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警察を描きながら「日本のギャング映画」を作りたかった/『日本で一番悪い奴ら』白石和彌監督〈視線の先〉インタビュー

トレンドニュース(GYAO) 6月24日(金)10時29分配信

2013年の『凶悪』で一躍注目の監督になった白石和彌が再び放つ衝撃作『日本で一番悪い奴ら』(6月25日公開)。綾野剛を主演に迎え、“日本警察史上最大の不祥事“と呼ばれた実話を映画化した作品だ。さまざまな悪徳や危険な香りに満ちた本作に賭けた意気込みを白石監督に聞いた。

綾野剛 主演「日本で一番悪い奴ら」劇場予告編>>

■暴走する主人公には助監督時代の自分がダブって見えた

――この作品の企画は脚本の池上純哉さんから持ち込まれたと伺いましたが?

 池上さんとは助監督時代から20年近いお付き合いがあります。僕が若松(孝二)組、彼が(高橋)伴明組で、ある意味親戚みたいなものですから、よく飲んで騒いでいましたが、一緒に仕事をしたことはなかったんです。ちょうど『凶悪』の直後ぐらいに会う機会があって、「ちょっと読んで欲しい本がある」と見せられたのがこれでした。

――この題材のどこに魅力を感じましたか?

 元になった事件はもちろん知っていましたが、とにかくやったことが破天荒じゃないですか。普通のマル暴(警察の暴力犯係の通称)の優秀な刑事でも生涯で押収する拳銃なんて4~5丁がせいぜいですよ。それが100丁オーバーですからね! ありえないですよね(笑)。で、その原動力が何だろうかと考えた時に、「きっと捜査そのものが楽しかったんだろうな」と思いついたんです。違法なこともやっていたけど、“S“(スパイの略、捜査協力者のこと)たちとチームを組んで、豊かな時間を送っていたんだろうな、と。

 彼は警察官だったからヤクザと関わって犯罪者になってしまいますが、これって助監督として僕らが映画に関わっているのと同じじゃないか? とすごくシンパシーを感じたんです。僕が若松プロで映画を撮りはじめた頃は、世界は映画のことしかなかったですからね。さすがに法に触れるようなことはしませんでしたが、「映画を撮ることが正義、映画を撮るためなら何をやってもいい」と勝手に思い込んでいたので(笑)、そんなに遠い話じゃなかったんですよ。

――実際に他の世界にも置き換えられる話ですからね。

 そういう意味では、諸星(綾野剛が演じる映画の主人公)は成績優秀な営業マンですよね。採点主義の世界では彼は決して組織から逸脱しているわけではないし、むしろ組織自体が逸脱しているわけですから、共感してもらえる方も多いと思います。

――最初から主人公の諸星役に綾野剛さんを考えていたのですか?

 原作者で諸星のモデルでもある稲葉圭昭さんにお会いするまでは、まったくそのイメージはなかったです。大学の柔道部出身で、ロシアへ行ってサンボの世界大会に出てプロ格闘家を目指そうかと考えたなんていう話を聞いていて、どんなにごつい人だろうと想像していたら、全然筋肉質ではなくて、シュッとされていた方だったんですよ。それでいて、色っぽさというか、マメなところもあって、「この人はモテたろうな......」という魅力を感じさせてくれました。そんなところから、綾野さんが浮かんできたんです。

――他の出演者、特にSたちはバラエティに富んでいます。

 彼らはチームを組んでいくわけですが、実際にもヤクザやミュージシャン、パキスタン人などがいたわけで、そういう雑多な空気を出したかったんです。ですから、“This Is 俳優“という人ではなく、歌舞伎役者(中村獅童)、アーティスト(YOUNG DAIS)、お笑い芸人(デニスの植野行雄)と多国籍軍な感じでキャスティングしました。

――お笑いと言えば、TKOの木下隆行さんもヤクザ役ですごみを見せていますね。

 どうも『凶悪』の監督と聞くと身構えてしまうみたいで(笑)、木下さんも現場でかなり緊張していたんですよ。だから「この役は、過去に2人殺してきたということで」「えっ、そうなんですか!?」「......今、思いつきました」というやりとりがあって、うまく撮影ができました。

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最終更新:6月24日(金)10時29分

トレンドニュース(GYAO)