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伝統文化を子どもたちに 日本遺産「三輪崎の鯨踊」

紀伊民報 6月28日(火)16時34分配信

 和歌山県新宮市の「三輪崎郷土芸能保存会」(濱口仁史会長、68人)が、地元の子どもたちに地域の伝統芸能に触れてもらおうと「三輪崎の鯨踊(くじらおどり)」を教える取り組みを長年続けている。県指定無形民俗文化財で、4月に文化庁の日本遺産に認定された「鯨とともに生きる」を構成する文化財の一つ。子どもの頃に教わったという人も保存会に入っており、後継者の育成にもつながっている。

 「三輪崎の鯨踊」は捕鯨とともに始まり、浜で踊った大漁祝いが起源であると伝えられている。銛(もり)に見立てた綾(あや)棒を腰に差し、両手に扇子を持ち網を投げて鯨を取り巻く形を表現する「殿中踊り」と、座りながら綾棒を掲げて上半身で銛突きを表現する「綾踊り」の2曲がある。

 保存会は1973年に発足。毎年9月中旬に地元の三輪崎八幡神社で営まれる例大祭で奉納しているほか、30年以上前から地元の子どもたちにも教える取り組みを続けている。三輪崎幼稚園や三輪崎小学校、光洋中学校を訪問し、小学校では毎年5年生が運動会で鯨踊を披露している。

 三輪崎幼稚園には毎年1回訪れており、このほど保存会のメンバー9人が全園児6人と交流。鯨踊を披露した後、綾棒の使い方や太鼓のたたき方を教え、最後に一緒に踊った。

 体験した中山才輝君(5)は「楽しかった。大きくなったら踊りたい」と笑顔。尾崎いづみ園長も「子どもたちが地域の伝統文化に触れる機会をつくっていただき、すごくありがたい」と話す。

 長年の取り組みによって、保存会には子どもの頃に鯨踊を体験したというメンバーも入っている。若手の一人、尾畑徹さん(31)=新宮市三輪崎=は「小学校の時に習ったので踊り方はだいたい覚えていた。鯨踊は勇壮さが魅力。地域の伝統芸能を守っていきたい」と話す。

 濱口会長は「教えた子どもたちの中から将来的に後継者が誕生してくれたらという思いで取り組んでいる。日本遺産に認定されたことで注目が高まると思うし、少しでも多くの人に三輪崎の鯨踊を知ってもらう良い機会になると思うので、これからも頑張っていきたい」と抱負を語る。

 日本遺産は、地域の歴史的な魅力や特色を通じて日本の文化・伝統を語る物語を認定する文化庁の制度。熊野灘沿岸4市町に伝わる「太地のくじら踊」(太地町)や「河内祭の御舟行事」(串本町)など計19の文化財を基に、古式捕鯨が産業として定着・発展した背景と今に受け継がれている捕鯨文化にまつわる物語を「鯨とともに生きる」として認定している。

最終更新:6月28日(火)16時34分

紀伊民報