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あなたの買い物体験は「モノのコマース(CoT)」で大きく変わる

ReadWrite Japan 6月26日(日)22時30分配信

「よりパーソナライズされたショッピング体験」とは、どのようなものかを考えてみてほしい。

たとえば、プリンタのインクが少なくなってきたら新しいインクが郵送されて来たり、歯ブラシを替えるタイミングになると新しいものが送られてきたりする。Digital Riverのイノベーション戦略部副社長 ジェームズ・ガリアルディ氏に言わせると、「モノのコマース(Commerce of Things, CoT)」とはそういうものを指し、そう遠くない未来にあなたは家や職場でこの体験をするようになるという。

今回は、ガリアルディ氏にIoTにおけるeコマースの役割について話を伺った。

■便利なだけでは続かない

― IoTに向けたeコマースのプラットフォームは、今後どのような展開を見せるのでしょう?

ガリアルディ氏: まず、弊社は20年以上の歴史があり、eコマースプラットフォームおよびサービスを提供する企業です。クラウドという単語がポピュラーなものになる前から、我々はクラウドベースでサービスの提供を行っていました。その間、プロダクトの入手の方法はダウンロードによるものから購読ベースへシフトし、アンチウイルスソフトなどは年間費を払うことでプロダクトのアップデートが維持されるようになりました。今となっては、年間費ではなく月額課金のものもあり、企業は自身のプロダクトをサービスとして提供するようになっています。たとえば、『Adobe Creative Cloud』なども現在は購読ベースのプロダクトでしょう。

我々は、まさに企業がサービスを提供するためのプラットフォームとして(スマートデバイスなどの)プロダクトを作り出している様子を目の当たりにしています。そして、これらのサービスはいずれかの時点で収益化されなければならないと考えています。なぜなら、そこには技術的な立場からだけでなく、世界的な観点からも成長と発展の余地があるためです。

― サービスの収益化が重要ということですか?

ガリアルディ氏: ええ。重要なのはスマートプロダクトとそのサービスの収益化です。たとえば、Nestは『Revolvスマートホームハブ(ある人は見捨てられたモノなどと呼んでいる)』の製造をやめましたが、私からすれば彼らがその製造を止めてしまった主な原因は、確固とした収益化への戦略を持たなかった点にあります。

私自身、歯ブラシから電灯、ウェアラブルなど50以上のコネクテッドデバイスを持っていますが、どのメーカーもこれらの収益化ができていません。たとえば、私はNestを購入するために200ドル費やしましたが、今後それ以上の額を私が払うことはありません。Revolvでいうと、顧客が商品に150ドルを費やしたとしても、その裏で動いているデータアナリティクスサービスが収益化できてない以上、顧客が増えるにつれ損失も増えていくのみなのです。

また、歯磨きの効率についてフィードバックする機能を持つコネクテッドデバイス『Oral Bスマート歯ブラシ』を例に挙げます。この製品の問題は、「一日2回、2分ずつ歯磨きしてるのなら、そろそろ歯ブラシの買い替えどきですよ」とアドバイスする機能を持たず、ゆえにユーザーに有用な体験を提供できていない点にあるでしょう。

― では、収益化がうまく行けばリピーターという概念も大きく変わりますか?

ガリアルディ氏: そうですね。たとえば、安物のプリンターについて考えてみましょう。これらの本体は非常に安く売られていますが、主な収益源はインクなどの消耗品です。この関係と同じことが今でも言え、プリンターをリースしている顧客は印刷枚数やプリンターのカートリッジで課金されているのです。

もし、あなたがコネクテッドシューズを使うランニング愛好家だったとすると、シューズメーカーはあなたのランニングから得た情報をフィードバックし、適切なシューズを選ぶアシストをするといったことも考えられます。つまり、その製品を通じて得られたデータによって、企業と顧客とのリレーションが改善できるということです。

■自分よりも自分らしいデータがもたらすものは恐怖か感動か?

― そのような変化に伴い起こりうることは何でしょうか? データセキュリティは多くの顧客にとって非常に大きな問題であり、データが業者とシェアされるとなれば尚更だと思うのですが。

ガリアルディ氏: まさに、これは非常に大きな問題でしょう。たとえば、GoogleはNestや多くのコネクテッドデバイスを所有しており、おそらく私以上に私の習慣についてよく知っています。私は、この状態について反対運動などが起きるであろうと考えており、ある程度の規制も設けられる必要が出てくると推測しています。

ウェアラブルを使う多くの人は、そのデータによって何が引き起こされるのかをまだ気にかけていませんが、対象となるデータが睡眠習慣や日頃の運動量であれ何であれ、これらの情報に関するセキュリティ事故を起こす企業が出てくることもほぼ確実です。

しかし、エンドユーザーにとって価値を提供できるのであれば、彼らはデータのシェアに同意するでしょう。携帯電話はおそらく最も生活に入り込んでるパーソナルデバイスですが、我々はその利点から携帯電話を受け入れているのだから。

ここで懸念点として挙げられるのは、企業が提供するサービスを通じて個別の顧客とこれまでにないレベルでつながりを持とうとしているところです。

FitbitをBest Buyで買おうがFitbitから直接買おうが、ユーザ登録をする以上Fitbitとの関係が生じることは変わりません。今回の懸念点とは、こういった関係性が大量に生じ、それを維持しなければならない点にあります。いずれパスワードなどは膨大な量となり、その管理が問題になると考えています。

― さいごに、20年後のeコマースはどのようになっているとお考えですか?

ガリアルディ氏: 20年後、様相はまったく違うものになっています。より多くのアナリティクス、パーソナル化、予測分析が活用されるということは、我々の行動がこれまでよりもずっと予測しやすいものになるということです。衝動買いをする場合ですら、過去のショッピング履歴から「あなたが気に入るだろうからこれを家に送っておく」という判断がされるかもしれません。また、言うまでもなくVRやARも我々の生活に影響をもたらすでしょう。

たまたまいいものを見つけた喜び(セレンディピティ)というものを人が好むのは変わらないため、実店舗は当面存在し続けます。しかし、そこで得られる体験はずいぶんと変わるでしょう。ある店舗に入れば、店舗は蓄積されたデータから我々がどのような人物かを判断し、おすすめやフィードバックを行うようになるのです。

― ありがとうございます。

大きく変化しようとしている我々の買い物体験。それらがもたらすものは決して便益だけではないだろう。急速に高まっているセキュリティリスクへの対処法やより共依存的になっていく企業と消費者の関係性など、一概に良いとは言えないこの状況を劇的に変えるものは現れるのだろうか。今後の見通しは変わらず不明瞭なままである。

ReadWrite[日本版] 編集部

最終更新:6月26日(日)22時30分

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