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長谷川博己、“尾行”行為に言及「いけないことだと分かりつつも…」

クランクイン! 6/24(金) 16:30配信

 「哲学的尾行」というフレーズに何とも言えない背徳感を覚える人は多いのではないだろうか。直木賞作家・小池真理子の小説を映画化した『二重生活』では、門脇麦演じる主人公の大学院生・珠が全く知らない相手を対象に尾行を行い、得体のしれない興奮を覚えていく……。その尾行の対象となった男性を演じたのが長谷川博己だ。メガホンをとった岸善幸監督が「非常に難しい役割をお願いした」と語った役柄について、長谷川と岸監督に話を聞いた。

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 物語前半、長谷川演じる石坂は、珠の目線で描かれていく。「僕は尾行される側だったので、どんな人物なのか分からない方が入りやすいとは思っていました。門脇さんやリリー(・フランキー)さん、菅田(将暉)くんみたいにキャラクターを作るというよりは、シーンの断片断片を積み上げていって、最終的にどういうキャラクターか見ている人に分かればいいと思って演じたんです」と最近では珍しい役柄へのアプローチ方法だったことを語る。

 岸監督が書いた台本は、現場でディスカッションを繰り返し、大きく変更される部分もあったという。「僕はト書きやセリフを書きましたが、引いた絵の中でどう背中で見せるか……長谷川さんを悩ませたのかもしれませんね」と岸監督は撮影を振り返る。その言葉には「長谷川ならきっと期待に応えてくれる」という信頼感がにじみ出ている。

 「尾行していく麦ちゃんの目線で長谷川さんが映るわけです。距離が離れていて背中が映る。映画なので美しく、しかも不思議な気配が漂う。普通に見えて普通じゃない存在感が欲しかった。『長谷川さんでやりたい』って話したとき、スタッフも原作者もプロデューサーも大きくうなずいてくれました」と岸監督はしてやったりの表情を見せる。

 劇中、石坂は受動的な描かれ方から能動的にシフトする。そこで“二重生活”というタイトルに結び付くような感情が湧き出てくる。「長谷川さんはすごく二枚目で絵になるような雰囲気もありますが、一方で狂気的な脆さを含んでいるように感じるのです。どうせ出演いただくならそういう部分は見せたいですよね」と岸監督は語ると「プロフィール的な見せ方の前半から、後半、目が変わっていくんです。すごくいい画が撮れたと思います」と自信をのぞかせる。


 “尾行”というテーマの本作。長谷川自身も俳優という職業柄、人の目を意識する機会が多いと思われるが「知らない人がこちらの行動を一つ一つ見ていると思うと、単純に嫌な気持ちになりますよね。意識しすぎると疲れるので、あまり気にしないようにはしていますが、撮影中はなかなか厳しかったですね」と心情を吐露する。一方で「でも尾行っていけないことだと分かりつつも、観察してみたいという人間の心理的なものは理解できますね。岸監督も『人のこと気にしないって言ってるけど、みんなもやってみたいと思ってるんでしょ』ってメッセージを込めているようにも見えましたしね」と背徳的な響きに共感も見せる。

 映画宣伝用のポスターには、長谷川、門脇、リリー、菅田という4人が映し出されている。「この4人をキャスティングした時点で、この作品はほぼ完成しているという感じでした。簡単にいうと実力のある方にお願いしたことにより、うちの撮影チームはお芝居を記録していくだけですみますから」と岸監督は本作に出演した俳優たちに絶大な信頼を置く。

 「尾行という言葉と、他人の秘密を覗くという背徳感。やってみたいけれど、やってはいけないと思う道徳感。人間って二律背反する思考があると思うんです。特にいまはいつでもスマホで写真をとれますし、監視カメラもたくさんある。非常に現代的な題材だと思うんですよね」と岸監督は本作に内在するメッセージを語ってくれた。(取材・文・写真:磯部正和)

 『二重生活』は6月25日より全国ロードショー。

最終更新:6/24(金) 16:30

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