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X線天文衛星「ひとみ」はなぜ失敗したか(2) 引き継ぎ不足が招いた運用ミス

sorae.jp 6月26日(日)18時45分配信

宇宙航空研究開発機構(JAXA)のX線天文衛星「ひとみ」喪失事故に関する解説の2回目となる今回は、「ひとみ」の開発から運用にかけての、組織的な問題を見ていくことにする

設計者はリスクを知っていた

前回の解説で、「ひとみ」は天文衛星としての観測能力を高めるため、いろいろな点で性能を優先した余裕のない設計をしていたことを指摘した。しかし当然のことだが、そのような設計をした当人は、それがリスクになることを誰よりも知っている。

「ひとみ」が最初に姿勢を乱したのは、衛星の姿勢を測定するセンサー「スタートラッカ(STT)」が不意にリセットしてしまったことだった。しかも、そのときに過剰な姿勢修正をしてしまい、STT復帰後に誤差が大きくなったことを検出したソフトウェアは、STTが故障したと判定。予備のSTTに切り替えると姿勢が変動して観測に差し支えることから、切り替えは行わないようになっていた。

このような設計では、一度STTが故障と判定されると自動では切り替えも復帰もしない。そこで「ひとみ」の姿勢制御システムの設計担当者は、STTが故障と判定された状態が続いた場合は地上からの監視で、手動で対応することにした。

運用でカバーするはずが、していなかった

ところが、この運用上の引き継ぎは徹底されなかった。まず、STTの故障判定が続いた場合は自動的に警報を出す機能が検討されたが、実装されることはなかった。その一方で、運用担当者が監視するという申し送りも行われなかった。つまり、性能を上げる代わりに監視が必要という考えで設計されたにもかかわらず、その監視を誰もしていなかったのだ。

今回の事故は、20時間もの間「ひとみ」が日本の地上アンテナと通信できない、そのタイミングで起きてしまった。しかし実際にはこの間にも、オーストラリアやスペインの地上アンテナ付近を通るときに「ひとみ」の現在の状態データだけを送信しており、そのデータは日本の運用システムにも送られて記録されていた。これまでの経緯を考えれば、このデータをチェックしてSTTの状態を確認するべきだったのだが、運用担当者はそれを知らされていなかったのである。

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最終更新:6月26日(日)18時45分

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