ここから本文です

安藤裕子 消えぬ衝撃の余韻……大塚 愛/峯田和伸/スキマスイッチ/Chara/DJみそしるとMCごはん集結の夜から1か月

Billboard Japan 6月23日(木)11時45分配信

 今から1か月前、DJみそしるとMCごはん、峯田和伸(銀杏BOYZ)、スキマスイッチ、Chara、大塚 愛と錚々たる面々を招聘し、奇跡のような生共演を一気に実現した安藤裕子。1人でもそれらのコラボに勝るとも劣らぬ鬼気迫るアクトを展開し、観る者(聴く者)の胸に強い衝撃を与えてみせた。その余韻は今も消える気配を全く見せない。
 
<DJみそしるとMCごはん 生まれてはじめての欽ちゃん走り~のC-C-B>

安藤裕子 Live 2016「頂き物」生共演写真一覧

 大阪・森ノ宮ピロティホールと東京・中野サンプラザホールで行われたこの公演【安藤裕子 Live 2016「頂き物」】は、デビューして丸10年ぐらい親しいミュージシャンの知り合いがほとんどいなかった安藤裕子が、敬愛するアーティストとの輪を少しずつ広げていく中で、前述の面々をはじめとする音楽家たちから楽曲提供を受けて制作した最新アルバム『頂き物』、その発売を記念して開催されることになった。

 まずはそこで実現した豪華生共演の数々を振り返りたい。5月15日に開催された大阪公演では、大塚 愛、峯田和伸、DJみそしるとMCごはんが客演。設楽博臣の軽快なカッティングギターに誘われるように、本人いわく「生まれてはじめての欽ちゃん走り」で登場したDJみそしるとMCごはんは、「安藤裕子!」「DJみそしる!」「よろしくお願いしまーす!」とポップな掛け合いを繰り広げながら、なんと松本隆のトリビュートアルバム『風街であひませう』で安藤がカバーしていた「ないものねだりのI Want You」にて生共演! 日本でまだラップが市民権を得ていない時代にも関わらず、人気ドラマ『毎度おさわがせします』の主題歌としてC-C-Bがヒットさせてみせたこの曲で、当時の世界観を踏襲しながらもこの2人にしか作り得ない絶妙なポップネスを体現してみせる。

 そして安藤が「全身汗だく」と言いながらも「せっかくおみそちゃんが来てくれたから、おみそちゃんがくれた曲をやろうじゃないか」と振ると、アルバム『頂き物』より「霜降り紅白歌合戦」を披露することに。おみそちゃんが「この頂き物フェスティボー(命名:安藤裕子)に呼んでもらえるのが嬉しくて楽しみで乗り越えてきました、数々のことを」と語り、その想いに応えるように「がんばるぞー、おー!」と安藤も拳を上げ、酒井由里絵のキュートな鍵盤の音色と観客のハンドクラップに乗って2人は、大好きなお肉へのラブソング(?)を前代未聞のヒップホップに昇華しながら、我々のハートも美味しくジューシーに焼き上げてみせた。

<峯田和伸「僕の20年間のバンド人生は何だったのか」~強烈なデュエット>

 タイトなライブ展開に「私がへこたれても今日は仲間が待っている」と安藤が2組目に呼び込んだのは、峯田和伸(銀杏BOYZ)。「フェスとか出ても知り合いが峯田くん(峯田和伸/銀杏BOYZ)とホルモンさん(マキシマム ザ ホルモン)ぐらいしかいなくて」とはインタビュー(http://bit.ly/28McIL8)時の安藤の言葉だが、気付けば旧知の仲(しかも同じ歳)になっていた2人だけあって、この日のMCもフリーダム。

 より汗だく状態になっていた安藤と「やっぱりじわっとちょっとね、汗かいてる光具合がいいですって言います」「本当ですか? お色気? OKですか?」とか、今回のバンドメンバーとの練習について「素晴らしいじゃないですか、リズム隊が。僕の今までの20年間のバンド人生は何だったのかって思うぐらい! やっぱりリズムって大事ですねー!」「大事だね」「こんなに歌いやすいか! と思って」「レコーディングのときもずっと言ってたよね」「最高ですよ!」など、マイペースな会話で笑いを誘っていた。そしてギターを弾く峯田の隣で、優しく激しいコーラスと共に「愛しちゃいたい。愛しちゃいたい。愛しちゃいたい。きもいね。しゃあないね。骨までしゃぶらせて……」と彼が作ってくれた「骨」を熱唱。春風を運ぶようなフォーキーな音とメロディーの上で歌われる純粋なラブソングに、銀杏BOYZのTシャツを着ていた客席の女の子も心底嬉しそうに聴き入っていた(この曲、安藤さんのお子さんも好きで、峯田くんの友達やお母さんも「良い曲」と褒めているそう)。

