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中国経済:景気指標の総点検と今後の注目点(2016年夏季号)~景気評価点は「低位」から「中位」に改善

ZUU online 6/24(金) 11:00配信

■要旨

◆中国経済を供給面から点検すると、4-5月の工業生産は前年同月比6.0%増と第1四半期(1-3月期)の前年同期比5.8%増を0.2ポイント上回る水準で推移しており、工業生産を見る限り第2四半期(4-6月期)の成長率は前四半期を上回る可能性がでてきた。但し、非製造業には陰りが見え始めており、第2四半期は非製造業が成長率の足かせとなりそうである。

◆次に、需要面を点検すると、4-5月の小売売上高は1-3月期の伸びを小幅に下回る水準で推移している。固定資産投資は、1-3月期は好調なスタートだったものの、4-5月には大きく伸びが鈍化、特に民間投資の落ち込みが顕著である。輸出は1-3月期よりはマイナス幅を縮小したものの、世界経済の回復が緩やかと想定される中では大きな期待はできない。

◆その他の重要指標を点検すると、電力消費量は第2次産業・第3次産業ともに前年を上回る伸びを回復した一方、道路貨物輸送量は前年を下回る伸びに留まっている。

工業生産者出荷価格は、原油価格などの反転を受けてマイナス幅を縮小したが、耐久消費財はむしろ下落傾向を強めている。また、通貨供給量(M2)は政府見通しの「13%前後」を大きく下回ったが、中長期融資が伸びを高めていることから投資への影響は限定的と見ている。

◆景気評価点を見ると、昨年12月から今年2月までは3-4点の「下位水準」で低迷、景気下振れ懸念が強かった。しかし、3月以降は5点前後の「中位水準」へ上昇、景気下振れ懸念は薄れた。そして、現在の景気は「中位水準」で一進一退を繰り返している。

◆今後の注目点としては、「4-6月期GDP(7/15公表)が前四半期を下回るか」、「落ち込みの目立つ民間投資の動向」、「新規輸出受注が回復してきた輸出の動向」の3点が挙げられる。

■供給面から点検すると

◆工業生産

景気指標の中でGDPへの影響が最も大きいのが工業生産(実質付加価値ベース、一定規模以上)である。ここもとのサービス化の進展で影響度が落ちたとはいえ、依然として有効性は高い。

4月の工業生産は前年同月比6.0%増、5月も同6.0%増と1-3月期の前年同期比5.8%増を0.2ポイント上回る水準で推移している。従って、工業生産を見る限り、第2四半期(4-6月期)の成長率は前四半期を上回る可能性がでてきている。

◆製造業PMI

供給面を見る上では製造業PMI(中国国家統計局)も重要な景気指標である。これは製造業3000社の購買担当者に対し毎月実施されるアンケート調査の結果を元に計算されるもので、通常は50%が景気強弱の分岐点とされる。

5月の製造業PMIは50.1%と3ヵ月連続で50%を若干ながら上回った。但し、5月の生産経営活動予想指数(今後3ヵ月予想)が55.9%と3月の62.6%をピークに落ちてきた点には注意が必要である。

◆非製造業PMI(商務活動指数)

一方、中国では製造業からサービス業への構造転換が進行中なため、非製造業の動きが重要性を増している。非製造業に関する統計は少ないが、製造業PMIと同時に公表される非製造業PMI(商務活動指数)が参考になる。製造業PMIと同様に50%が景気強弱の分岐点とされる。

5月の非製造業PMIは53.1%と、依然50%を十分に上回っているものの、3月の53.8%を直近ピークに2ヵ月連続で低下した。また、5月の同予想指数が57.8%と大きく低下したため、非製造業が第2四半期(4-6月期)成長率の足枷となりそうである。

■一方、需要面を点検すると

◆小売売上高

個人消費の動きを示す代表的な指標となるのが小売売上高である。4月の小売売上高は前年同月比10.1%増、5月も同10.0%増と1-3月期の前年同期比10.3%増を小幅に下回る水準で推移している。

日用品は高い伸びを維持しているものの、家電、自動車、化粧品などは1-3月期の伸びを下回っている。また、価格要因を除いた実質でも、4-5月期は前年同期月比9.5%増と1-3月期の前年同期比9.7%増を小幅に下回る伸びに留まっている。

◆固定資産投資

投資の動きを示す代表的な指標となるのが固定資産投資(除く農家の投資)である。固定資産投資は毎月発表されるものの、1月からの年度累計で公表されるため、時系列の動きは読み取り難い。

そこで、当研究所で月次に直した。1-3月期は前年同期比10.7%増と前年の伸び(前年比10.0%増)を上回る好調なスタートを切った。しかし、5月には前年同月比6.1%増(推定(*1))と大きく伸びが鈍化、特に民間投資の落ち込みが顕著となっている。

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(*1)中国では、統計方法の改定時に新基準で計測した過去の数値を公表しない場合が多く、また1月からの年度累計で公表される統計も多い。本稿では、四半期毎の伸びを見るためなどの目的で、ニッセイ基礎研究所で中国国家統計局などが公表したデータを元に推定した数値を掲載している。またその場合には"(推定)"と付して公表された数値と区別している。
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◆輸出

