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なぜ国内で販売できない-日本のベンチャーが生み出した“水上移動可能”なスゴいEV 来秋にタイでデビュー

日刊工業新聞電子版 6月22日(水)11時55分配信

【国内で販売する考えは捨てた】
 車内にはエアコンを完備、4人乗りで水上移動もできる―。FOMM(フォム)は新コンセプトの電気自動車(EV)を手がける。川崎市の創業支援施設「かわさき新産業創造センター」(KBIC)に拠点を置き、タイなど自動車市場の拡大が期待できる東南アジアに向けて、日本生まれのEVを世界へ展開する。

 社長の鶴巻日出夫はオートバイが好きで、モトクロスレースに参戦していたほど。ケガで引退し、所属していたスズキでエンジンや車体の設計を学んだ。その後、アラコ(愛知県豊田市)、トヨタ車体(同刈谷市)、シムドライブ(東京都板橋区)と転職し、1―2人乗りEVの開発に携わってきた。

 起業したのは2013年2月。「4人乗りでなければ普及しない」という思いがあったからだ。消費者にアンケートした結果「普段は1―2人乗りでよいが、いざとなれば4人乗れることが必要」との回答が大半だった。「開発してもお客さんが買ってくれないと意味がない」と鶴巻。

【それは震災津波から-水に浮き移動】
 もう一つは、11年3月の東日本大震災後の津波の映像を見たのがきっかけだ。「津波時は車を降りて逃げろというが、私の母のように足が悪い人には無理だ。水に浮くEVならば生存率を上げられる」と考えた。鶴巻の開発したEVは、樹脂で一体成型したボディーと特殊形状に加工したホイールにより、水に浮いたまま低速で移動できる。

 ただ、その代わりに、国内で販売する考えは捨てた。開発した車両は全長2495ミリ×全幅1295ミリ×全高1570ミリメートル。このサイズでナンバーを取り、公道を走れるのは現状1人乗りだけだ。鶴巻も「日本で販売する予定は当面ない」と言い切る。最高時速は85キロメートル、走行距離は150キロメートルで、価格は100万円程度を想定する。

【カセット式バッテリー 200カ所に】
 「超小型で4人乗り」「水に浮き水面で移動可能」以外にも鶴巻のEVにはユニークな点がある。リチウムイオンバッテリーは着脱可能なカセット式を採用した。タイの石油会社と覚書を結び、同国内200カ所に交換用バッテリーを設置して顧客の不安を取り除いた。

 17年9月に量産開始することでタイ企業と共同出資会社を設立する最終調整に入っており、初年度は1万台の生産をもくろむ。並行して欧州のEV規格「L7e」の取得に動いており、欧州への輸出も見据えている。(横浜総局・川口拓洋)

最終更新:6月22日(水)11時55分

日刊工業新聞電子版