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「計算してできる映画ではなかった」綾野剛が語る『日本で一番悪い奴ら』

ぴあ映画生活 6月21日(火)17時37分配信

綾野剛が主演を務める新作映画『日本で一番悪い奴ら』が公開になる。本作で綾野が演じるのは、“黒い警部”の異名をもつ刑事で、裏社会とつながりをもちながら捜査を行い、いつしか自身も悪に手を染めていく。綾野は、作品ごとに大胆にイメージを変化させているが、その裏側には、演技をすることに対する真摯な姿勢と、観客も含めた周囲に対する敬意が常にあるようだ。

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綾野は以前から本作を手がけた白石和彌監督との仕事を望んでいたという。「僕が日本アカデミー賞で新人賞をいただいた時に、白石さんは『凶悪』チームでいらしていて、リリー・フランキーさんから紹介していただいて、『ぜひご一緒したいです』とお伝えしました。その後、マネージャーから『白石さんからオファーが来ました』と言われたので、プロットも読んでなかったんですが『はい。やります』と返事をしました。その後にプロットを読ませていただいたら“拳銃200丁、覚せい剤130キロ、大麻2トン、日本で一番悪い奴ら、白石和彌監督”って書いてあったので、お受けしない理由が見つからなかったです」

綾野が演じた諸星は、右も左もわからないまま、北海道警察に入り、一生懸命に捜査がしたい、手柄をあげたいという想いから、裏社会の情報を仕入れるために“S(エス)”と呼ばれるスパイをつくり、いつしか彼らと友情を深めていく。劇中には暴力的なシーンも、性的なシーンもあり、俳優によっては自身のイメージを守るために、出演しているCMの企業に遠慮するあまり、役を受けることを躊躇する者もいるだろう。「御自身のイメージでお仕事をされている方もいますし、“俺は俺なんだ”というものを確立されている方もいますし、僕はどちらも否定するつもりはないです。ただ、僕はあくまでも選ばれる側の人間ですので、応援してくださる方や、映画を作っている方から『役者って面白いな』ってオモチャみたいに扱ってもらえることで、色んな役柄や色んな規模の作品に出させていただけると思うんです。僕に対して関係者の方々は寛大ですし、我々も敬意を払って寄り添うことで、こういう映画を世に出すことができます。演技でキチンと評価されることが僕ができる恩返しだと思っています」

その上で、綾野は「計算して出来る映画ではなかったので、ただただ熱量だけを持って演じた」という。「(諸星のモデルになった)稲葉さんが100丁もの拳銃を挙げられたのはそれだけの熱量を持っていたからで、そして、楽しかったからそれだけの熱量をもてたと思うんです。だから、面白く演じるのではなく、あらゆる物事に対して“一生懸命”に演じました」。諸星は銃を押収するために密輸に手を染め、手柄を立てるために仲間と計画を練って違法薬物の密輸に参入する。目的を達成したいという熱と、結果がついてくる楽しさ、仲間の温かさの中で、諸星の感覚は麻痺していく。「現場ではいつも白石監督が手綱を握っていてくれるんです。だからテストの段階から100パーセントでやって、監督が『それ以上でも大丈夫ですよ』って言ってくれたら、『ということは、120パーセントで来いってことか』と思えるんです。僕に指示がなくても、相手の俳優に指示が出て演技が変われば、それを反射して僕のトーンが自然に落とされることもあります。そうして、役者の不良性感度が高まっていくのに、登場人物が観客から愛されるポジションにずっと置かれている。この映画って出てくる人が全員、憎めないじゃないですか。それができたのは、白石監督のとてつもないセンスと、役者を活かす“手綱力”のおかげだと思います」

そこまで全力を尽くし、振り切った役を演じても、綾野は「この映画を観たことで誰かが傷つく可能性はありますら、ファンの方や関係者の方への敬意は絶対に持っていたいと思っていますし、謙虚さはいつも忘れてはいけないと思っています」と穏やかに語る。「僕はあくまで裏方で、諸星が主役ですから」。この言葉が綾野の姿勢を何よりもあらわしているのではないだろうか。

『日本で一番悪い奴ら』
6月25日(土) 全国ロードショー

最終更新:6月21日(火)17時37分

ぴあ映画生活

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。