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パンクからキャラソン・アニソンまで、SONARを駆使するパフォーマー&コンポーザー、エンドウ.(GEEKS)の曲作りの秘密を聞く vol.3

BARKS 6月24日(金)18時47分配信

自身がフロントマンを務めるバンド、GEEKSでほとんどの楽曲の作詞・作曲を手がけるほか、他アーティストへの楽曲提供も積極的に行っているエンドウ.。ゴリゴリのパンクから、かわいい女の子キャラが歌うアニメソングまで、幅広い楽曲づくりの秘密はどこにあるのか? エンドウ.に音楽経験や制作環境について聞くインタビュー。第3弾では曲作り、編曲、そしてSONARの使いこなしについてよりディープに聞く。なお、今回のインタビューは、エンドウ.が楽曲制作においてはDAWソフト「SONAR」を使用しているという縁から、SONARの国内販売元であるティアック/TASCAMの加茂尚広氏とともに同社のショールームであるGibson Brands Showroom Tokyoで行われた。

今回はSONARの話からスタート。オーディオの録音・編集はSONAR、MIDIの打込みにはCubaseを併用してきたが、2016年の初頭より打込みも含めSONAR一本で作業するように移行を進めているというエンドウ.。サンプルを使ったリズム構築やワンショットの効果音にはCubaseのGroove Agent SEを使ってきたが、現在はNative InstrumentsのBatteryを使用中。SONARにもリズム向けサンプラーはあるものの、Cyloneという古いインストゥルメントしかないのが残念だと語る。「僕、DAW付属のソフトを使いたい派なので。外部のものは、あまり好きじゃないんです。DAWを一つで済ませたいのはみんなの願いですよ。」とも。

一方、ミックス、音作りではWAVES製品を使用。「RvoxとL3くらいしか使わないので。逆に似たようなのがSONARに入っているのがあれば使いたい。」SONARの機能では、ProChannelの存在が大きいようだ。ProChannelはSONARのオーディオトラックにビルトインされたチャンネルストリップで、歴史的なアナログコンソールのエミュレーター、コンプレッサーやEQ、チューブサチュレーターなど各種モジュールが用意されている。

「僕、ProChannelを使いたいがためにSONARを使ってるようなものですからね。ProChannelのエフェクトって全部軽い。200トラック全部にコンプを入れてもぜんぜん平気。動作もサクサク」と、その魅力を語ってくれた。

また、あまり目立つ機能ではないが、「すごく便利!」と紹介してくれたのが、バンドルファイルというSONAR独自のファイル形式。バンドルファイルは、プロジェクトファイル内にオーディオデータを内包しており、ファイル1つを持ち運び、あるいはメールで送信すれば、別の環境でプロジェクトが再現できる(サードパーティのエフェクトは除く)というものだ。今回はこのバンドルファイル形式でセーブされた、エンドウ.のSONARプロジェクトを見せてもらうことができた。

■GEEKS&ももクロ、SONARプロジェクトファイル

まず見せてもらったのがGEEKSの楽曲。「シンプルな曲なのでトラック数は少ない」とはいうものの、50トラック以上のトラックが使われている。「だいたいこの曲は全部オーディオなんですけど。MIDIは一個もないのかな。」と構成を紹介してくれた。

トラックウィンドウを開くと、ドラムやギター、キーボード、コーラスなど、パートごとにフォルダに整然をまとめられている。「フォルダ分けがすごくSONARはやりやすくて。フォルダの感じとかSONARのビジュアルが好き」とそのルックスも気に入っている様子。

続いて見せてくれたのが、ももいろクローバーZの「バイバイでさようなら」のプロジェクト。エンドウ.自身が32トラックのコーラスを録音する前の段階とのこと。

「この曲は打ち込みを全部Cubaseでやっていた時のもの。それを書き出していちいちSONARに入れてやっていたんです」と、ギターレコーディングの途中段階でも50を超える膨大なトラック数を解説。

「(シンセなど打ち込みの音は)いちいち全部Cubaseから書き出しているんです。この量を。ほんとはここで完結したいんですよ!」と、改めて、DAWを1つで済ませたいという要望を語った。

そのタイミングで再生されたのが、ギターの特徴的なフレーズ。「これ、クイーンですね」とはエンドウ.。

―― ギターでいくと何トラック?

