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古民家活用でわかったこと。リノベの未来、この国の未来。/兵庫

Webマガジン コロカル 6月20日(月)16時52分配信

リノベのススメ vol.114

コロカル・Web連載【リノベのススメ】とは?
地方都市には数多く、使われなくなった家や店があって、そうした建物をカスタマイズして、なにかを始める人々がいます。4つの都市から週替わりでお届けする、リノベーションの可能性。今回は、兵庫県の丹波篠山を拠点に古民家の再生活用を中心とした地域づくりを展開する「NOTE 一般社団法人 ノオト」に担当していただきます。

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皆さん、こんにちは。ノオト代表の金野(きんの)です。

ついにこの連載も第12回、最終回となりましたので、古民家リノベの意義と日本社会に果たす役割について整理しておきたいと思います。いま、なぜ、リノベのススメなのか?


■失われゆく歴史的建築物

まず、文化財建造物とその活用について。文化財建造物には、文化財保護法で指定された国宝や重要文化財、都道府県や市町村の条例で指定された指定文化財などがあります。文化財建造物には神社仏閣が多いのですが、ここでは民家や庄屋など市井の建築物の話をします。「◎◎家住宅」とか呼ばれるものです。

文化財建造物は国民の財産ですから、その改修には、基本的に公費が投入されます。

そして、「文化財を活用」するというとき、それは「復元保存した文化財建造物を活用」することを想定していて、一般に、施設の「公開」や「イベント利用」などに限定されています。
※これを「保存→活用」と表現しておきましょう。

文化財建造物は「類型の典型を指定する」ことになっています。

ある地域の、ある時代の、例えば農家という「類型」を設定すると、該当する建物が多数あって、そのなかから、類型を代表する「典型」的な建物が文化財として指定されるのです。その物件を民族学的な標本として保存します。

現在の日本社会の価値観は、

・古き良きものを代表する物件を「標本」として「保存→活用」する。
・代表になれなかったその他の物件は捨ててもよろしい。

というものです。この国の制度(文化財保護法や建築基準法)がそのようになっています。

これに対して、私たちは、歴史的建築物(文化財指定の有無を問わない広義の文化財建造物)を、宿泊施設やレストラン、カフェ、工房、オフィス、住宅などとして「活用することで保存する」活動を行っています。
※こちらは「活用・保存」と表現しておきます。

地域再生のために古民家を活用するプレイヤーの立場から言えば、文化財建造物もその他の歴史的建築物も区別はありません。これらを一体的に捉えており、どちらも同じように大切です。文化財建造物が「活用・保存」されることがあってもよいし、グレード(文化財的価値)が低い歴史的建築物であっても、それに見合った「活用・保存」の方法が見つかるものです。地域やまち並みに分布するその多様な建築物群の総体が重要です。

ちなみに、この「保存→活用」と「活用・保存」の境界をわかりにくくしているのが、「伝統的建造物群保存地区」の特定物件と「登録有形文化財」の存在です。

どちらも文化財建造物でありながら、内部改装は自由にできるので「活用・保存」タイプとすることが可能なのです。古民家リノベを志す人は、このあたりの事情を理解しておくとよいでしょう。


■古民家リノベの意義

何れにしても、一個の有機体である地域やまち並みから、文化財建造物だけを取り出して取り扱うことの限界というものがあります。当たり前のことですが、文化財はその周辺の環境や社会とともに成立しているのですから。

これはたとえ話ではなく、地方の現実の姿なのですが、一部の社寺や住宅を文化財として立派に保存しながら、そのまちや村が衰退して生活の息吹が失われるのであれば、文化財の維持も適わなくなるし、そもそも文化財指定の意味がないでしょう。

私たちは、地域再生やまち並み再生には、文化財指定されていない歴史的建築物の活用が大切だと考えています。

「保存→活用」ではなく「活用・保存」とすることで、地域に移住者や事業者を呼び込み、新しい生業や雇用を生み出すことができます。しかも「類型の典型」として指定される文化財建造物の背後には、その数百倍の歴史的建築物があって、その多くが空き家となっているのです。改修費も文化財建造物の保存工事に比べると驚くほど安価です。


■建て直したほうが安い?

実際に古民家再生の費用は新築工事より相当に安価です。しかし、修復の技術を持ち合わせていない設計士や工務店は、施主に「建て直したほうが安い」と言って、解体工事、新築工事に誘導します。そのほうが工期も読みやすいし、実際には「建て直したほうが高い」ので稼げます。

結局、施主は諦めて、古い家を壊し、新しい家を建てることになります。

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最終更新:6月20日(月)16時52分

Webマガジン コロカル