 それにしても「個性的」などという言葉では表現し切れない、どう聴いたって唯一無二の男と女の歌声の絡み合いは強烈。続いてイスに腰掛けた2人は「チャック全開だった」「やだぁー、恥ずかしい。わざと? わざと? 書類送検するよ? 大丈夫? やめてよ、出禁になるじゃない、私が!」「すみません、ファンの皆様!」と一悶着ありつつも、「初めてCMで安藤裕子さんの歌を聴いて、すっごく良い歌だな、良い声だなと思って、手紙を書いて……」と2人が知り合った経緯を説明し、そのきっかけとなった楽曲「のうぜんかつら(リプライズ)」をなんと2人で披露してくれたのだが、峯田が張り裂けるように歌い放った第一声~2人の声が重なる最後のフレーズ「撫でて 優しく あの日のようにうまく微笑むから」に至るまで、終始涙が止まらなかった。ふたつの孤独が泣き叫んでいるようにも、優しく抱きしめ合っているようにも感じられる、初めて体感するデュエットの世界。ぜひともまたいつか聴かせてもらいたい。

<大塚 愛 早くも有言実行 母でもある2人が交わって生まれた愛の歌>

 そして、ライブ後半、大阪公演最後のゲストとして登場したのは、今や互いに子供を連れて遊びに行くママ友でもある盟友・大塚 愛。彼女の提供曲「Touch me when the world ends」について「いろんな大塚 愛ちゃんがいるんだなって裕子は思って。すごく表の世界で頑張っている大塚 愛ちゃんもいれば、すごく裏方でプロデューサーとして「それ、違うよ」とか言ってる大塚 愛ちゃんもいて、いろいろプロデューサーの大塚 愛の言うことを聞かなきゃいけない歌い手・大塚 愛もいる中で、すごくありのままの普通の大塚 愛の曲なんじゃないかなって思ったの」と安藤が語ると、大塚は「良いこと言うね」と返し、それに対して「あなたを追いかけているビルボードの人が書いてくれるかもしれないじゃん」と言い出す等(※ビルボードの人=この記事を書いている人。いつもお世話になってます!)これまたフレンドリーなMCを繰り広げていく。

 なお、2人はビルボードジャパンでの対談(http://bit.ly/28McIL8)にて「私は「Touch me when the world ends」の伴奏を自分が演奏して、彼女が歌っている背中を見たい」「おー、弾いてもらえるんですね。贅沢ですね」という会話を交わしていたのだが、その通りのシチュエーションでの生共演が早くも実現。本人は「私、これからもこういう位置でいきたい。前と真ん中は苦手。端っこがいい」と笑いを誘っていたが、大塚 愛が誰か歌い手の伴奏に徹するライブなど他ではまず観ることは出来ないし、その貴重な状況下で歌う安藤裕子の歌がまた凄かった。互いに子の母でもある2人が交わったことで生まれた「あなたに触れて 許されたから その瞳を穢す 汚れた世界を全て潰す」「たくさんの命が 祈って消えるけど あなたには未来を 届けてみせるから」といったフレーズの数々、伴奏とは言え同じ想いで歌うように奏でられるピアノと共に響くそれは、誰もが誰かの子であり、愛される対象である、あったはずと想い起こさせて、またしても会場中に涙を溢れさせる。

 また、満を持して大塚 愛も歌い手として参加する形で「鬼」を披露。徐々に熱く重くエモーショナルに疾走していく展開の中で「鬼さんこちら手の鳴る方へ 今すぐここに1人で さあ走っておいで!」とどんどん躍動していく2人の声のぶつかり合い、そして重なり合いはもはやアートそのものとも言え、ここでもまた我々をこの上なく鼓舞させていった。

<カメラマンとして紛れていたスキマスイッチ 最も開放的な空間創造>

 初日のコラボ3組計6曲だけピックアップしてもこの熱量。安藤裕子が汗だくになり、満身創痍になり、観る側(聴く側)も涙を溢れさせて当然だろう。しかし、5月21日 東京・中野サンプラザホールでは、このラインナップにスキマスイッチとCharaが加わり、東京は出演予定のなかった大塚 愛もグランドフィナーレにサプライズ参加し、その仲間や先輩たちに見守られながら更に衝撃的なライブを繰り広げた。