世界の工場といわれる中国では輸出需要が生産動向を左右する。4月の輸出額(ドルベース)は前年同月比1.8%減、5月も同4.1%減と1-3月期の前年同期比9.6%減に比べるとマイナス幅は縮小した。

一方、先行指標となる新規輸出受注指数は5月も50.0%と3ヵ月連続で50%台を回復、マイナス幅の縮小傾向が今後も続く可能性がでてきた。世界経済の回復が緩やかと想定される中でどこまで回復するか注目される。

■その他の景気指標を点検すると

◆電力消費量

その他の指標では電力消費量の注目度が高い。李克強首相は特に工業の電力消費量を重視していたとされる。1-5月期の電力消費量は前年同期比2.7%増と前年の伸び(前年比0.5%増)を上回っている。

産業別に見ると、第2次産業は前年同期比0.4%増と前年のマイナスから小幅なプラスに転じており、第3次産業も同9.6%増と前年を上回る伸びを示している。但し、4月は前年同月比1.9%増、5月も同2.1%増と3月の同5.6%増を下回り、勢いに陰りがある。

◆貨物輸送量

また、貨物輸送量の注目度も高い。鉄道貨物輸送量は李克強首相が重視していたとされる指標だが、過半を占める石炭の輸送量がエネルギー改革の中で構造的に減少、景気と乖離する可能性がでてきたため道路貨物輸送量を見ることとしている。

道路貨物輸送量は電子商取引(EC)など新たな消費活動の動きを反映するという利点もある。1-5月期の道路貨物輸送量は前年同期比4.1%増と前年の伸び(前年比6.4%増)を下回り、景気の懸念材料となっている。但し、3月は前年同月比6.2%増、4月は同5.1%増、5月は同5.7%増(推定)と、1-2月期の前年同期比1.3%増を上回り、伸びを回復しつつある。

◆工業生産者出荷価格

物価も景気と密接な関係がある。モノに対する需要が強ければ値段は上がり、需要が弱ければ下がるからである。足元の動きを見ると、5月の工業生産者出荷価格は前年同月比2.8%下落と直近最低値(同5.9%下落、昨年8-12月)に比べるとマイナス幅を縮小してきている。

生産財は原油価格などの反転を受けて前年同月比3.7%下落とマイナス幅を大きく縮小、川上に位置する産業ほどマイナス幅の縮小傾向が鮮明となっている。

一方、消費財への影響は今のところ限定的で、食品はやや上昇したものの、衣類の上昇率に大きな変化はなく、耐久消費財はむしろ下落傾向を強めている。消費財に対する需要の弱さを示唆するものと思われる。

◆通貨供給量(M2)

金融面から景気動向を見る指標としては通貨供給量(M2)が挙げられる。足元の動きを見ると、5月は前年同月比11.8%増と、「13%前後」とされた2016年の政府見通しを大きく下回った。

内訳を見ると「その他預金」の伸びの鈍化が目立っており、昨年夏に中国政府が打ち出した株価安定策の反動と見られる。従って、M2が高い伸びを回復するのは当面難しいと思われる。

一方、融資サイドから見ると、5月の融資残高は前年同月比14.4%増と昨年夏をピークに伸びが鈍化してきている。但し、投資に結び付くことの多い中長期融資に関しては、5月も同15.9%増と伸びを高めていることから、投資への影響は限定的と見ている。

■景気評価点と今後の注目点

◆景気評価点の推移

以上で概観してきた10指標に関して、それぞれ3ヵ月前と比べて上向きであれば“○=1点"、下向きであれば"×=0点"として集計したものを筆者は景気評価点と呼んでいる。景気指標は全部で10個あるので、5点が全体として上向きか下向きかの分岐点となる。

景気評価点の推移を見ると、昨年12月から今年2月までは3-4点の「下位水準」で低迷、景気下振れ懸念が強かった。しかし、3月には6点へ上昇、4月は4点、5月は7点と5点前後の「中位水準」へ上昇、景気下振れ懸念は薄れた。そして、現在の景気は「中位水準」で一進一退を繰り返している。

◆今後の注目点

今後の注目点としては以下3点が挙げられる。

第1に4-6月期GDP(7/15公表)である。1-3月期の実質成長率は前年同期比6.7%増と減速が継続したが、4-6月期はさらに減速するのかそれとも減速に歯止めが掛かるのか注目される。ちなみに当研究所で開発した月次GDP推計モデルでは、4月は前年同月比6.6%増、5月は同6.5%増と、1-3月期の前年同期比6.7%増を下回る水準で推移している。

第2に民間投資の動向が挙げられる。今年1-5月期の投資はインフラ投資や不動産投資が高い伸びを示したことで小幅な減速に留まったが、前述のとおり民間投資の落ち込みは厳しい。下半期は投資の6割を占める民間投資の動向に注目したい。

第3に輸出の動向が挙げられる。前述のとおり新規輸出受注は回復してきたが、まだ実際の輸出増には結び付いていない。世界経済の回復が緩やかと想定される中で、どこまで回復するか今後の動きに注目したい。

三尾幸吉郎(みお こうきちろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 上席研究員

最終更新:6/24(金) 11:00

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北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。