エンドウ. ギターは全部2本のマイクで録っていて。これが左からのバッキング、これが右からのバッキングで、合計4本です。これがウワモノを2本。サビがこれ。要するに全部左右さらにそれが2本ずつ、4つずつぐらいをいくつか録ってる。

―― トラック名に4100と57とありますが、これはオーディオテクニカとSHURE?

エンドウ. そうです。

―― ギターはすべてマイクで録るんですか?

エンドウ. そうです。あっ、これだけシミュレーターかな? (カッティングのトラックを聴きながら)そうですね、これ、リズム悪かったんで直しまくってるんですけど。リージョン……クリップを切って。すごく直してるんですけど。

―― 切ったリージョンはトリミングして一本にしたりとかはしませんか?

エンドウ. ああ、それはあんまりしないですね。また、動かすかもしれないし、っていうのもありますし……。

■ミックスリコール使えますよ、超感動的ですね

インタビューの時点ではエンドウ.がSONAR Platinumに移行してまだ日が浅いということで、同席したTASCAMの加茂氏に対していくつか質問が飛び出した。

「気になっているんです」と、まず挙げられたのが現行バージョンのSONAR Platinumの発売後に追加された新機能「VocalSync」について。VocalSyncは複数のボーカルパートのタイミングをぴったり合わせてくれる、ダブリングやハーモニーの構築にもってこいの機能。画面上のノブを回すだけでタイミング補正の度合いが調整できる。SONARのタイムストレッチの音質には満足していないというエンドウ.は、「まだ怪しんでるんです(笑)」といいつつも、TASCAM加茂氏の「ハモリのパートにはいいと思います。びっくりしますよ!」との解説に、「実際に使ってみたい」と答えた。

続いてTASCAM加茂氏からは「ミックスリコール」が解説された。これはエフェクトやトラックの設定をプロジェクト内に「シーン」として複数保存し、いつでもその状態を呼び出せるもの。たとえば、ProChannelのコンソールエミュレーターをSSLからNeveに切り替える、複数のドラムキットを聴き比べるといった作業で、別途ファイル名を変えてセーブして、ロードし直すといった手間が不要になる。プロジェクトファイルを増やす必要はないのだ。さらにエクスポートによるファイル書き出しも便利。複数のシーン=ミックス違いを1度の操作でファイルに書き出すことができるのだ。

「すごいっすね。知らなかった!」と驚きを隠せないエンドウ.は、「Cubaseのトラックバージョンのように、トラックのエディット結果も保存できるのか?」と質問。答えは、No。ミックスリコールで保存・再現できるのはオートメーションや、エフェクトやインストゥルメントの設定などに限られ、オーディオ、MIDIクリップの編集結果を保存することはできない。しかし、テイクレーンを使えば同様のことは可能だ。SONARではループ区間のレコーディング時に、同じトラックに重ねて録音していくことが可能。それぞれのテイクがトラック内のテイクレーンに保存され、気に入ったテイクを選んだり、複数のテイクの一番良いところを結合して最終的な1つのトラックを作成するといったことができる(コンピング)。このテイクレーンをクリップの編集結果の保存先として使えばよいとのこと。

エンドウ. すごいですね。これ、誰が言い出して搭載されたんですか(笑)。そういうの、ほんと欲しいんですけど。

―― これ、DAW初心者には「ふーん」って感じですけど、普段から作曲やレコーディングをしてる方には刺さりますよ。

エンドウ. 刺さりますね。

―― リバーブの具合とかけっこうこだわりありますよね? それが、「さっきのやつどうだったかな」みたいな時に、実はこれで、リバーブ違い、とか。CDとネット動画でミックスを変えるたりします?そういう用途にもいいかもしれません。

