ここから本文です

「狂気的な雰囲気」が似合う俳優・長谷川博己、内在する危うい魅力とは?

クランクイン! 6月26日(日)5時20分配信

 182センチの高身長、知的で物静かな佇まい──。スクリーン上では立ち姿だけでも見栄えのする俳優・長谷川博己。しかし『MOZU』シリーズの東和夫に代表されるように、知的なイメージを醸し出す一方で、徐々にエキセントリックな一面が内から漏れ出てきて「何かあるのではないか……」と視聴者に期待させる役柄を演じると抜群に魅力的に映る。確かな演技力を持つからこそ成立する多面性キャラ。そんな役を見事に演じ切る長谷川の魅力に迫る

【関連】「長谷川博己」フォトギャラリー


 舞台から俳優活動をスタートした長谷川。蜷川幸雄演出作品にも多数出演し、表現力に磨きをかけると、映像の世界に進出後も、コンスタントに映画やドラマに出演し、『家政婦のミタ』の阿須田恵一のような繊細でナイーブな役をはじめ、大河ドラマ『八重の桜』で演じた川崎尚之助のような人生の機微を表現するキャラクターを演じるなどキャリアを積んでいった。

 そんな長谷川だったが、『MOZU』シリーズでは、東和夫というエキセントリックな役を怪演。ファンの間では、吉田綱太郎演じる中神甚と“変態コンビ”と称される(!?)ほど、内に秘めていた狂気性がダダ漏れしていくさまは痛快であり、滑稽だった。吉田が中神というクレイジーな役について「彼に引っ張られた」と語っていたように、長谷川を良く知る人物には、彼の爆発力やレンジの広い演技は周知の事実だったようだ。

 『MOZU』以降の長谷川は、映画『ラブ&ピース』で、平凡なサラリーマンがロックスターになっていく様を狂気的に演じると、『進撃の巨人』ではキレキレのシキシマ隊長を、『セーラー服と機関銃-卒業-』では橋本環奈演じる星泉の側で、敵か味方か分からないような危うい立ち位置の人物を雰囲気いっぱいに演じた。どれもシュッとした佇まいの中に、いつ着火するか分からないような火種を内在するようなハラハラする演技で魅了した。


 最新作『二重生活』でも、マイホームに美しい妻と娘、ヒット作を連発するイケメン編集者という、絵に描いたようなエリート的なプロフィールを持つ石坂という男性を演じているが、どこか狂気的な雰囲気を漂わせる。案の定、後半、内在していた“二重”の心が噴出していく。メガホンをとった岸善幸監督も「二枚目で絵になるような雰囲気の中、ふと振り向いただけでも不思議な気配があり、狂気性も漂う」と長谷川に内在する危うい魅力を語っている。

 長谷川は「自分は普通すぎてしまうから、それを何か違うところで埋めないといけないと思っていた」とクリエイターたちの評価を意外そうに受け止めていたが、演じるキャラクターが多元的で立体的な奥行をもつことは、これまでの作品をみていれば頷けるだろう。画面やスクリーンに長谷川演じる人物が映ると「何かが起こってしまうのでは……」と想像力を掻き立てられる。本人の言葉通り「普通である」ことへの反動的な表現なのか、はたまた自身が意識していない内に潜む狂気性なのか……。その答えは定かではないが、長谷川が身にまとう独特の“気配”に魅了されるクリエイターが多いのは事実だろう。

最終更新:6月26日(日)5時20分

クランクイン!