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コンピに見るフジロックマジック【検証】フジロックが20年愛され続ける理由 ~レコード会社編~

BARKS 7月2日(土)14時36分配信

6月29日に、ついにフジロック・コンピ『FUJI ROCK FESTIVAL 20 TH ANNIVERSARY COLLECTION』が発売となった。フジロック20周年を記念して登場したコンピレーション・アルバムだが、20年もの歴史を重ねながらこれまで一度も実現しなかった、ありそうでなかったコンピ作品である。

数々の伝説を生み、延べ数百万人の音楽好きに強烈な思い出とインパクトを与え続けてきたフジロックだけに、たった2枚のアルバムでフジロックを象徴するのは土台無理な話なのだけど、だからこそ収録楽曲やラインアップなどはどのようにしてセレクトされ、誰の判断で決定が下ったのか、非常に興味深くもある。

20年の歴史を重ね、今こうして誕生したフジロック・コンピ2作品は、テーマを前期10年と後期10年に分けそれぞれユニバーサル ミュージックとワーナーミュージックからリリースされる。BARKSでは各レーベルの制作担当者を直撃、2人に制作秘話を訊いてみた。

  ◆  ◆  ◆

■ 普段はコンピの参加NGなのに「フジロックならOK」のアーティストが非常に多かった

──おふたりは、フジロックの経験は…

関口裕之(ワーナーミュージック・インターナショナル本部):数えたら8回でした。20年前は高校1年生だったので、雑誌で読んでいたくらいで実際には行けなかったんですが、フジロックはとにかく超楽しいですね。最高です。

──竹野さんは?

竹野竜治(ユニバーサル ミュージックユニバーサル インターナショナル):僕は今年43歳になるんですけど、行ってないのが3回くらい。最初の3年間は仕事と関係なく普通に行ってました。

──さすがディープですね(笑)。これがレコード会社に務める人の“普通”なのでしょうか。

竹野:洋楽の仕事に携わっている人はフジロックに行きますよね。担当アーティストが来たら行かなきゃいけないですし。

──仕事のフリして、楽しんじゃっている気もしますが(笑)。

竹野:ま…24時間のうち仕事じゃない時間もありますからね(笑)。そこはやっぱりタイムテーブルとの葛藤が。観られる時間があったら少しでも観たいとか、その場の空気を感じたいみたいな。

関口:これだけのアーティストが一堂に会すことってないですから。僕は毎年発表されると真っ先に携帯のカレンダーでキープするんです。今年はこの週だ、と。

──フジロッカーは、フジロックを中心に年間予定を組みますからね。

関口:そこの有給を取るだけのために、公務員になった友達がいますよ。それ以降は皆勤で毎年自転車で参加しています。

──本末転倒人生、ステキです(笑)。やはりそれだけフジロックって特別なものなんでしょうか。

竹野:特別なもの…うーん、そうですね。海外ではウッドストックに始まり色んなフェスがありますけど、こういうものが日本でもあの時代に始まったという意味では特別かもしれないです。当時、凄く衝撃的でしたから。

関口:これだけすごい特別なことが当たり前のように毎年あることに、麻痺しちゃっているかもしれないですけど。

──今思う、フジロックの魅力って何ですか?

関口:まず、100%身をゆだねても絶対楽しい。それは何度か行くとわかってきます。初めて行った時は分からなくて「なんでこんな暑いんだろ」「なんでめっちゃ雨降るの」って思うかもですけど、それを楽しみ始めるポイントがあると思うんです。20年を経て、フジロックにはいろんな楽しみ方があることに気づいてきました。逆に言うと、一発目の新鮮な感じは強烈に覚えてますけどね。これからあの感覚を味わう人は、逆にいいなあって思います(笑)。

──「まともにステージは見ていないけど、ゆったりとお酒を飲んで楽しい」みたいな参加もアリですよね。

竹野:それでもいいんです。一方真剣に観るときもあって、その自由な感じがすごくいい。そこは非日常ですから、ただボケーっとしてても凄く気分がいいというか。

──そんなフジロックのコンピですが、そもそも誰の発案なんですか?

