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【インタビュー】島爺「この1枚で歌い手としての人生が急降下しても、悔いのないように」

BARKS 6月23日(木)22時34分配信

一聴すれば瞬時に引き込まれる圧倒的な歌唱力と、時に切れ味鋭く、時に甘美で渋い魅惑の歌声。“永遠の82歳”として活動する歌い手・島爺が、本日6月22日に初音源にして1stアルバム、その名も『冥土ノ土産』をリリースした。代表曲「ブリキノダンス うたった【SymaG】」はニコニコ動画約400万再生を誇り、今もなお再生数を伸ばし続けるなど、お爺ちゃんというキャラクターと対極にある歌声でファンを集めてきた島爺。だが彼は、一体何者なのか?

◆島爺画像

その実体に近づくべく、今回BARKSは島爺にスカイプインタビューを実施した。バンド活動を含むこれまでの音楽経歴、今作のリリースに寄せる感慨、『冥土ノ土産』というタイトルに込めた本当の意味、そして島爺にとって“歌”とは。ライター山口哲生氏が迫った。

   ◆   ◆   ◆

■バンドのときにメジャーでリリースができなかったという心残りもあって
■形は違うにせよ、その夢が叶うんやなって

──待望の初音源となる『冥土ノ土産』ですが、完成させてみていかがですか?

島爺:そうですねぇ……やっと形になったんやなって。ニコニコ動画での経歴だけじゃなくて、音楽を始めたときからのことも全部含めて、形になったんやなって思いましたね。なんかこう、喜びだけでもなく、いろんな感情が全部混ざってる気がします。

──喜怒哀楽全部?

島爺:はい。昔、バンドをやっていた頃にはデビューできなかったので、もしそっちの方でうまいこと行っていたら、こういう感覚にはならなかったのかもなぁとは思いますね。

──そもそも、音楽を始めたのはいつ頃だったんですか?

島爺:高校を出てからですね。友達連中とカラオケに行ったときに、歌を褒められたことがキッカケだったんですけど。

──元々音楽が好きだったとか?

島爺:いや、そうでもなかったんです。それまでは、Mr.Childrenさん、スピッツさんやサザンさんなど、本当にメジャーどころしか聴いてなかったんですけど、カラオケで褒められたことで、なんかスイッチが入っちゃって(笑)。

──そこからバンドを仲間内で始めたんですか?

島爺:まぁそんな感じですね。そこから邦楽ロックとかヴィジュアル系とか、あとは洋楽もですけど、メジャーなポップスだけではなく、マニアックなものまで聴くようになって、どんどん広がっていった感じです。でもバンドではコピーではなく、最初からオリジナルをやっていました。ちょっと激しめのギターロックみたいな感じの音楽性です。

──パートはボーカル?

島爺:最初はそうだったんですけど、活動を続けていくにあたってギターがいなくなって、自分が弾かざるを得なくなり、ギターボーカルをやってました。

──ただ、そのバンドは解散してしまい……。

島爺:はい。そうです。

──そこから動画投稿を始めたんですか?

島爺:正確に言うと、バンドをやっているときに、島爺ではないアカウントで、3、4曲ぐらい動画を投稿してたんですよ。録音機材も全部持ってたし、ミキシングも自分でできるんで、すぐにできるなと思って。その動画もそこそこ再生されてたんですけど、バンド活動が忙しかったので、そのままになっていて。で、バンドが解散したときに、そのことを思い出したんですよね。バンドをやめても、音楽は一生続けていくだろうと思っていたので、趣味で歌を続けるんだったら動画とかを地道に投稿して行こうかなって。

──島爺として投稿し始めているのは、2011年の秋からですけど、そもそもなんで“島爺”なんですか?

島爺:昔から“年寄り臭い”って友達からよく言われてまして(笑)、あだ名で「おじいちゃん」って呼ばれていたりもしてたんです。で、ネットで精神年齢鑑定みたいなサイトをやったら、結果が82歳だったんですよ。

──なるほど(笑)。

島爺:そのインパクトがあまりにもデカかったので、「永遠の82歳」というのと、なんとか爺にしようと思って。「島」というのは、何爺にしようかなって考えてるときに、パっと一番最初に目についたのが、机の近くにあった地図の「○○島」で。その“島”からとって、島爺です。

──島爺っていう名前をここまで使うことになると思ってました?

