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【ラグリパWest!】定期戦は続けるもの 大阪ガス対東京ガス

ラグビーリパブリック(ラグビーマガジン) 6月22日(水)16時12分配信

 同業である大阪ガスと東京ガスは定期戦を組んでいる。
 今年は6月18日、兵庫県西宮市にある大阪ガスの今津総合グラウンドであった。ホスト役の「ダイガス」が来西した「トーガス」に14-87で敗れた。お互い、ケガ人を除いたベストメンバーでの試合。東京ガスはSOヘイデン・クリップス、FBアダム・ガウダーの外国籍選手2人も出場させた。通算成績は大阪ガスの6勝20敗となる。
 大阪ガス監督の熊野秀彦は試合を振り返る。「アップの仕方から勉強させてもらいました。東京ガスさんは、ウチにとって公式戦で当たる相手と体付きなどを含めほぼ同じ。セットが早かったり、ラインアウトからタップで攻めてきたり…。そういう経験が春シーズンに積めてよかったです」
 大阪ガスは昨秋の入替戦に勝ち、今季はトップリーグの関西での下部組織、トップウエストAで戦う。6チームで構成されたリーグは、昨季トップリーグだったNTTドコモレッドハリケーンズや大阪府警がいる。熊野とチームにとっては、秋本番の仮想敵とする上で、この定期戦は大いに役立っている。

「スコットランドだから」。帰って来たホラニ龍コリニアシ。

 ラグビーは定期戦から始まった。
 1899年(明治32)、エドワード・クラークと田中銀之助が慶應義塾にラグビーを持ち込む。約20年後、1918年(大正7)には国内初トーナメントである高校ラグビーの全国大会が始まった。それまでは日時、場所を決める定期戦だった。大学ラグビーの関東対抗戦が総当たり戦のA、Bグループに仕立て直されるのは1997年。ほんの20年ほど前までは、定期戦が優先され、例えば帝京大対慶應大の対戦はなかった。それほど、定期戦重視の姿勢がラグビーには強かった。

 大阪ガスと東京ガスの定期戦がスタートしたのは1985年(昭和60)だった。
 創部年度は大阪ガスの方が圧倒的に古い。太平洋戦争が終わった翌年の1946年(昭和21)。一方の東京ガスは1975年。西と東で29年の差があった。
 定期戦開始当時は大阪ガスが強かった。1980年に関西社会人Bリーグに所属し、神戸製鋼やトヨタ自動車のいたAリーグに肉薄する勢いだった。現ラグビー部副部長の中村剛は同志社大出身。同期に平尾誠二、土田雅人(ともに現日本協会理事)らがいたにも関わらず主将をつとめ、大学選手権3連覇に貢献した。現在53歳の元フロントローは19人いる執行役員の末席に名を連ねている。
 しかし、東京ガスが社を上げて強化に乗り出してからは勝てなくなった。早慶明を中心に有力選手が入社し、東日本リーグで戦う。現在は、関東におけるトップリーグの下部組織、トップイーストディビジョン1に所属し、昨年は3位。三菱重工相模原ダイナボアーズ、釜石シーウェイブスに敗れた。
 今の力はトップリーグ並みである。

 この定期戦は、2005年と2008~2010年の2回4年の中断期間があった。
 熊野は説明する。
「東京ガスさんと力が開きすぎて、『やる意味があるのか』といった意見が出ました。一年ごとに行き来するわけですから交通費や宿泊費もかかります。それでも最終的には『高いレベルの試合を続けたい』と会社にお願いしました。東京ガスさんも中断があったのにも関わらず、再開を快く受け入れてくれました。とてもありがたかったです」
 東京ガス主将のCTB西田悠人は言う。
「僕は交流を楽しみにしています。同じガス会社だし、仕事とラグビーを両立させるところも一緒です。意見交換のための場としてもとらえています。僕もチームもこの試合を大事にさせてもらっているし、これからも継続してやっていきたいと思っています」
 ケガで欠場した西田は関西出身である。大阪・啓光学園(現常翔啓光)から同志社に進んだ。1年ごとの遠征は里帰りでもある。

 大阪ガスの部員は社員。プロはいない。練習は休日である週末を除けば週2日。火、木曜日のみである。勤務後、午後7時から9時まで総合グラウンドで汗を流す。
 主将のFL前田一平は入社4年目の25歳。大阪・東海大仰星、明治大で楕円球を追った。
「僕は仕事をしながら、ラグビーにも取り組む姿がいいと思ってこの会社を選びました」
 前田と同じように、ラグビーと仕事の両立を望む学生は少なからずいる。今年は立命館大副将だったCTB宮田遼、昨年は関西学大をリーグ戦優勝に導いた主将のFL鈴木将大が入社した。
 練習メニューは最初にウエイトトレを入れる。滋賀県の草津など2時間近くをかけて練習に参加する部員のため、ボールを持つ全体練習は後に回すなど工夫をする。
 熊野は将来を見据える。
「今の状態で成績が高い位置に行けば、社内の応援も増え、会社もさらなる支援を考えてくれると思います」
 そのためにも定期戦は、トップチームとの距離感を測る上で欠かせない。
「あちらから断られない限り、続けさせていただきたいと思っています」
 その時々のチームの浮き沈みではなく、つながりを大切にするのが定期戦。東京ガスへの恩義を感じ、大阪ガスは38人の部員が一つになり、来るべき秋へと向かう。

(文:鎮 勝也)

最終更新:6月22日(水)16時12分

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