竹野:自然発生です。SMASH(フジロック主催会社)さんと弊社のスタッフが盛り上がって、もう20年だねみたいな話になってそこから。色んなレコード会社さんと話を進めて、最終的に前半10年を弊社、後半10年をワーナーさんで作ることになりました。ソニーさんには音源のライセンスでむちゃくちゃ助けていただきました。

──制作にあたっては、アーティスト/楽曲のセレクトの難しさって並じゃなかったでしょう?

竹野:難しかったんですけど、基本的にみんなの記憶に残っているアーティストをたくさん入れようと。そうなると必然的に各ステージのヘッドライナーに近い人が基準になってくる。あとは、あれはすごかったという伝説を生んだ人は入れようという話もあり、それを共有しながら作った感じですね。

──フジロックを彩ったみんなの総意のようなもの、ですね。

竹野:そうですね。ただ、実際に制作をしたのは僕らふたりなので、僕らの意図っていうのがけっこう入っている(笑)。これはやっぱり入れとかなきゃな、みたいな。選曲は楽しかったですよ。CDって収録時間に限界があるので、どれ削りゃいいんだろ、みたいな。

──許諾も大変でしょう?

竹野:コンピには絶対参加しないアーティストも多いので諦めざるを得ないところもあるんですが、フジロックに関してはアーティストが持っている愛情の強さをすごく感じました。普段はNGの人が「フジロックならOK」してくれた人が非常に多かった。フジロックってすごいなって改めて思いました。

──出演アーティスト自身がフジロックを楽しんでいますよね。

関口:出演者とオーディエンスとの分け隔てがない感じがします。飯食ったりしていてもみんな優しく見守っていてくれているんですよね。パティ・スミスが普通に歩いていたりとか。ロン・セクスミスを担当していた時は、彼が他のアーティストのステージを観たいと言ったので一緒に山を歩きましたよ。アーティストもお客さんみたいに楽しんでるんじゃないかなあ。

──種のフジロックマジックですね。

関口:楽しくなるんですよね。雨が降ってきたり夜寒かったりもするんだけど、でもそれがエンターテインメントな瞬間みたいなの、ないすか?

竹野:それすら楽しむみたいな?

関口:ご飯食べている時、すごい雨が降ってきたのにもかかわらずそのまま食べてるんです。この人たち最高だなと思って。

──普段の生活ではあり得ない。

関口:吹っ切れる場所なのかもしれないです。そういう魔法がありますよね。

竹野:あります。僕も基本的にはすっごいインドア派で、キャンプに行ったりとか絶対ないんですけど(苦笑)、フジロックはやっぱ行きたい。その日のためだけにレインコートのちょっといいやつを買ったり、普段絶対使わないし、レインブーツなんて全く使わないんですけど、ちゃんと持っていったりする(笑)。

──フジロックが放つ魅力ですね。

竹野:「毎年どんなラインナップでも必ず行く」という人を増やしたいというのがフジロックの理念にあると思うんですけど、僕は逆に、ちゃんと毎年よく考えてこれだけのラインナップを出し続けてきたなと思いますよ。

関口:やっぱり音楽ありきですよね。もちろん久しぶりに会った人とゆっくり話をするとか、のんびりするとかもあるんですけど、素晴らしいラインナップを素晴らしい場所でやっていることが徹底されている。この20年間の洋楽の本流が、ここで提示されていることがコンピを作って分かりました。普段都会で働いていて緑を見る機会もなかなかない人が、そうじゃない所に行って音楽を楽しめるのはとても大きなことですよ。

■ 納得いくものが完成するか心配で寝れなかったです(笑)

──フジロックが作ってきた日本の洋楽シーンを、スポットライト的に切り取ったのがこのコンピ作品なんですね。

関口:であればありがたいですね。我々もけっこうドキドキしながら作ったんで。これで大丈夫かな?とか

──そもそも正解もありませんけど。

関口:入らない曲がいっぱいあって…ワーナー盤には20曲入っているんですけど、これでも相当外したので。でもこれを聴いて「行ったことないけど、フジロックにちょっと行ってみようかな」って思ってくれるとハッピーですね。

竹野:我々からのフジロックへの最大限のリスペクトであることには変わりないです。ユニバーサル盤にザ・キラーズの「Mr. Brightside」が入っているんですけど、あの時のキラーズはそれが初来日でまだ日本盤CDも出てなかった。でも彼らが出てきたらお客さんがぶわーっと増えて、すっごい盛り上がったんです。だから、ああいう瞬間が観れるフジロックの魅力をラインアップで伝えたかった。ザ・ミュージックもレッドマーキーの割と早い時間だったけど入場規制ですごかったなあ。

関口:曲はどうやって決めました? 死ぬほど悩みませんでした…?