 DJみそしるとMCごはんとの共演を終え、大阪同様に汗だくとなっていた安藤は「いっぱい仕事を任せて申し訳ないんだけれども、そこで今日カメラを撮ってくれている2人、こっちに来てもらってもいいかな?」と、何故か客席から2人のカメラマンを呼び出したのだが、その2人がスキマスイッチであることに気付いたオーディエンスは騒然! 黄色い歓声がホールに響き渡る。大橋卓弥「どうもどうも、全然違和感ないでしょ?」安藤「LIVE POWERって書いてある!」大橋「歌い終わったらもう1回カメラ撮りに帰りますよ(笑)。一応、これは脱ごうか」常田真太郎「あんまり変わんないんだよね」安藤「ちょっと派手になっただけ」とトリオ漫談を繰り広げつつ、アルバム『頂き物』制作におけるトップバッターを担ったスキマスイッチ提供曲「360°(ぜんほうい)サラウンド」を披露。スキマスイッチらしい曲をオーダーしていたこともあって、大橋のあの伸びやかなボーカルも本領発揮、その声に絡み合いながら共にぐんぐん伸びてゆく安藤のボーカルもひたすら心地良く、2日間の公演を通して最も開放的な音楽空間が生み出されていく。

 もう1曲、2組が生コラボしたナンバーは「これは僕歌いたかったんですよ、一緒に。安藤さんと2人で歌ったら楽しいだろうなと思って。素晴らしいタイトルだと思いますよ」との絶賛の言葉から「世界をかえるつもりはない」。互いに声量のすべてを振り絞って歌い叫ばれる「12月の夜は君の心を 凍えさせては溶けて消えるものよ」「世界の片隅で叫ぶほどの 言葉なんて何も持たないけど」は身震いするほどにエモーショナルで、これもまた一夜限りで聴けなくなってしまうのが心底惜しいと思わせる共演だった。

<「私が音楽を始めるきっかけ」Charaとの贅沢すぎる二重唱>

 そして【安藤裕子 Live 2016「頂き物」】最後の生コラボレーションの相手は、彼女が音楽の道へと踏み出すことになったきっかけ、ルーツ。この人の存在なしに音楽家としての安藤裕子は存在し得なかったであろう、Charaが静かにステージへ現れた。幻想的な音の海を漂いながら囁かれる2人の声は、Charaが可愛い後輩の為に贈った「やさしいだけじゃ聴こえない」を奏でていく。もうそこには2人しかいないと感じさせる世界の中で溶け合えるだけ溶け合うと、安藤は子供のように無邪気に「嬉しい!」と大はしゃぎ。

 そして「感慨深いです。私が音楽を始めるきっかけになったのは……映画とか役者とかに憧れて受けたオーディションで一芸を披露しなきゃいけなくて。そこでCharaさんの曲を歌ったら褒められて、初めて「歌、いけんの?」って思って。そのあとデビューに至るまで凄い長い時間をかけて、焚き火とかやって生きてたんですけど(Charaに驚かれながら)5年とか過ごして……初めに入った事務所がCharaさんと一緒で」と涙ぐみながらも自身のルーツを辿った。

 自身の人生の分岐点で在り続けた存在と同じステージに立つ。歓喜する後輩にCharaも「もらい泣きしちゃったよね」と語っていたが、そんなただでさえ感極まってしまう状況下で、彼女は前述のオーディションで歌ったという「Break These Chain」を本人とデュエット。まだまだ子供だった彼女にとって雲の上の存在、まさしくスターであったCharaが歌う「Break These Chain」を眼前で浴びながら、自身もそれを歌い、声を重ねていくのは一体どんな気分だったのだろう。あまりに贅沢すぎる原点回帰。そして我々にとってもあまりに贅沢な歌声の二重唱は、安藤裕子の歩んできた音楽人生への想いも相まって大喝采を生んだ。

 まるでママに甘えるようにCharaに抱きついた(抱きしめられていた)彼女の姿は、この2日間の公演を通して最もチャーミングだった。なお、MCでCharaが「ラジオ番組とかやりたいね、2人で」と言っていたが、ぜひとも実現してほしいものである。
 
<命懸けで放たれる歌の凄み“だから好きな”安藤裕子の歌声と音楽>

 以上、全5アーティストとの生共演についてレポートしたが、何故にこれほどどのコラボレーションも衝撃的だったかと言えば、各ゲストが持つパワーやスキルはさることながら、やはり安藤裕子の歌が凄いからだ。ここまで「汗だく」や「満身創痍」という言葉で彼女のギリギリ具合を表現してきたが、大塚 愛との対談でも「虚弱体質が半端ない」と本人も語っていたが、すべての楽曲に対してここまでの熱量で歌っていたら誰だってぶっ倒れる。