エンドウ. 変えますね。ローの感じとか圧縮具合とか、コンプの感じとか。

―― 最近よくある、スマホからヘッドホンで聴く音を意識した、モノとステレオであんまり差がないミックスを作るとか……。

エンドウ. すごい。使えますよ。超感動的ですね。

■一生鍵盤には触らないで生きていこうと思ってる

エンドウ. 僕、オーディオを扱わせたらSONARの操作一番早いと思っているんですけど(笑)。毎日録っていますからね。自分で歌いながらパパパパパーって。MIDIを最近始めてようやくスムーズに打てるようになってきたので。

―― でも、基本はマウスで……

エンドウ. トラックボールなんですけど、ずっと。もう今後も一生鍵盤触らないで生きていこうと思っています。

―― (一同笑)。

―― それだったら鍵盤で入れていく方が速いんじゃないかと思うんですけどねえ。

エンドウ. いやあ、もう鍵盤覚えるのが大変です。「どこがドだ? ド? Cか」みたいな(笑)。ぜんぜんわかんないです。

―― でも、たとえばMeloyne editorを使われているのであれば、ギターでばっと弾いてMIDIに変換してってのは……。

エンドウ. それはできるんですけど、やっていないですね。でも、ギターはMIDIに変えなくてもいいんじゃないかな? 昔、ローランドのギターMIDIのGKシリーズでMIDI入力に挑戦したんです。やっぱり鍵盤ができないし、ギターで入れられたらと思って。でも反応の設定とかそういうのがぜんぜんで。すんごい小さい細かいノートが生まれちゃったりとかして。もう、これはダメだって。

―― そうですね。当時のはちょっとでもチョーキング入れたりしたら、もうノイズがぶわーって入っちゃって。

エンドウ. だからマウス打ちの方が速いわ、と思って。

―― SONARでタブ譜入力できるのはご存知ですよね?

エンドウ. ギタリストはタブ譜あんまりやらないですよね。ギター始めた時くらいじゃないですか?タブ譜読んだのって(笑)。


―― (一同笑)

エンドウ. この前、別のアニメのやつで「タブ譜くれ」って言われて、タブ譜なんて書けなくて、もう一日がかりでした。

―― SONARなら表示でタブ譜が選べる……。

エンドウ. でも、ギターは生で録っているんで、タブ譜にならない。

―― そうか(笑)。そりゃそうだ。

エンドウ. だから自分で書いて(笑)。

■DAWもエフェクターもビジュアルがよければ音がいい

―― ギター関連ではSONARにはギターアンプシミュレーターのTH2がありますが、間もなくTH3にバージョンアップします。また、新たにマスタリングエフェクトが追加される予定で、すでにCakewalkのサイトに画像が掲載されています(どちらもインタビュー時点では未リリースだったが、その後4月末にリリースされた)。

エンドウ. ビジュアルがいいですね(笑)。プラグインは完璧にビジュアル重視ですよ。DAWもビジュアルがよければ、音も良いですもん。

―― (一同笑)

エンドウ. 聞こえる音もよくなってきます。僕はそれ、信じてやまないです。ギターのエフェクターもそうです。見た目がかっこよければ音も良い。

―― いい発言ですね。見出しに使いましょう(笑)。

エンドウ. アンプもそう。見た目がよければ音も良く聞こえます。

―― アンプシミュレーターのTH3も期待できそうです。

エンドウ. 僕は、Guitar RigとBIAS Desktopを使っています。BIASには自分が録った音と同じ音にしてくれる機能があって。僕が昔、アメリカのプロデューサーと仕事をした時のギターのトラックがあって、その音がすごく気に入ってるんですけど、その後作れなくて。でも、その機能で読み込ませればできる。要するにKemperみたいなことができるんですけど、それをやったらその音になって。これ(TH3)にはないんですか?(笑)

―― そこまではないですね。サウンドやビジュアルがよくなったっていうのと、MIDIのアサインが楽になるとか。

エンドウ. BIAS Desktopだとエフェクトがない。Guitar Rigがエフェクト満載なんで、そっちを使っちゃうんです。これ、いいですね。

―― でも、エフェクター自作されてるくらいなので……。

エンドウ. でも、面倒くさいんで(笑)。

―― ギター・アンプ・シミュレーターも使うんですか?

