなパスを単純に前に蹴ってきたり、アジアはある意味、予測不可能なんです。何をしてくるか分からないというところがあって、その一瞬で失点することもあります。だからアジア相手の試合では普段と守備の仕方を変える必要があって、ボスニアのような体格の大きい相手はブンデスリーガとちょっと似ている部分もあるので、逆にやりやすかったですね」

悔しさの原点
自分の力のなさに涙した

―ボスニア戦は攻撃が課題だったということですが、縦関係を組んだ浅野拓磨選手とは初めてのコンビでした。裏に飛び出すタイプの選手なので、酒井選手がその横をオーバーラップしていくというより、後ろからサポートする役目だったのかなと感じました。
「本人の特長は分かっていたので、狙いはそれでした。最初から(浅野の横を)回るつもりはなかったですね。チームのパターン練習も、浅野に当てて僕が中をオーバーラップするとか、僕が中に付けて浅野が裏に行くとか、そういう形でした。課題として感じたのは、僕がボールを持ったときに『浅野の裏をどうやって使うか』というイマジネーションがみんなで共有できていなかったということですね。浅野にも後半途中で言いましたが、(浅野の)動きが単調すぎた。『裏を狙うのは分かるけど、裏、裏、裏じゃなくて、スピードがあるんだから相手とヨーイドンの状況を作らないとダメだよ』と。自分のスピードを生かすために相手と駆け引きしないといけないのに、ずっとサイドバックの視野の中から飛び出している感じでした。あれだとサイドバックとしては守りやすいんです。一回ボールを受けて相手を引き付けるとか、相手の視線を自分から切らせる動きをするとか、そういう工夫をしないと、どんなに速い選手でも簡単に裏は取れないですから。『サイドバックのポジションを見ながら動きに変化をつけろ』という話をしましたね。それでも最後に裏を取って1対1のチャンスが来ましたから、そこは彼の速さのクオリティーなのかなと思います」

―最後の決定機はパスを選択して試合後に涙を見せていました。
「素直でいいじゃないですか。かわいくて」

―自分にもああいうことはありましたか?
「僕はないですかね。最後にサッカーで泣いたのはいつだろう。……ブラジルW杯のときですかね。あのときはもちろん負けたことも悔しかったんですが、どちらかというと、(内田)篤人くんがあんなにテーピングで膝をがちがちに巻きながらプレーしているのに、監督の中で自分が替えの利く選手と認めさせることができなかったことが悔しかったですね。日本代表の一員としてブラジルまで行ったにもかかわらず、そういうときに使いたいと思う選手になれなかった。そういう自分の力のなさに悔し涙が出たというのはありましたね」

―その内田選手の負傷離脱が続く中、今年3月のW杯アジア2次予選、6月のキリン杯では酒井宏樹選手と酒井高徳選手が1試合ごとに先発しています。
「もちろん、お互いにライバル意識は持っていますが、僕と(酒井)宏樹のライバル関係って、良いのか悪いのかは別として、お互いを認めているところがあるんですよね。自分には自分の好きなプレー、強みのスタイルがあって、宏樹は宏樹で自分のプレースタイルに強みを持っている。宏樹が試合に出て、良いプレーを見せたら素直に『良かったよ』って声をかけますし、『もっとこうしたらいいんじゃないか』というアドバイスをし合うこともあります。良いライバル関係というか、お互いがお互いをリスペクトしている感じですね」

―今の日本代表では右サイドバックが最もレギュラー争いの熾烈なポジションでもあります。
「もちろん、レギュラーで出たくないなんてこれっぽっちも思っていません。外から見たら右サイドバックはレギュラー争いが熾烈だと思うだろうし、実際にそうだと思います。でも、宏樹が先発で出てもそこまで気にならないというか、『自分ならこれができますよ』『こういうプレーをしますよ』という自信があるし、宏樹が自分より少しまさっているなと思う部分もあります。クロスの精度、最後のところのクオリティーは宏樹のほうが少し技術が高いのかなと思っていますし、その部分では宏樹が試合に出るのにふさわしい選手だとも思っています。逆にさっき話したとおり、自分はそこさえしっかりできれば日本代表のレギュラーとして試合に出る自信があるし、そこを求めていきたいと思っています。監督に対する一番のアピールは、どこのポジションであっても“結果”です。そこを追求していきたいですね」

―そんな酒井宏樹選手は今オフに「ドイツを出たい」とも話していましたが、高徳選手は今後のキャリアについてどう考えていますか?
「僕は結構、ドイツで満足していますね(笑)。環境も素晴らしいですし、選手のレベルも高い。ドイツ人の血も流れている? それもありますし(笑)、せっかくこれだけドイツ語を覚えたので、ここで他の国に行くのもどうなのかなって。僕は結構、ドイツが居心地いいですね」

最終更新:6月20日(月)7時15分

ゲキサカ

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TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。