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入浴支援 保冷車に浴槽、集乳車でお湯運搬 熊本地震の被災地 大分・JA下郷

日本農業新聞 6/28(火) 12:00配信

 大分県のJA下郷は、熊本地震が発生した4月以降、熊本県内の避難所を回って入浴支援を続けている。活躍するのは、野菜や果実を運ぶ2トンの保冷車と、酪農家から生乳を集める4トンの集乳車。保冷車の荷台には浴槽と洗い場を設置し、集乳車のタンクには生乳ではなく湯を積み込んだ。2台セットで毎週のように被災地に出向く、手作りの「お風呂トラック」だ。県をまたいだ“ホットな支援”が、被災者の心身を癒やしている。

毎週、お風呂トラック

 JAは2012年7月の九州北部豪雨で被災した経験から、災害支援に力を入れる。熊本地震の翌日には支援物資を届け、生活用水を供給してきた。入浴支援を始めたのは4月26日から。5月は週2回、6月は週1回、益城町を中心に回っている。集乳車に湯を入れて、JA職員が大分から片道3時間以上をかけて延べ160人の被災者の入浴を支援してきた。

 活動の中心を担うのがJA参事の松本聡雄さん(52)。災害支援に関わる中で、取引先の生活協同組合連合会グリーンコープ連合の役員が言った「お風呂に入っていない人が大勢いるんだよ」との一言が突き動かした。

 「そうか、風呂か」。すぐにアイデアが浮かび、JAならではの「お風呂トラック」造りに取り掛かった。浴室は野菜や果実などを運ぶ2トンの保冷車を活用。荷台を改装し、リサイクルショップで調達した浴槽と洗い場を設置した。本来は冷気を遮断する後部カーテンは、脱衣のための目隠しに、青果物を冷やす冷蔵機能は浴室の冷房に早変わり。猛暑の日でも快適に入浴ができるというわけだ。

 資材はJAにあるものを有効活用したことで、初期費用は8万円で納まった。

 集乳車にポンプをつなげば浴槽にお湯が入る。電源と排水できる場所さえあれば、どこでも入浴ができる仕掛けだ。

 自衛隊による入浴支援は5月で打ち切りになり、足腰が弱い高齢者は「迷惑は掛けられない」と敬遠する人もいる。

 そこでJAは、社会福祉法人グリーンコープなどと連携し、介助スタッフと共に、避難所となっている益城町立広安西小学校を訪問した。介助スタッフの安楽美紀さん(48)は「無料開放の入浴所があるが、整理券をもらうのに3時間かかる。風呂に入るには1時間並ばなければならない。それで入浴できるのは20分。入浴所への行き帰りにも時間がかかり、被災者は苦労している」と明かす。

 入浴支援は地震から2カ月で10回。JAの各部長が支援に加わった。松本参事は「お風呂に入って、気持ち良さそうな表情を見るのが一番うれしい」と喜ぶ。涙を流して喜んでくれた70代の女性もいた。入浴するときは渋々だった小学生から、「ありがとう」の手紙を受け取ったことも忘れられないという。

 「2カ月たっても家はつぶれたまま、状況が変わらない被災者は大勢いる。入浴支援はJAの宣伝でやっているわけではない。最低3カ月は続けたい」と力を込める。(木原涼子)

日本農業新聞

最終更新:6/28(火) 12:00

日本農業新聞