エンドウ. ちゃんとしたレコーディングは全部、アンプで録るんですけど、ギターメインじゃない曲に添えるくらいのときは絶対にシミュレーター使っちゃいますね。要するにこだわらないタイプのギターを弾くときは。あと、デモを録る時はシミュレーターを使っています。最後に、完成した後でギターを録り直すんですよ。だからシミュレーターって意外と、かなりの頻度で使うかな。

―― そうなんですね。先ほどのお話だとシミュレーターはそれほど使わないのかと。

エンドウ. 自分たちのリリース音源では使ったことはないです。でも、アニソン、キャラソンとかでは使いますね。

―― 差し替えたりとかも、多分、エフェクターとかだと出てくることも……。

エンドウ. そうですね。便利なんですよね。「あっ、これもうちょっとゲイン落としたかったな」とか「クリーントーンにしたかったなあ」とか、そういうのがいくらでもできるんで。かなり便利に使い分けています。

■ライブ・曲作り・リリース、全部をやれる立場いるからこその作り方

―― エンドウ.サウンドのキモみたいなのはありますか? いろんな音が使える中で。

エンドウ. それ、ギターですか? 全体?

―― 両方とも。

エンドウ. それがわかったらすごく助かるんですけどね(笑)。エンドウ.サウンドのキモか……。なんだろう。僕、勉強とかしてないし、思いつきでやることがたまに褒められたりするんで、そういうとこかなあ(笑)。

―― ひらめきというか……

エンドウ. だから、そうですね。この前、“チ~ン”という音を入れたり、ノイズとキックを飽和させて「ドンッ」みたいな音を作ったり。

―― あれがすごくよかったんですよ!

エンドウ. 中学校の時やってた“Singer Song Writer”の時と同じ感覚でやってるので(笑)。

―― 「バイバイでさよなら」はハッとしましたよ。

エンドウ. そうですね。そういう……なるべく型にとらわれないことをやりたいなと思ってるところとかですかね。あとは、実際にステージに立っている人間でしかわからないことだと思ってやっていますね。作家さんってステージ立ったことない人いっぱいいるんで。

―― あっ、そうなんですね。

エンドウ. やっぱり作曲家さんとは違う作り方はできるかなあ。どっちもいいところあると思うんですけど。やっぱり実際にライブをやって、実際に音楽を作って、実際にリリースしてっていうのを全部、やれる立場にいるので。そういう視点で見ることはできていると思うんですけどね。

■歌詞の引き出しはマンガと読書とアニメ

―― 話を変えて歌詞について聞きます。ご自身のバンドの曲と他に提供する曲ではサウンドがまったく違うんですが、歌詞も違いますね? ご自身で書かれてるというのを聞いてちょっと意外な気がしたんですが。それはどういう引き出しから出てきているのかなあと。

エンドウ. 引き出しはもう、読書以外ないと思います。マンガと読書とアニメと。僕、テレビ見ないですし、あんまり外にも出ないので。たぶんそういう情報は読書とアニメとマンガとゲームぐらい。

―― 読書は小説とかけっこう読まれるんですか?