島爺:全然思ってなかったです。だから結構早い段階で後悔はしましたね(笑)。もうちょっとちゃんとした名前にすればよかったなって。でも今となっては下手にカッコつけるよりもインパクトがあっていいなとは思ってますけど。

──そこから活動を続けてこられて、今回が初音源になるわけですが、そもそも動画の再生数も多いですし、きっと過去にもCDのお話はあったと思うんです。それに、ライブ活動をされている歌い手さんも多いですけど、島爺さんはここまで人前に出たことがなくて、最近の潮流とはちょっと違う部分もありますよね。そういった面で、今回のCDリリースは、島爺さんにとってかなりの決断だったのではないかと思うのですが。

島爺:そうですね。僕の中では、これまでは趣味の範疇とはいえ、大きな決断でしたね。他の歌い手さんがどうかはわからないですが、僕としては、歌うことの目的はデビューであったり、CDを出すことではなかったんですよ。楽しめるだけ楽しみたいと思ったのが始めたキッカケだったので。それに、僕のそういう活動スタンスが好きで、リスナーになってくれた方々もたくさんいらっしゃるみたいなんですよね。だから、僕がCDを出すということで、リスナーさんの大半に愛想を尽かされてもしょうがないと思ってますし、今もその気持ちは変わっていなくて。

──そこまでの覚悟やリスクを把握している上で、なぜCDを出そうと思えたんですか?

島爺:まぁ、とりあえずワーナーさんがしつこかったんですよ(笑)。おっしゃっていた通り、今まで何度かオファーみたいなものは受け取っていて、その度にやんわりとお断りしていたんですが、何回そういう返事を送っても、また送って来るんです(笑)。そういうやり取りをしているうちに、ここまで言ってくれるんやったらって考えるようになって。あとは、バンドのときにメジャーでリリースができなかったという心残りもあって、その夢が、ちょっと形は違うにせよ叶うんやなっていう想いもありましたので。

■歌う人よりも、曲を作る人よりも、
■曲自体が一番偉いと思ってるんです

──そういった想いから制作された今回の『冥土ノ土産』ですが、ボカロ曲をメインに、過去にアップされていたものから、今回初めて歌うものまで収録されていますけど、どんな1枚にしたいと思っていましたか?

島爺:先ほど話した流れの中にもあったんですけど、この1枚で僕の歌い手としての人生が急降下しても悔いはないと思えるような作品にしよう、僕個人が満足できる作品にしようと思ってました。

──そこまでの強い決意を込めたタイトルなんですね。僕、おじいちゃんだからこのタイトルなのかな?って割とシンプルに捉えていたんで、今お話を聞いてて鳥肌立ちました。

島爺:ははははは(笑)。もちろん、単純におじいちゃんが使いそうな言葉っていう意味もありましたよ。

──制作してみてどんなことを感じました?

島爺:やっぱりプレッシャーは半端じゃなかったです。昔はニコニコ動画に動画をアップするだけでも、かなり胃が痛い想いをしたんですけど、その頃を思い出した感じもあって。

──最初の頃もプレッシャーはあったんですね。趣味の範疇とはいえ、ちゃんとしたものは出さなければいけないっていう。

島爺:はい。最近はそうでもないかもしれないですけど、結構辛辣な意見もコメントでバンバン言われるので、最初の頃は動画を作るたびにビクビクしてましたからね(笑)。今回の制作で、自分の歌の欠点とか、ミキシングでの技術的な面とか、改めていろんなことが分かったので、個人的にはかなり成長出来た気がしてます。

──そして、今回唯一の書き下ろし曲として、ナナホシ管弦楽団の「OVERRIDE」が収録されますが、楽曲制作にあたっていろんな話し合いをされたんですか?

島爺:いや、僕は“テンポが速い曲”としか言わなかったんですよ(笑)。

──歌詞もかなり生々しいし、ドキっとさせられる言葉が多いですけど、そこに関しても?

島爺:何も言ってないんです。それなのに、この完成度のものをいただくことができた。僕の心情としては、これは『冥土ノ土産』なので、この作品に無作為に多くの人に関わっていただくのも失礼かなって思ってたんですよ。

──もしかしたら、これが最後の作品になってしまうかもしれないから。

島爺:はい。でも、過去にナナホシ管弦楽団さんの楽曲を何曲も歌わせていただいてましたし、ナナホシさんなら今の僕の感情を汲んで曲にしてくれるんじゃないかっていう信頼感があったんですよ。それで今回唯一お願いをしたんですけど、受け取ったときは本当にすごい!としか思えなかったですね。全部通じてるんや!って。

──日頃からよくやり取りをされてたりは?

