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決定から完成まで半年! 川崎市に新駅・小田栄駅ができたワケ

SUUMOジャーナル 6月21日(火)7時30分配信

今年3月、川崎市川崎区に新駅「小田栄駅」が誕生した。川崎市とJR東日本が「戦略的新駅」と位置づけているこの駅、許認可事業が下りたのが2015年8月で、2016年3月には完成するという、異例のスピードで完成した。それでは、駅ができるまでの背景とは? 住民の声とともに紹介しよう。

■事業費は約5億5000万円。「安く早く」でできた小田栄駅

新駅ができたのは、南武線に接続する南武支線の川崎新町駅~浜川崎駅の間。とはいえ、南武支線と聞いて、ピンとくる人は多くはないはず。このエリアは川崎市川崎区の昔ながらの住宅街エリアで、南武支線も通勤路線というよりは、臨海部の工場への通勤手段、もしくは貨物線として活用されてきた。

では、なぜこの南武支線に新駅が誕生したのか、横須賀線の武蔵小杉駅と同様、請願駅なのだろうか。川崎市まちづくり局交通施策室広域交通対策担当の担当課長・藏内政之さんに聞いた。

「JR東日本と川崎市は、2015年1月に包括連携協定を締結しました。『小田栄駅』はその第一弾にあたるため、『戦略的新駅』という位置づけで構想がうまれました。8月には事業基本計画の認可を取得、11月に工事着工、今年3月に開業しました。包括連携協定を知ってもらうためにも、『早く、安く』に注力した駅だったんです」と話す。

事業費は5億5000万円ほど(川崎市とJR東日本が折半で負担)だが、通常、新駅誕生には20億円ほど必要ということなので、いかに「早く・安く」がテーマだったかが分かるというもの。また、JR東日本も注力しており、「小田栄駅」開業にあわせて、JR東日本では南武支線の車両の座席シートをリニューアルしたほか、車両側面の帯をデザイン化、朝と夕方の時間帯で増便・増発をしたという。

ちなみに「戦略的新駅」とは、JR東日本と地元地域がともに発展していくための駅という意味合いだという。今後、人口減が加速し、収入減が予測されるJR東日本と、今後も人口が増え、さらなるインフラ整備が必要な川崎市の両者の思惑が一致し、新駅誕生につながったといえそうだ。

【画像1】尻手駅に停車する南武支線の車両。先頭車両に緑&黄色を配して、明るいイメージに(写真撮影:嘉屋恭子)

【お詫びと訂正 2016/6/21 11:37】
 画像1の説明で「矢向駅に停車する」と記載していましたが、正しくは「尻手駅」でした。お詫びして訂正いたします。

■小田栄駅の誕生で武蔵小杉・立川方面へのアクセスが向上

気になる利便性だが、小田栄駅誕生により便利になったのが、武蔵小杉・立川方面へのアクセス。特に起点となる尻手駅ではホームの反対側に南武線立川方面への電車が到着するため、乗り換えがスムーズ。武蔵小杉駅から湘南新宿ラインを利用すれば、渋谷や新宿、池袋へもアクセスがよく、所要時間が短縮できるようになったという。

こうして、早く、安く「小田栄駅」ができたのには、小田栄エリアの急激な人口増がある。武蔵小杉と同様、近年、大型マンションの誕生により、人口が5000人ほど増加。バスや自転車など、既存の交通手段に加えて、その分の交通手段を確保する狙いがあったようだ。

しかし、小田栄駅が誕生したとはいえ、大ターミナル駅である川崎駅には直通ではなく尻手駅、もしくは八丁畷(はっちょうなわて)駅で乗り換えが必要になる。また、無人駅なので、とても簡素なつくり。筆者が駅を訪れた平日の昼間の時間帯は1時間2本と、運行本数は多いとはいえず、人もまばらだった。一方で川崎駅行きのバスは本数も多く、こちらの利用者は絶えることはなかった。

「私どもとしても、小田栄駅ができたからといって、いきなり川崎駅までの利用手段になるとは思っていません。ただ、都心部へのアクセス向上、雨の日など、移動手段の選択肢が増えたことになり、利便性が向上するのではないでしょうか」(藏内さん)

【画像2】小田栄駅は無人駅で、ICカードをタッチして入退場する。また、上りホームと下りホームがわかれている(写真撮影:嘉屋恭子)

【画像3】小田栄駅の時刻表。昼間の運行本数が少ないほか、終電が早いことも課題に(写真撮影:嘉屋恭子)

■川崎駅まではバスで行く? 地元の反応は……

では、地元に住んでいる人の反応はどうだろうか。

筆者が聞いた限りでは、おおむね好評で、「駅ができたのはうれしい」(60代男性)「普段使うのはバスだけど、立川方面に行くときは使うかも」(50代女性)と歓迎している様子。

「駅自体は喜ばれています。地元で行った住民説明会などで聞かれるのは、駅周辺の安全の確保ですね。特に駅をおりてすぐにY字路があるほか、道路の規模に対して交通量が多いため、事故が起こらないように、という話はよく出ています。あとは、本数の増加です。また、現在、終電が22時台なので、これをもう少し遅くできないか、という話も出ています。こちらは今後の課題ですね」と話す。

また、安全策として、川崎市としてはバス停の場所を整備したほか、駅となりの駐輪場を用意し、1年間利用料は無料とし、交通量の増える朝と夕方に交通整理員を配置、交通事故の防止に取り組んでいる。では、今後、新駅や新路線がどんどんできるということはあるのだろうか。

「JRと川崎市として包括協定にのっとって、南武線の輸送力の増強や踏切環境の改善、川崎駅北口自由通路の設置整備などに取り組んでいきます。特に南武線の混雑率は高く、市としても課題と考えていて、どうにか混雑緩和をできないかと思っています。また武蔵小杉駅の利用者増に伴う、ホームドアの設置をはじめ、安全策もすでに依頼しています」

武蔵小杉駅の人気急上昇などもあり、川崎市は今後10年先まで人口増が続くと予想されている。ただ、一方で駅などの交通インフラ整備は時間もお金もかかるもの。地味だが行政や電鉄会社のあいだで着々と行われている、駅や路線の整備にも注目してみてほしい。

【画像4】川崎駅行きバスは5~10分に1本のペースでやってくる。小田栄駅の誕生をきっかけに、道路のカラー舗装など、安全性を高める工夫も(写真撮影:嘉屋恭子)

●取材協力
・川崎市

嘉屋恭子

最終更新:7月14日(木)16時24分

SUUMOジャーナル