エンドウ. 小説……ミステリーばっかり読んでいます、はい(笑)。ミステリーとか……、あとハリー・ポッターとか。

―― なるほど。

エンドウ. アニメとかだと作品を思い出したり、観直したりとかもしますし。『坂本ですが?』っていうアニメのオープニングをやっているんですけど、その時は、全巻何度も読みました。だいたい原作を読んだりとか、あと、そのアーティストのことを調べたりとかしますね。

※『坂本ですが?』 は佐野菜見によるコミックで、単行本全4巻が発行されている。『このマンガがすごい! 2014』(2013年12月発売、宝島社)ではオトコ編第2位を獲得。2016年4月よりTVアニメが放送中。

―― 女性が歌う曲の歌詞は、女性になりきって、という感じですか?

エンドウ. そうですね。でもやっぱりアニメ、マンガ、ゲームが好きな人はなりきれるんじゃないですかね。やっぱり没頭して、自分をそれに置き換えることができるタイプの人間だと思いますよ、そういうのが好きな人は。

―― イヤホンズのようなセリフがある曲はセリフも考えてるんですか?

エンドウ. セリフも全部、台本を僕が考えてます。

―― そうなんですか! そこだけは違ったりするのかなと思っていたんですが。

エンドウ. (笑) いえ、もう僕が全部考えているんです。

―― あそこまでいくと脚本ですよね(笑)。

エンドウ. あれ、全部で本編が13話ぐらいで、他のバージョンがあって全部で18バージョン作ってるんですけど、全部の台本を僕が書いています。

―― それ、曲作りを超えてますよね?

エンドウ. そうですね。もう、ほんとに。追加料金欲しいです。

―― (一同爆笑)

―― そういった歌詞に書かれる世界観が、またサウンドに作用してさっきみたいないろんな音を作る方向に行く……。

エンドウ. そうですね。確かにそうではありますけど(笑)、自分では意外と、あまり冒険しないでワンパターンな音使いになりがちなタイプだと思うんです。いろんな曲に、好きな音というか同じ音をけっこう使ったりするので。まあでも、それを聴いた人がやっぱり「エンドウ.っぽい」って言ってくれるんですけど。

―― ああ。

エンドウ. まあでも、それに2、3、「この曲にしかない要素」とか「音色」とかを必ず入れるようにして、差別化を図りたいと思ってやっています。それでやっぱりそのアーティストさんのことを調べまくって、思いつくことだったりもしますし。


―― アーティストさんありきで全部作ると……。

エンドウ. そうですね。自分でバンドをやっているので、わがままは全部自分のバンドでできる。人の時はわがままはほとんど盛り込まず、エゴを出さず、その人があわよくば一生のキャリアの中でずっと歌っていくものを作るんだという気持ちでやります。

―― いいですねえ。

エンドウ. 引退しない限り、たぶんずっとその曲を使ってくれるでしょうし。まあ、その人がやめてもその人の曲であることは永遠ですからね。

―― 自分のバンドとそうじゃないのが、両方あるのがいいんですかね。

エンドウ. それがあるから、できてるんだと思います。完全に職人として徹することができますね。「ハイッ、お客様の仰せの通りに」ってやっています(笑)。

―― 職人としての仕事も好き?

エンドウ. 大好きですね。今まで自分でやっていた音楽とは想像つかないようなオーダーが来ますから。自分のバンドだけだったら、一生作んなかっただろうな、みたいな音楽を作れますからね。

―― それで自分の世界が広がるのも楽しんでいる?

エンドウ. それが醍醐味かなぁと思って。

■同じカエルの歌でも小学生が歌うよりバンドで演奏したほうがカッコイイ

―― また話は変わるんですが、ブログに編曲が大事だということを書かれていました。「メロディに良いも悪いもない」という話を書いていらして。

※エンドウ.のブログ2016年2月25日の投稿「花蓮発売」から。「ハッキリ言ってメロディに良いも悪いも無いと思っておりますので、編曲はかなり大事だと思います。例えばどんな良い曲も編曲がダサいと駄曲になってしまったり、逆にどんなダッサい曲でもエンドウ.さんだったら編曲次第でカッコよくできる、なんて思っていたりもします。編曲って大事なのです。」と記している。