島爺:全然してないですね。

──すごく深いところで通じ合ってらっしゃるんですね。そして、初回限定盤にはJポップの弾き語りカバーが収録されますね。これはどういう意図ですか?

島爺:これは初回限定盤のみのものなので、手に入れているのはおそらくコアなリスナーさん達だけだろうなと。そういう方々なら、ボカロ曲とか最近の曲じゃなくても、名曲であればしっかり聴いてくださるだろうと思ったんです。なので僕が名曲だと思うものを選曲して、かつギターはそこまで巧く弾けないので(苦笑)、弾き語りであればわりとすんなりできそうというところはありました。

──こういったアコースティックなものもそうですし、本編DISCのほうではアッパーなものからダウナーなもの、ポップなものからハードなものまで幅広く選曲されていて、それを見事なまでに歌い上げているわけですが、島爺さんが歌うときに一番大切にしていることはなんでしょう?

島爺:ここの音程はこうだから、こういう声の出し方をしてって考えながら歌うと、絶対にロクなことにならないんです。そういうのは全部練習で済ませておいて、しっかりと曲が身体の中に入った状態で、思いのままに歌うっていう。それぐらいですかね。僕、“曲によって全然違って聴こえる”って言われるんですけど、僕としては、歌う人よりも、曲を作る人よりも、曲自体が一番偉いと思ってるんですよ。僕は曲に歌わせてもらっていると思っているので、どう表現したら曲に褒めてもらえるかっていうのは、いつも考えてます。

──覚悟の1枚だけあって、選曲は結構悩みました?

島爺:悩むと思ったんですけど、結構早かったです。今思うと、なんであんなにスムーズに決まったのかよくわかんないんですが(笑)。

──でも、それぐらい自分の中に歌いたいものや絵が見えてたんでしょうね。個人的には、最後から2曲目に「初音ミクの消失」を置いているのがすごく重要というか、エモいなと思いました。

島爺:この曲を選んだのは──歌い手を始めてから、滑舌がいいと褒められることが度々あって、そこで初めて気づかされたんですね。わりと早口でも歌える自分に。なので、ボーカロイド作品ならではの早口な曲を、一曲は入れたいなというのがぼんやりとあって。それだったら、今まで歌ってなかったけど、ボーカロイド創生期の「初音ミクの消失」は歌うべきやろうと。そうやって選曲をして、さっきの『冥土ノ土産』の話ともリンクしてるんですけど、この曲の世界観としても、最後のほうに持ってくるのがベストなんじゃないかと。初音ミクと僕を、おこがましいですけど、ちょっと同化させていただいた感じですね。

──歌詞にもある通り、このまま消えてしまうかもしれないけど、まだ歌いたいと。

島爺:でもそれは、僕が決めることではないというか。趣味として歌を続けるのであれば、リスナーさんが0人になってもただ歌っていればいいわけですけど、せっかくここまで聴いてくださる方々がいてくださるわけだし、なんというか、下品に言えば、このまま終わってしまうのはもったいないなとも思いますし。

──誰かに歌いたいと。

島爺:うん。そうですね。多分、ひとりで歌っているだけじゃおもしろくないんですよ。誰かに聴いてもらって初めて完成するというか。そういう部分は音楽に限らず、作品というものには全部あると思うので。その辺りの覚悟も持って、今回のCDを作りました。

──そんなCDの購入者特典が「弾き語りミニライブ付日帰りバスツアー」(抽選で40名限定)という、なかなか特殊な企画になってますけども。

島爺:お客さん側と演者側にキッチリ分かれてやる状態が、なんか嫌やなと思って。そもそもニコニコ動画が、作る側と観る側の線引きがしっかりしてないところがおもしろかったりするじゃないですか。それで、友達同士で小旅行に行くみたいなイメージで、最後に友達の中のひとりが“ギター持ってきてるからちょっと歌うわ”みたいな感じでいいんじゃないかなって。もちろん練習はかなりしていきますけど、そんなに肩肘張った感じのものにする気はないですね。みんなで楽しめたらいいかなって。

──わかりました。これからも歌って行きたいという気持ちを持ちつつ、今後はどういう展開を考えていらっしゃいますか?

