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杜氏の世界にも“データ”の波 世界で1カ所、スパークリング清酒「澪」を生み出す宝酒造・白壁蔵の酒造り

日刊工業新聞電子版 6月23日(木)14時25分配信

 宝酒造が、2013年に発売したスパークリング清酒「澪(みお)」。15年度は国内外合わせて、前期比4%増の100万ケース(1ケースは300ミリリットル×12本入り)を出荷した。現状では国内需要が多いものの、澪は海外市場でも好評で、欧州や中国など二十数カ国に輸出している。同社は米国と中国に清酒工場を持つため清酒の輸出は少ないが、澪に関しては製造拠点は世界で1カ所。「松竹梅白壁蔵(しらかべぐら)」(神戸市東灘区)だけだ。(京都・水田武詞)

 白壁蔵で製造する清酒「松竹梅」は、平成15酒造年度から13年連続で全国新酒鑑評会の最高賞である金賞に選ばれている。13年以上連続で金賞受賞中の製造場は、他に2カ所だけだという。白壁蔵では、特定名称酒である吟醸酒、純米酒、本醸造酒と澪などの15種類を製造する。澪は炭酸を加えることもあり特定名称酒にはならないが、「中身は特定名称酒に準ずる品質の高いもの」(碓井規佳白壁蔵工場長)という位置付けだ。

 高品質な酒造の実績を持つ蔵で生産するのは、品質管理が難しい発泡性清酒で低アルコールという澪の特徴がある。澪はアルコール分が5%。アルコール度数を下げるため、水を加えてアルコール度数を下げるだけでは味に厚みがなくなる。コメの甘み、酸味、炭酸の繊細なバランスを安定的に維持するのは容易なことではない。

【“経験と勘”から“経験と数値”へ技術を融合】
 松竹梅白壁蔵は、旧宝酒造灘工場。95年の阪神・淡路大震災で被災し、杜氏(とうじ)の技術と最新の設備を融合した蔵へと生まれ変わった。

 設備そのものは最新だが、実は自動化している工程は少ない。判断するのは、手作業の酒造りを経験させて技能を伝承した人間だ。ただ、その判断も“経験と勘”ではなく“経験と数値”に基づいているという。

 例えば水分を吸わした後のコメが、非常に柔らかい年もある。毎年、コメの固さが違うのは当然だが、過去のコメが柔らかかった時の数値を参考にすれば、スムーズに酒造りが始められる。白壁蔵では酒造りの工程ごとに、各種の数値データを過去16年間取っており「その蓄積は大きい」(碓井工場長)。

 国内清酒市場は、消費量の減少傾向が続く厳しい状況にある。このため、碓井工場長には「澪が日本酒にチャレンジしてもらえるきっかけになれば」との思いがある。若者や女性へも清酒市場を広げた澪。15年にはスッキリとした味わいの「澪ドライ」も発売し、さらに国内市場の拡大を図る。

 一方、国内需要に対応することが優先だった生産は、14年度に増強工事が完成し、年間200万ケースを製造できる体制が整った。15年度の輸出は澪全体の出荷量の3%。澪は早期に国内外出荷合わせて、年間125万ケース突破を目標としている。海外での澪の評価は高く、米国、欧州、中国、東南アジアなど消費地は幅広い。日本食人気や広がりも追い風となる中、これからが成長の本番ともいえる。

最終更新:6月23日(木)14時25分

日刊工業新聞電子版