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参院選、拉致で目立った発言なし 「対話と圧力」のはざま、憂慮の声

福井新聞ONLINE 6月27日(月)8時9分配信

 北朝鮮の核実験やミサイル発射を受け、経済制裁を強めた日本。それに対し北は拉致被害者の安否調査をする委員会を解体―。今年に入っての両国の動きは「対話と圧力」のはざまで、過去に何度も繰り返してきた構図に似ている。参院選で拉致問題はほとんど取り上げられず、風化が懸念される中、福井県内の関係者は「政治家たちは、本気で被害者を救う気持ちがあるのか」と憤り、党派を超えた結束を求めている。

  ■一言も触れず■

 「主権を侵害する重大な問題であり、今後も政府一丸となって取り組む」。6月5日、自民党の稲田朋美政調会長は福井市でマイクを握り、拉致問題から切りだした。

 しかし、同日に敦賀市で国政報告会を行った高木毅復興相からは「拉致」という言葉は聞かれず、出席した菅義偉官房長官も触れなかった。参院選の県内候補者からも目立った発言は聞こえてこない。

 「救う会福井」の森本信二会長(60)は「安倍首相は『拉致は最優先課題』と言っているが、本気かどうか」と不信感を募らせる。

 5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の宣言には「北朝鮮に対し、拉致問題を含む国際社会の懸念にただちに対処するよう強く求める」とあるだけだった。

  ■拉致の可能性■

 6月16日、拉致の可能性を排除できない嶺南の特定失踪者の1人が国内で見つかったと発表された。他の失踪者、越前市の河合美智愛(みちえ)さん=1984年失踪当時(20)=の母、喜代子さん(74)は喜びながらも「娘も日本にいるんじゃないかと心が乱れた。もんもんとして深夜に目が覚めることが続いた」と、複雑な胸中を打ち明ける。

 一方、敦賀市の山下貢さん=89年失踪当時(39)の妹、山森啓子さん(63)は「山下も拉致じゃないと言われたら反論できない。署名活動がやりにくくなる」と、今後の運動に不安を募らせる。

 拉致の風化が懸念される中、森本会長は「(帰国した拉致被害者)曽我ひとみさんのことを思い出してほしい」と訴える。新潟県の曽我さんは、政府が帰国直前まで把握していなかった人物だ。

 現在、警察庁が「拉致の可能性を排除できない」として挙げているのは885人。「救う会」副会長の島田洋一県立大教授は「その中には国内で見つかるケースもあるだろう。しかし、曽我さんのような、拉致被害者も含まれているはず」と主張する。

  ■親子の気持ち■

 小浜市の拉致被害者、地村保志さん(61)、富貴恵さん(61)夫妻の帰国から14年が過ぎてなお、一向に進展の気配を見せない拉致問題。同市の山下春夫さん=74年失踪当時(28)=の姉、大谷とみ子さん(78)は「みんな連れて帰ってきて。もう(私も)年や。はよして」と話す。

 森本会長には忘れられない光景があるという。保志さんが帰国する半年ほど前、入院していた保志さんの母、と志子さんは、見舞いに来た森本会長を見て「やっちゃん、やっちゃん…」と、涙を流しながら拝んだ。結局、息子との再会を果たすことなく、75歳でこの世を去った。

 森本会長は言う。「拉致解決に与党も野党もない。遠い地で古里を思う被害者の気持ち、日本で待ち続ける家族の気持ちを本当に理解している政治家はいるんだろうか」

福井新聞社

最終更新:6月27日(月)8時9分

福井新聞ONLINE

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