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韓国経済、主力産業が軒並み息切れ

ニュースソクラ 6/28(火) 17:30配信

輸出停滞で低成長に喘ぐ。日本同様、構造改革が必要

 日本では韓国について、竹島問題、従軍慰安婦などの外交問題、2014年4月に起きたフェリーの沈没事故、翌年5月の中東呼吸器症候群(MERS)などの社会的事件、歴史教科書の国定化問題、さらには朴槿恵(パク・クネ)政権の総選挙敗北などの政治上の出来事が大きく伝えられている。

 その韓国の経済が低成長に喘いでいることはあまり大きく報道されていない。6月9日に韓国銀行が金利引き下げを実施して政策金利は1.25%と史上最低を更新した。この背景には、なかなか上向かない景気に対する焦りがある。既に韓国銀行は2016年の実質成長率見通しを3.0%から2.8%に引き下げているが、再引き下げも視野に入れていそうだ。

 韓国経済といえば「漢口の奇跡」で高度成長を辿ってきた輝かしい実績がある。しかし、2015年の韓国経済の実質成長率は2.6%に止まるなど、ここ数年2-3%の低成長にとどまっている。輸出も国内需要も不振を続けている。輸出は15カ月連続で前年割れとなっており、2016年に入ってからだけでも、主力の自動車・電子部品、石油製品、化学品などが前年比二桁のマイナスを続けている。

 輸出全体の25%と対日輸出の5倍の規模に達した最大の輸出先中国からの受注が2016年1~4月で前年比‐12%減少しているのが響いている。中国向け電子部品、自動車部品などの中間財や資本財の輸出減少には中国の「紅色サプライチェーン」と呼ばれる中国サイドの輸入に頼らない自前の生産切り替えも響いている。

 さらに世界的需要の減少に国際競争力の低下も加わって輸出をリードしてきた造船業の凋落が著しい。現代重工業、サムスン重工業、大宇造船海洋など世界的トップメーカーがウォン高の中で中国・日本との価格競争に巻き込まれて大幅赤字に転落した。

 大宇の昨年の赤字額は5兆ウォン強と韓国企業としてはアジア通貨危機時の起亜自動車に次ぐ規模であった。造船業は雇用吸収力が高いので政府は韓国産業銀行、輸銀などを通じた思い切った支援に乗り出した。この支援で両行は資本不足に陥りかねないので6、7兆ウォンの公的資本注入等が予定されている。

 いずれにしても輸出の低迷が韓国経済の最大のリスク要因といえる。ただ仮に世界経済が回復しても、中国における輸入代替の動き、フィリピン、ベトナムなど後発国の追い上げ、韓国自身の高付加価値化戦略の挫折、など構造的要因も大きいだけに輸出の大幅復活は容易ではあるまい。

 国内需要に目を転じると、民間消費、民間設備投資も低迷を続けている。上記のような輸出不振では民間設備が低迷するのは当然である。また民間消費は、政府による特別消費税の引き下げ、家電製品・乗用車にかかる個別消費税引き下げなどの消費刺激策(いずれも2015年までの時限措置であったが、自動車の消費税は再延期)にもかかわらず、今年の第一四半期は‐0.2%(実質GDP寄与度ベース)と落ち込んだ。

 世界経済の停滞、海運・造船業の不振やそれに伴う失業の増加を懸念した消費マインドの悪化に加えて、これまでと同様に消費刺激策の終了とともに先食いされた消費が落ち込むというパターンを繰り返している。

 家計部門では住宅ローンを中心とする家計債務残高(2015年6月末 1,130兆ウォンGDP比76%)の累増も大きな問題である。ソウル、釜山などの大都市で地価上昇を見越した買いが推進力となっている。しかし、一旦、不動産価格が下落に転じれば、財閥の経営悪化よりも国民大衆にとっては大きな問題となる、と韓国当局関係者が懸念していた。

 このような韓国経済の停滞は一言で言えば韓国の潜在成長率が大きく低下したことが原因であり、これを打開するためには一時的な効果しか持たない財政金融政策による総需要喚起策ではなく規制緩和、構造改革が不可欠との認識は韓国当局も認識している。

 朴槿恵政権は労働(若年雇用の拡大策ほか)、公共(公共機関における成果主義導入ほか)、金融(外為規制の大幅緩和ほか)、教育(大学改革ほか)の4大部門の構造改革を掲げてきた。しかし、今年4月の総選挙で与党セヌリ党が過半数を大きく割り込む惨敗(全300議席中123議席)を喫して2017年12月までおよそ一年半の任期を残す朴槿恵大統領は従来の大統領以上にレームダック化が進展しよう。

 従って生産性向上をもたらす構造改革の実行は困難化し、潜在成長率の上昇も望めないため、低成長体質からの脱却は容易ではあるまい。

俵 一郎 (国際金融専門家)

最終更新:6/28(火) 17:30

ニュースソクラ