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音による宇宙史の記録──『重力波は歌う アインシュタイン最後の宿題に挑んだ科学者たち』

HONZ 6月25日(土)10時31分配信

本書は発売(6/16)とほぼ同日に重力波2度目の観測成功が発表され、即日で重版が決まったというあまりにも出来過ぎな1冊だ。とはいえ単なる偶然と片付けるのも味気ない。これは、人類がこれまで観測できなかった「音」が宇宙に満ちている1つの「確証」であるのかもしれない。

もう少し具体的に紹介すると本書『重力波は歌う アインシュタイン最後の宿題に挑んだ科学者たち』は重力波発見に至る経緯、検出のための観測所を組みあげるため奮闘した科学者たちの人生を通して、重力波が満ちている宇宙を解き明かしていく一冊である。重力波について現時点での絶好の入門書であるし、最初は実在すら危ぶまれる中、重力波の存在にキャリアを賭けた科学者らのどこか不器用な政治的駆け引きと確執を含んだドラマとしても素晴らしい。

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本書は、重力波──音による宇宙しの記録、宇宙を描くサイレント映画を飾るサウンドトラック──の研究をつづった年代記であるとともに、実験を目指した果敢で壮大な艱難辛苦の営みへの賛辞、愚者の野心に捧げる敬意の証でもある。
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とは著者の言葉だが、全体的に重力波をめぐる科学的な説明と科学者の人生を調和させていく語り口が異常にうまい。これを書いたのはいったい何者なんだと著者紹介をみたら、ジャンナ・レヴィンは現役のコロンビア大学バーナード・カレッジ物理学・天文学の教授で、その上小説や一般向けノンフィクションも書いているという無数の才能を持った天才であった。

重力波とは何か

重力波とは簡単に言ってしまえば質量を持つ物体の周囲の時空が歪み、その運動が波動として伝わっていく現象である。一般相対性理論によればどんなに微小な質量であっても時空は歪むが(我々の身体であっても)、通常それぐらいの小さな変化では観測することはできない。しかし、途方もない大質量の物体が動き回れば──それでもかなり厳しいのだが、検出できるかもしれない、というのが今のところ我々人類が感知できるレベルの重力波である。

やたらと小難しい言い回しなので具体的な例を挙げると、LIGOによって2回検出された重力波はどちらも「ブラックホールの衝突、合体」によって発生している。その際には太陽10億個分の1兆倍を上回るという途方もないエネルギーが発生するが、ブラックホールの性質上一部たりとも光として現れず、望遠鏡ではこの事象を観測することはできない──。その代わりに、『純然たる重力現象という形で、時空の形状の波動として、すなわち重力波として発散される。』

その近くに人間がいれば、聴覚機構が振動することで音として聞くこともできるだろう(その人間が死ななければ)。『重力波は歌う』という書名に「歌うのか?」と一瞬疑問を憶えたが、確かにブラックホールは衝突する際に独特の音色を奏でているのだ(断末魔かもしれないが)。

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最終更新:7月4日(月)11時26分

HONZ