竹野:曲選びは死ぬほど悩んだんですけど、曲順は直感。ただジョー・ストラマーだけは最後に入れたかった。1曲目フー・ファイターズだな、とか。

関口:僕もザ・ポーグスだけは最後に入れたいっていうのがあった。

──年代順ではないんですね。

竹野:はい。自分が新幹線で苗場に向かっているところとか、車で向かってるときに聴いてるイメージとか、そんなことを考えながら作りました。

──個人の思いが意外と入っちゃってる(笑)。

竹野:あんまり大きな声で言えないですけど…入ってますね(笑)。

関口:入ってますよねぇ。見る人が見れば趣味や志向が分かりますから、ちょっと恥ずかしいです(笑)。

竹野:ここだけの話ですけど、自分で選曲しておいて、ちょっとアッパーな曲ばっかりにしすぎたかなと(笑)。

関口:ソニック・ユース「Sunday」とかは、性格出てると思いますよ。

竹野:そうそう(笑)。でも本当はその次にクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ「No One Knows」を入れてたんですよ。

関口:最高じゃないですか!

竹野:アメリカン・オルタナティブ枠で入れたかったけど、どうしてもCDには入らなくて。だって、フーファイがいて、ソニック・ユースがいて、イギー・ポップがいればクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジは入れなきゃいけないでしょ。その流れがあったらやっぱりプライムスだろうみたいな…完全に趣味ですよね。デジタルではここが活かせたのでよかったな、と(笑)。

──これまでもたくさんのコンピを作ってきたおふたりですが、今回の思い入れは随分深いもののようですね。

竹野:責任も重大でしたね。

関口:やるって言ってから一週間後くらいに「これはヤバイ」と。納得いくものが完成するか心配で寝れなかったです(笑)。

竹野:結局これで良かったのか?…とかありましたよね。でも、「フジロックすげぇな」という僕らのリスペクトがあって、それが素直に出て、素直に出過ぎた部分がちょっと主観として出てるみたいな(笑)、そういう感じじゃないですかね。

──SMASH側のチェックってあったんですか?

竹野:もちろんトラックリストは見せましたけど、特にそこに関してはお任せしますみたいな感じで、とても信頼してくださっていた。

関口:そこは本当に嬉しかった。

竹野:アートワークも「素晴らしい、ありがとうございます」みたいな感じで、一発OK。

──信頼関係ですね。

関口:あとね、ライナーノーツとして日高さんが解説している文はぐっときました。

竹野:日高さんが最初10年、後10年を解説してるんです。

関口:そこにはアーティストにまつわるエピソードも出てくるんですけど、それが選曲に反映されたりもしています。中に歴代のポスターのデザインが入ってるんですけど、それも見てて飽きないですよ。思い出すなあ。

──許諾の問題で収録できないものもあるわけで、収録曲を見て「もう、わかってねぇなあ」って言う人もいるでしょうね。

関口:それはしょうがないですよ。

竹野:逆に訊きたいです。それを募集、試作してもいいかもしれない(笑)。じゃあ貴方のフジロックを教えてください、って。このコンピ、“フジロックの20年、僕らの20年”というキャッチにしたんですけど、「あの時こうだったんだよね」みたいな話を思い出して、みんながフジロック談義をできる機会になればいいなと思います。

