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【千葉魂】 鈴木キャプテンの金言 中村へ、悔しさが次の原動力

千葉日報オンライン 6/21(火) 11:40配信

 ロッカーで一人、荷物整理をする後輩に声を掛けた。そして、周囲の目を気遣って、誰もいない場所に呼び寄せた。6月7日の阪神戦の試合後、中村奨吾内野手は打撃不振で2軍落ちを言い渡された。プロ2年目で初の2軍落ちだった。その心情を察して、鈴木大地内野手は1軍ロッカーを後にしようとする中村を呼び止めた。

 「2軍では誰よりも声を出して、誰よりも練習をしろ。2軍落ちして、落ち込んだり、腐ったりするなよ。みんながどんな態度をとるかと注目をしてオマエを見ている。元気なところをアピールしろ」

 中村はコクリとうなずいた。そして神妙な表情で聞き入った。続けて、鈴木は自身のルーキー時代の話をした。それは今の背番号「7」の土台となっている貴重な時期だった。

「入団1年目、同期がみんな1軍でプレーをする中、オレだけが2軍だった。でも、その2カ月半が今、自分の中でものすごく生きている」

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 鈴木は1年目のオープン戦途中で2軍落ちをした。一方で、同期の藤岡、中後、益田は開幕1軍の切符を手に入れた。2軍が休日だったある日。寮の自室で1軍の試合をテレビ観戦していた。藤岡が先発。順調にイニングを重ねた。「きょうも頑張っているなと見ていた」。途中、睡魔が襲い、眠りについた。目を覚ますと、すでに夕方になっていた。日差しは弱まっているのを確認し、試合が終わっているだろうと直感した。つけたままだったテレビに目をやると、ヒーローインタビューが始まっていた。「あの時は『藤岡は勝ったのかあ?だとしたらヒーローかな』ぐらいの軽い気持ちでボーッとテレビを見ていた」。予想通り、藤岡が呼ばれた。続いて中継ぎで好投をした中後が上がった。そして、さらに同じく好投をした益田が呼ばれた。4人しかいない同期のうち、自分以外の3人が1軍のお立ち台に上がっている現実は残酷だった。自分が自室で昼寝をしている時にヒーローしか手に入れることのできないマーくん人形を片手にたくさんカメラのフラッシュを浴び、うれしそうな顔をする3人の姿に、思わずテレビのスイッチを切った。

 「あんな感情になったのは初めて。いつもアイツら頑張っているなあと応援していたのに…。あの時は悔しさが先に来た。焦りではないけど、オレ、何やってんだと、本当にへこんだ。でも今思うと、その時の悔しさこそが自分のエネルギーになったし、今でもあの時の気持ちを忘れたことはない」

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 2年目以降の鈴木の活躍は誰もが知っている。けれど、その原点は誰も知らぬ1年目の悔しい思い。2軍でガムシャラに練習に励んだ日々だ。だから、不振からプロ入り初の2軍行きを命じられ、ロッカーで打ちひしがれる中村に話をした。自身の経験を元に、この悔しさこそが次のステップへの原動力になることを伝えたかった。

 「すぐに1軍に呼んでもらえるように元気を出して、必死に頑張ってきます」

 中村にキャプテンの熱き思いは確かに伝わった。前向きな表情を取り戻し、たくさんの荷物を抱え、QVCマリンフィールドを後にした。

 突きつけられた現実に目を背けることなく、胸に刻む。みじめさ、悔しさは未来に立ち向かう大きな糧。失敗があるからこそ、栄光もあり、手に入れた時に達成感を得られる。ロッテ浦和球場での初めての2軍生活。同じ世代のどの選手にも負けるものかという飢餓感の中で若者は懸命に過ごした。そして6月18日、再び1軍の舞台に帰ってきた。先輩の金言を忘れることなく、少し日焼けをして返ってきた中村にキャプテンは声を掛けた。「お帰り!」。優しくニヤリと笑って握手を求めた先輩のその手を強く握り返した後輩は、やる気と自信がみなぎっていた。

 (千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)

最終更新:6/21(火) 11:40

千葉日報オンライン

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