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狩猟は成長産業だ 移住者 自ら仕事興し 免許取り食肉加工 里山生活のモデルに

日本農業新聞 6/21(火) 13:00配信

 過疎地域で、都会からの移住者が狩猟免許を取得、捕獲したイノシシや鹿をジビエ(野生の鳥獣肉)に加工して収益につなげる「狩猟ビジネス」が芽生えてきた。大日本猟友会の会員は2015年度、37年ぶりに前年度に比べて増加、狩猟の後継者が少しずつ育っている。先輩の狩猟者に技術やこつを教わりながら、若者たちは里山を守る挑戦を始めている。

 兵庫県朝来市和田山町の地域おこし協力隊、吉原剛史さん(41)は5月、鹿をさばいて都会のレストランに出荷するジビエ加工所を立ち上げた。「狩猟をなりわいに、里山で若者が生きるモデルを示したい」と意気込む。

 吉原さんは東京都足立区出身で大学を中退後16年間、オーストラリアで暮らしていた。滞在中、東日本大震災が発生したことで日本を見つめ直した。「自然に寄り添い、住民が助け合って生きる日本の中山間地域に未来を感じた」と帰国。数ある農山村の中から「野生の勘」で朝来市を選んだ。

 14年に移住、わなと銃猟の免許試験を受けた。狩猟者を志したのは「里山の厄介者を資源に変えられたら、中山間地域の課題解決につながる」と考えたからだ。猟友会に所属し60~80代の狩猟者と山を歩き、4月からは市の駆除隊に加わった。

 今後は猟友会の先輩にも協力してもらい、年300頭の鹿をジビエに加工する考えだ。現在は手探りの状態だが、加工所と狩猟を軸に生計を立て、定住を目指す。

 同市には狩猟をする若者が目立ってきた。同県宝塚市出身の高田尚希さん(36)も昨年、狩猟免許を取得し地元猟友会に入会。「個人で狩猟するのはほぼ不可能。猟友会に入って、先輩に教わった方が確実」と実感する。

 朝来市の狩猟者、高濱健さん(72)は「50代の狩猟者が地元にほぼいない。移住してきた30、40代が頑張ってくれるのはうれしい」と歓迎する。

・ジビエ民宿 人気

 各地の猟友会や都道府県によると、全国各地で移住者や若者が狩猟ビジネスに挑戦し始めている。

 高知県大豊町に住む安達大介さん(33)もその一人。12年に東京都から移住し、狩猟後は食肉にして自身で経営する民宿「みちつじ」などで提供する。宿は1泊2食7500円で、鹿肉のローストやハンバーグなどを出す。都会の女性客らから人気を集め、「ジビエ民宿」としてリピーターが増えている。夏に向けて、週末の満室も多くなった。

 ただ、狩猟技術の習得は難しい。安達さんは「新参者なので猟は大変。狩猟やジビエで生計を立てるのは厳しい」と本音を明かす。農閑期は、鹿皮をなめして毛皮を数万円で販売するなど収益アップへ工夫を凝らす。手間が掛かり、まだまだ収入増に課題は多いものの、安達さんは「狩猟ビジネスは未来がある産業。皮革から骨、肉まで丸ごと商品化したい」と夢を抱く。(尾原浩子)

日本農業新聞

最終更新:6/21(火) 13:00

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