 私は生きている
 時代を生きていく
 私は大丈夫
 あなたも大丈夫よ

 でもそうと分かっていても命懸けで歌うのが、歌わざるを得ない楽曲たちを生んできたのが安藤裕子なのだろう。だからあれから1か月経った今も、彼女の歌はこんなにも鮮明に息づいているのだろう。

 「大昔の人がね、音楽を楽譜におこそうと思って、例えばファルセットは声を震わせますとかね。その楽譜を見た人が「震わせるんだなぁ」ってなる訳でしょ? でも本当に最初の人はね、震わせようと思って歌ったんじゃなくて、人の前でね、歌って、そのときの覚悟とか、自分の弱いところとか、臆病なところとか、そういう気持ちから偶然出た震えだと思うんですね。元から震わそうじゃなくて、たまたま出ちゃった。安藤さんの声の震えとか伸びとか間っていうのは、そういう初めの人が作ったようなね、そういうところで歌ってるじゃないかと思ったんだよね、勝手にね。だから好きなんだと思いました」(峯田和伸/東京公演でのMCより))

 “だから好きな”安藤裕子の歌声と音楽がいつまでも絶えないように。そう願わずにはいられない【安藤裕子 Live 2016「頂き物」】であった。なお、彼女は今秋【安藤裕子 2016 ACOUSTIC LIVE】と題したアコースティックツアーを敢行する。またこの衝撃と出逢いたい人は、まだこの衝撃に出逢えずにいるもったいない人は、ぜひこの機会に彼女の歌声と音楽を体感してみてほしい。

取材&テキスト:平賀哲雄
撮影:Banri / Tetsuya Yamakawa

◎ライブ【安藤裕子 Live 2016「頂き物」】
05月15日(日)大阪・森ノ宮ピロティホール
客演:大塚 愛/峯田和伸/DJみそしるとMCごはん
セットリスト:
01.Silk Road
02.ロマンチック
03.ないものねだりのI Want You(C-C-Bカバー/w/DJみそしるとMCごはん)
04.霜降り紅白歌合戦(w/DJみそしるとMCごはん)
05.360°(ぜんほうい)サラウンド
06.骨(w/峯田和伸)
07.のうぜんかつら(リプライズ)(w/峯田和伸)
08.輝かしき日々
09.溢れているよ
10.再生
11.海原の月
12.Touch me when the world ends(w/大塚 愛)
13.鬼(w/大塚 愛)
14.やさしいだけじゃ聴こえない
15.Break These Chain (Chara カバー)
16.夢告げで人
17.Last Eye
18.聖者の行進
EN1.アメリカンリバー
EN2.問うてる(w/ALLゲスト)

05月21日(土)東京・中野サンプラザホール
客演:スキマスイッチ/Chara/峯田和伸/DJみそしるとMCごはん
01.Silk Road
02.ロマンチック
03.ないものねだりのI Want You(C-C-B カバー/w/DJみそしるとMCごはん)
04.霜降り紅白歌合戦(w/DJみそしるとMCごはん)
05.360°(ぜんほうい)サラウンド(w/スキマスイッチ)
06.世界をかえるつもりはない(w/スキマスイッチ)
07.骨(w/峯田和伸)
08.のうぜんかつら(リプライズ)(w/峯田和伸)
09.輝かしき日々
10.溢れているよ
11.再生
12.海原の月
13.やさしいだけじゃ聴こえない(w/Chara)
14.Break These Chain(Chara カバー/w/Chara)
15.Touch me when the world ends
16.夢告げで人
17.Last Eye
18.聖者の行進
EN1.アメリカンリバー
EN2.問うてる(w/ALLゲスト)

Band Member:
山本隆二(key)
設楽博臣(g)
沖山優司(b)
あらきゆうこ(dr)
酒井由里絵(key,cho)

◎ツアー【安藤裕子 2016 ACOUSTIC LIVE】
09月19日(月・祝)神奈川県立音楽堂
09月22日(木・祝)岩見沢市民文化センター 中ホール
09月24日(土)旭川島田音楽堂
10月15日(土)仙台戦災復興記念館 記念ホール
10月16日(日)福島いわきPit
11月03日(木・祝)長野まつもと市民芸術館 小ホール
11月06日(日)東京国際フォーラム ホールC
11月12日(土)神戸朝日ホール
チケット前売:4,500円(税込)
一般発売日:08月07日(日)
06月27日(月)18:00~各プレイガイドにてオフィシャル先行2次受付スタート
http://bit.ly/1RsZgR3

最終更新:6月23日(木)11時45分

Billboard Japan

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。