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<シリア>「イスラム国」支配下の住民の苦悩~処刑と空爆に怯える日々

アジアプレス・ネットワーク 6月27日(月)11時48分配信

■町にいれば恐怖支配、脱出できても過酷な難民生活

2014年12月、トルコ・スルチの村に並んでいたたくさんのテント。シリアから逃れてきたクルド人住民が、親族のもとに身を寄せていた。村のすぐ先の国境線を越えたシリア・コバニでは、過激組織「イスラム国」(IS)とクルド組織・人民防衛隊(YPG)とが激しく戦い、砲弾が着弾する轟音が響き渡る。

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「自分たちは脱出できたが、ISに町を制圧され、逃げ出せない住民は恐怖に怯えている」
避難してきた老人はそう言った。

当時、シリア北西部のマンビジから逃れてきたばかりだった公務員のベカル・アハメッドさん(33歳)は、ISは広場で公開処刑を繰り返していたと話した。クルド組織のスパイとされた男性は、大鉈(おおなた)で斬首され、死体は3日間、木にくくりつけられ晒された。チュニジアやモロッコからの戦闘員が我が物顔で歩き回っていたのが異様だったという。

■外国人男児をIS思想で教育

一方で、ISはマンビジを含む支配地域の市民生活の様子を紹介する宣伝写真や動画を、ネットで公開している。そこに映るのは、彼らが「理想」とする統治のもと、平和に暮らす市民の姿や、楽しそうに授業を受ける小学生たちの姿だ。そのなかにはウイグル人など中央アジア系の子どもたちも登場する。

戦闘員志願者とともにシリアに家族で「移住」してきた外国人の子どもたちを集めた施設とみられる。男児は「小さな獅子」と呼ばれ、将来の戦闘員として教育され、「戦って死ぬことは名誉の殉教」と教え込まれる。

処刑されるのはスパイだけではない。占い師や同性愛者とみなされれば、ISが解釈した「イスラム法」に反したとして死刑の対象となる。「いつ自分が逮捕され、殺されるか、怯えて暮らすのはアサド政権時代と同じ」とベカルさんは話した。

■劣勢のIS、包囲されるマンビジの町

住民は空爆とも隣り合わせだ。現在、シリア政府軍、ロシア軍、そして米軍など有志連合が空爆を続け、爆撃で命を落とす住民があとを絶たない。ISは依然、イラクとシリアで戦闘を継続しているが、徐々に支配地域を失いつつある。シリア北東部ではクルド人民防衛隊(YPG)が地元アラブ人部隊と合同でシリア民主軍を編成し、IS拠点の町や村を攻略している。民主軍は、ISが「首都」とするラッカ近郊にまで迫っているとも伝えられる。またマンビジの包囲網も狭まり、陥落は近いとも言われる。

しかし、町を解放しても、さまざまな問題が残されている。ISは撤退時に仕掛け爆弾をいたるところに設置し、除去は容易ではない。また施設にいた外国人の子どもたちを保護した場合、どうやって本国へ戻すのか。戦闘員として訓練された少年の心のケアを誰が進めるのか。彼らもこの戦争の被害者である。

ISは先月、幹部のアドナニ報道官が音声声明を発表し、決死戦の覚悟を求めたほか、欧米諸国での民間人への攻撃も呼びかけている。ISとの戦いは大きな局面を迎えている。(玉本英子)

(※本稿は毎日新聞大阪版の連載「漆黒を照らす」6月21日付記事を加筆修正したものです)

最終更新:6月28日(火)12時37分

アジアプレス・ネットワーク