──プレイリスト作るのは勝手ですからね。

竹野:俺のフジロック・コンピみたいな(笑)。みんながラインナップを挙げたら面白いかもしれないですね。

関口:実際、僕、作ってますからね(笑)。

竹野:みんなで自慢しあいませんか?みたいな企画、今度やりましょうか。「我々が審査します」とか言いながら「負けました」ってなったりして(笑)。

──2017年の出演ラインナップの妄想もいいですね。「俺がSMASHだ」企画。

関口:それ最高だなあ。

竹野:とにかくこの2枚があれば、居酒屋で何時間でも話できますよ。是非楽しんでください。

  ◆  ◆  ◆

BARKSでこのフジロック特集を始動した当初、「フジロックの敷居は高い」と言われているのであれば、その要因のひとつになっているのがフェスの主役である“洋楽”なのかもしれないという仮定がよぎった。もはや当たり前になっている豪華かつ時代性に富んだ海外アーティストのラインナップは、フジロック最大の魅力である。だが、若者の洋楽離れが唱えられて久しい今、普段洋楽を聴かない人々にとっては、その重要性を理解するのはなかなか難しいことなのではないだろうか……そんな難題を胸に、取材に向かったのである。

だがこのインタビューから、洋楽を生業にしている人々であっても、フジロックの前ではいかに無邪気な音楽ファンに戻ってしまうかがお分かりいただけたのではないだろうか。そんなマジカルな空間こそがフジロックだ。そのフジロックの20年を理解するバイブルとして、今回のコンピは是非手にとってみて欲しい。日本を代表するレコード会社の洋楽部が、自分の趣味性を入れてしまうほど熱心に作り上げた本作が、必ずや新たな音楽の扉を叩いてくれることだろう。そして二人が提案したように、ラインナップに異を唱えるフジロッカーはオリジナル版を構想し、自分とフジロックの濃密な関係性を楽しんではいかがだろうか。

取材・文:BARKS編集長 烏丸哲也

  ◆  ◆  ◆

『FUJI ROCK FESTIVAL 20TH ANNIVERSARY COLLECTION (1997-2006)』
2016年6月29日発売
UICO-4051 ¥2,500+税
CD及びデジタル・アルバムとして発売(収録楽曲はCD、デジタルによって異なります)
発売元:ユニバーサル ミュージック合同会社

【TRACK LIST】
1.Foo Fighters / Everlong
2.Beck / Where It's At
3.The Chemical Brothers / Hey Boy Hey Girl
4.Jack Johnson / The Horizon Has Been Defeated
5.Primal Scream / Rocks
6.The Killers / Mr. Brightside
7.Sonic Youth / Sunday
8.Elvis Costello / Alison
9.Scissor Sisters / I Don't Feel Like Dancin'
10.Weezer / El Scorcho
11.Elliott Smith / Happiness / The Gondola Man
12.Iggy Pop / Lust For Life
13.Kula Shaker / Hey Dude
14.Massive Attack / Special Cases
15.Underworld / Born Slippy (NUXX) (Short)
16.Ocean Colour Scene / Hundred Mile High City
17.The Music / The People
18.Joe Strummer & The Mescaleros / Tony Adams
■HP www.universal-music.co.jp/international

『FUJI ROCK FESTIVAL 20TH ANNIVERSARY COLLECTION (2007-2016)』
2016年6月29日発売
WPCR-17388 ¥2,500+税
CD及びデジタル・アルバムとして発売(収録楽曲はCD、デジタルによって異なります)
発売元:株式会社ワーナーミュージック ジャパン

【TRACK LIST】
1.Red Hot Chili Peppers / Dani California
2.JET / Are You Gonna Be My Girl
3.Fun. / We Are Young (feat. Janelle Monáe)
4.Jason Mraz / I'm Yours
5.Coldplay / Yellow
6.Twenty One Pilots / Guns For Hands
7.The John Butler Trio / Better Than
8.Lily Allen / Smile
9.Mutemath / Blood Pressure
10.Foals / Balloons
11.The Stone Roses / She Bangs The Drums
12.Ride / Chelsea Girl
13.Ash / Shining Light
14.Primal Scream / Can't Go Back
15.My Bloody Valentine / Only Shallow
16.JUSTICE / D.A.N.C.E.
17.Skrillex / Bangarang (feat. Sirah)
18.MGMT / Kids
19.The Flaming Lips / Do You Realize??
20.The Pogues / Fiesta
■HP wmg.jp/artist/fujirock20th/

<FUJI ROCK FESTIVAL'16>
2016年7月22日(金)23日(土)24日(日)
@新潟県 湯沢町 苗場スキー場
※各券種、受付などの詳細はオフィシャルサイトへ http://www.fujirockfestival.co

最終更新:7月2日(土)14時36分

BARKS