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原発の劣化予測、正確さは未知数 高浜1、2号機の運転延長を認可

福井新聞ONLINE 6月21日(火)8時45分配信

 「相当困難」とされていた原発の40年超運転が、全国初申請の関西電力高浜原発1、2号機(福井県高浜町)で認められた。原子力規制委員会は「劣化を予測し、更新すべき部分は更新して、新規制基準を60年間維持できる」と判断した。ただ焦点となった原子炉圧力容器の劣化に関し、予測値が正しいか未知数という不安が残る。耐震試験の一部は未実施のままだ。原子炉等規制法が定める「40年」の制限は、早くも骨抜きとなった。

 ■原子炉容器の脆化

 運転延長審査で議論の一つになったのが、原子炉容器が中性子の影響を受けてもろくなる現象(脆化(ぜいか))だ。温めたガラス容器が急に冷えると割れてしまうようなことが、もろい原子炉では起こりうる。運転延長審査では、脆化の進み具合を関西電力が予測し、その妥当性を規制委が審査した。

 関西電力は炉内の試験片の調査結果を元に、運転開始から60年時点でも健全性を保てるとしたが、井野博満・東京大名誉教授(金属材料学)は疑問を呈する。

 高経年化(老朽化)対策の専門家である井野氏は、もろくなり始める温度について、今回の調査結果を踏まえた予測値が10年前の技術評価の結果と比べ大幅に上昇していると指摘。「予測式自体に信頼性がない。今の時点で、60年まで大丈夫だと保証しているとはいえない」と警鐘を鳴らす。また一部のデータが非公表で「第三者による正確な検証ができない」との問題点を挙げた。

 関西電力は、「予測式に余裕を持たせた結果。現段階では問題ないと判断している」と主張。今後の検査で、健全性を再評価していく考えだ。

 運転延長が認められる前提として必要な、新規制基準の適合性審査の中にも積み残しがある。蒸気発生器など、一部の耐震試験は後回しになっている。

 「最新の知見を反映したい」(関西電力)として、揺れの収まりやすさについて建設時とは異なる値を設定。安全対策工事が終わった後、使用前検査で実際に揺らして確認する方針だ。検査不合格なら再稼働できないが、合格するまで再改造は可能。合格まで何度でも改造できる仕組みは「後出しじゃんけん」との批判が根強い。

 関西電力は、構造が同じ美浜原発3号機(福井県美浜町)で試験を実施。現段階では、新しい値をクリアできたという。

 ■金掛けるかの「踏み絵」

 高浜1、2号機を再稼働するのに必要な安全対策工事費は2160億円にも上る。格納容器上部のドーム、ケーブルの防火対策、自主対策としての免震事務棟の建設まで多岐にわたる。

 今年7月7日までに運転延長審査を完了する必要があったのは、高浜1、2号機を含め全国に7基あった。このうち高浜以外の5基は、事業者も規制委も安全性を突き詰めることなく、「費用対効果」を理由に廃炉となった。

 「事業者が取捨選択するのが40年制限の意味なのか」。20日の会合後、ある記者の質問に、田中俊一委員長は「経済性や新規制基準の適合性も考えて申請してくるのだと思う」と答えをはぐらかせた。運転制限の根拠はあいまいで、県内関係者からは「膨大な金を掛けられるか、規制委が事業者に踏み絵を示しているだけ」との皮肉も聞かれる。

 審査を通した以上は規制委の責任も明確になる。田中俊一委員長は「安全対策ができているかは、検査の中でみていく。いろんな形で検査体制は強くなっていく」と強調してみせた。

福井新聞社

最終更新:6月21日(火)12時18分

福井新聞ONLINE