島爺:いわゆるメジャー業界のアーティストという意味での活動は、まだ何も決まってないんですよ。今まで通り、歌った動画をアップすることは続けて行くと思いますけど。

──今回の流れが一段落したら、一度考えてみようかなっていう感じですか。

島爺:はい。一段落して、リスナーさんからの意見も聞いてみて、そこで僕自身が何を感じるのか?っていうのは正直わからないし、その辺を今想像しても仕方ないですしね。そのときに出た感覚に正直に従っていこうかなと思います。

──その「感覚に正直に従う」というのが、島爺さんにとって大事な部分なんですね。

島爺:はい。ずっとそうしてきてますからね(笑)。

取材・文=山口哲生

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なお6月16日より、アルバム『冥土ノ土産』の渋谷スクランブル交差点前ロングボード広告が掲出されている。また、6月17日よりシブヤテレビジョン(7ビジョン)15秒CM放映も行われており(1時間に2回程度)、各2週間予定で展開される。島爺が渋谷に降り立ったこの衝撃を、ぜひ体験いただきたい。

また、インタビューにもあるように、7月30日(土)に関東某所にて、島爺と一緒に行く!【冥土ノ日帰りバスツアー】が企画されている。『冥土ノ土産』の初回限定盤と通常盤2形態をお買い上げの上、それぞれの形態に封入されているシリアルコードをキャンペーンサイトから応募すると抽選で40名様が参加可能となる。詳しくは、キャンペーンサイトをチェックして欲しい。抽選で漏れた方にもW チャンスとして、島爺直筆サイン入りB2ポスター(100名)、島爺直筆ミニサイン入り色紙(100名)がプレゼントされる。
■キャンペーンサイト http://wmg.jp/symag/meido/

アルバム『冥土ノ土産』
2016年6月22日発売
■初回限定盤(CD2枚組)
WPCL-12393/4 ¥2,700+tax
■通常盤
WPCL-12395 ¥2,300+tax
Jacket Illustration:瞬く

[Track List]
1.ブリキノダンス
Music&Lyrics:日向電工
2.ぶっ壊したい
Music&Lyrics:アキ
3.チルドレンレコード
Music&Lyrics:じん Arranged:鈴木Daichi秀行
4.メアの教育
Music&Lyrics:コウ
5.MISTAKE
Music:岩見 陸 Lyrics:ナナホシ管弦楽団
6.undo:redo
Music&Lyrics:砂粒
7.HATED JOHN
Music&Lyrics:VACON
8.鉄の弦の感情。
Music&Lyrics:Haniwa
9.ひよこと天秤
Music&Lyrics:ふる
10.月陽-ツキアカリ-
Music&Lyrics:みきとP
11.鳥籠の中
Music&Lyrics:修造
12.真夜中と混線少年
Music&Lyrics:CapsLack
13.Calc.
Music&Lyrics:ジミーサムP
14.オレンジ
Music&Lyrics:トーマ
15.すろぉもぉしょん
Music&Lyrics:ピノキオピー
16.初音ミクの消失
Music&Lyrics:cosMo@暴走P
17.OVERRIDE
Music:岩見 陸 Lyrics:ナナホシ管弦楽団

~BONUS TRACK~※通常盤のみ収録
18 パラノイド
Music&Lyrics:niki

※初回生産分限定 Disc2同梱
J-POPカバーCD(島爺ノ弾き語り独りライブver.)
[Track List]
1.ヒトリノ夜(ポルノグラフィティ)
Music:ak.homma Lyrics:ハルイチ
2.島唄(THE BOOM)
Music&Lyrics:宮沢和史
3.糸(中島みゆき)
Music&Lyrics:中島みゆき
4.歌うたいのバラッド(斉藤和義)
Music&Lyrics:斉藤和義
5.悲しくてやりきれない(ザ・フォーク・クルセダーズ)
Music:加藤和彦 Lyrics:サトウ ハチロー
6.サヨナラCOLOR(SUPER BUTTER DOG)
Music&Lyrics:永積タカシ
7.すばらしい日々(ユニコーン)
Music&Lyrics:奥田民生

最終更新:6月23日(木)22時34分

BARKS