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プロ4年目ブレークの裏に的確な自己分析 広島・鈴木誠也の“言葉力”とは

Full-Count 6月25日(土)13時24分配信

21歳飛躍の裏側

 プロ4年目、21歳の若鯉が、広島に悲願をもたらすかもしれない。交流戦最後のカードとなったオリックスとの3連戦で、2試合連続サヨナラを含む3試合決勝弾を放った鈴木誠也だ。

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 3試合連続でお立ち台に立った鈴木。ヒーローインタビューでは、「最高でーす」を連発し、『コイツ、それしか言葉知らないんじゃないか?』と思われた人が多いかもしれないが、実は違う。インタビューなどで話を聞くと、今にも消え入りそうな小さな声だが、落ち着いた様子で訥々と技術面、精神面などを話す。自らの置かれた状況や、打撃論などの自己分析も的確で、あの年代の選手では珍しく、自分の言葉を持っている選手だ。

 本来は左足を上げる打撃フォームの鈴木だが、2本のサヨナラ本塁打はノーステップでのものだった。延長12回の激闘に終止符を打った1本目は「追い込まれていたので、足を上げずにノーステップで食らいついていった。その前の打席で、自分の間合いでタイミングが取れなかったので、なんとかしようと思ってああいうスイングになった」。

 鈴木のこのコメントは、翌日につながることになる。

ノーステップ打法のきっかけとなった“ある投手”との対戦

 2本目は、まさにその、前夜の失敗を生かしたものだった。「平野さんとは前日対戦した時、タイミングが合わないことがわかっていたので、最初からノーステップでいった。平野さんのクイックは速いので、足を上げていたら対応できない」。

 前日話した「その前の打席」は、まさにその平野との対戦だった。

「ロッテの清田さんや角中さんの打撃フォームを見て、やってみようと思った」というノーステップ打法を実戦で取り入れたのは、今季のセ・リーグのある投手との対戦がきっかけだった。

「4月の中日戦で若松と対戦した時、若松のチェンジアップには足を上げていたらタイミングが合わないと思った。それで思い切ってやってみたら、いい結果が出た」

大谷&藤浪は「雲の上の存在」も「いつかは…」

 そして3試合連続決勝弾となった3本目、この本塁打は、本来の左足を上げるフォームでの一発だった。「追い込まれていたので、長打は頭から消していた。フライを上げないように打った」という一打は、「たまたまいい角度でいった」とレフトのスタンドをはるかに超えていった。打撃フォームのことを聞かれた鈴木は「タイミングが合っていたので、(足を上げる)あの形になりました」と、冷静に話した。

 オフの自主トレでソフトバンクの内川に弟子入りし、「技術的なことから考え方まで、いろいろと教わった」という鈴木だが、「いつかは内川さんみたいになりたいけど、今まで何年も続けてきて、自分を確立してきた選手。それを今すぐ僕がやってみても、絶対に崩れると思う」と、ただ盲信しているわけではない。「僕は足を高く上げるけど、内川さんはそんなに上げない。そこは違う」と、自分も持っている。

 高卒4年目のキャリアで、自らを冷静に客観視し、技術的な取り組みも的確な言葉で表現できる21歳。そんな鈴木は、あの大谷翔平、藤浪晋太郎と同世代だ。「交流戦で大谷のバッティング練習を見て、改めてすごいと思った」という鈴木は、2人を「雲の上の存在」と話す。それでも「いつかは追いつきたいと思っている」と言うその日は、そう遠くないはずだ。そしてその鈴木の活躍がチームにもたらすものが、チーム25年ぶりの悲願となることを、期待せずにはいられない。

大久保泰伸●文 text by Yasunobu Okubo

最終更新:6月25日(土)15時15分

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