エンドウ. そうなんですよ。たまにレコード会社の人間が「この曲はメロディがいいからね」とか言ってるんですけど、そんなのそのへんの小学生が街なかで歌ってたらいいと思わないだろ、お前、っていう話で。「君が歌ってたメロディ、最高だったね」なんて絶対言わないじゃないですか。

―― (一同笑)

エンドウ. メロディなんてもう、ただの音符の動きなんだから。だって、ほとんどのロックの歴史とかひもといてみても、あんな名曲すごーいとか言われても、たとえばヴァン・ヘイレンの「JUMP」のチャッチャッチャっていうシンセの音がすごいメロディかって言われたら絶対違う。

―― ああ!。

エンドウ. なんでもないメロディじゃないですか。でも、あれをかっこよくするのが編曲というか、ヴァン・ヘイレンのキャラクターとか、その当時の流れとか、時代の風潮だったりとかさまざまな要素です。なのに、レコード会社の人間が「メロディがさ」みたいなことを言うのがイヤ。僕の持論としては、「メロディなんかもう、いいも悪いもないんだよ!」っていうのがいつもあったんです。その前後関係だったり、「こう来て、こう来て、こう来たから、このメロディがいいんだよ」とか、そういうのが常にあって。

―― うんうん(一同うなづく)。

エンドウ. だから編曲もそうです。「何をやるかじゃなくて、誰がやるかが重要なんだ」っていうのがあって。同じカエルの歌でも、そのへんの小学生が歌ったのと僕らがバンドで演奏したのじゃ、絶対バンドで演奏したほうがかっこいい。それが編曲というもの。だから一番大事なのはそこかなあと。逆にどんな単調なメロディでも絶対かっこよくできます。編曲さえ僕にやらせてもらえれば。YouTubeとかで、外人が1弦のEだけでメタルを弾く人とかいますよね。すごくかっこいいんだけど、Eしか鳴ってないんですよ(笑)。だから結局、編曲が重要なんです。

―― その話は深いですねえ(笑)。でも、たぶんご謙遜で自分は素晴らしいメロディを作れるっていう前提があるからこそ、今の話を持ってくるんじゃないですか?(笑)

エンドウ. いやいや(笑)、作れればいいんですけど、素晴らしくないメロディも作っちゃうんで。でも、そうなった時、そのメロディが悪いっていうよりも、全部との関係性でそうなっちゃってんだな、と思いますけどね。だから、“なんかよくないなあ、なんかピンとこないなあ”っていうサビでも、メロディはそのままで他のところを変えたらグッと良くなるなんてことは、いくらでも体験してきてるんで。メロディのせいじゃなかったりしますね。

―― 編曲でメロディがよく聞こえるっていうのがあるんでしょうし。

エンドウ. だから、「この曲はメロディが最高!」「至高のメロディ」とかレビューで書いてあると、「いやいやいや」って思います。「お前が感動したのは、後ろの流れてたストリングスのせいもあるんじゃないの?」とか、思いたくなりますね。全部が合わさっていいんだよ、っていう。

―― じゃあ、自分が作ってるのはメロディだけじゃなくコンポーザーとして全体を……。

エンドウ. それはもう絶対です。もう絶対ですね。やっぱり「メロディだけでいいからちょうだい」とか言われたりしてメロディを渡したら、「うーん」って言われたりする。でも、ぜんぜん違う別の時に「じゃあ、ちょっとなんかちょうだい」って言われて、ばれないと思って同じメロディとすごいがっちりしたオケで渡したら、「めっちゃいいじゃん!」って言われたりして。「お前、このメロディを全然良いって言わなかったんだぞ」と思いながらだまってたりとか。そういうのはいっくらでもあって。だからトータルの作品を渡さないと、人は冷静な判断とか正常な判断できないん。絶対メロディだけを聞かせても、その先のビジョンを人間は想像しづらい。

―― たいへんおもしろい話で。

エンドウ. 苦労話になっちゃいましたけど(笑)。

(完)

最終更新:6月24日(金)18時47分

BARKS