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3歳までは本当に大事な時期。3歳児神話ってホント?

ベネッセ 教育情報サイト 6月29日(水)10時0分配信

教育評論家の親野智可等先生が、保護者からの質問にお答えします。

【質問】
2歳の子どもを育てている専業主婦ですが、パートの仕事に出ようか迷っています。保育園も見つかったのですが、実母に「3歳までは本当に大事な時期。だから、ずっと母親のもとで育てたほうがいい」と言われます。でも、このごろ育児に疲れ気味で、ちょっとしたことでイライラして叱ってしまいます。

相談者・もともともとこ さん(2歳 女子)

【親野先生のアドバイス】
もともともとこ さん、拝読しました。

「3歳までは本当に大事な時期。だから、ずっと母親のもとで育てたほうがいい」という文言は、3歳児神話の典型といえます。この文言は前半と後半に分けて考える必要があり、私はその前半「3歳までは本当に大事な時期」には賛成ですが、後半「ずっと母親のもとで育てたほうがいい」には反対です。そして、これは大多数の専門家の意見でもあります。

まず前半についてです。

人生の最初期であるこの年代は、人間の土台を作る本当に大事な時期です。この時期には、毎日の生活の中で「自分は大切にされている。愛されている」と実感できるようにしてあげることが極めて重要です。それによって、子どもは基本的信頼感を持てるようなります。基本的信頼感とは、自分に対する信頼と、他者や世界に対する信頼の2つです。

前者は、「自分は愛されている。自分は大切な存在なんだ。自分は存在していいんだ」と思えることです。後者は、「他者は信頼できる。自分を取り巻く世界は信頼できる。自分は安心していいんだ」と思えることです。基本的信頼感が持てれば、自分も他者も大切にしながら、人生に夢を持って前向きに生きていくことができます。

次に後半についてです。

「だから、ずっと母親のもとで育てたほうがいい」という部分ですが、その母親がイライラして毎日叱ってばかりいたらどうでしょうか?

親は「愛があるから叱るのだ。この子のために叱るのだ」と言うかもしれませんが、これは子どもには通用しません。なぜなら、愛情が実感できないからです。

子どもは、「自分は歓迎されていない。愛されていないようだ。自分は大切な存在ではないのだ。自分は存在しないほうがいいのだ」と思うようになってしまいます。これは自分に対する不信感です。
同時に、「他者は自分を攻撃してくる。自分を取り巻く世界は恐ろしいところだ。決して心を許してはいけない。自分の身は自分で守らなければ」と思うようになってしまいます。これは、他者や世界に対する不信感です。

自分に対する不信感と、他者や世界に対する不信感、この2つは基本的不信感といわれるものであり、基本的信頼感とは正反対のものです。このような基本的不信感を持ってしまうと、自分も他者も信頼できないわけですから、夢に向かって前向きにがんばる力も出ませんし、他者に対しても不信に満ちた対応をすることになります。時には攻撃的な言動に走ってしまうこともあります。

イライラしている大人につきっきりで育てられることは、子どもにとって最大の悲劇です。イライラがつのれば、結局子どもをたたくなどの虐待に走ってしまうことになりかねません。3歳児神話が虐待の温床になっているといわれるゆえんです。

そうなる前に、仕事を始めるなどして、子どもと離れる時間を持つことは、とてもよいことです。子どもと離れる時間を確保すれば、息抜きできてリフレッシュされます。そうすれば心が安定して、また子どもに愛情深く接することができます。子どもにしてみても、保育者にたっぷり愛情を注いでもらうことができれば、イライラした母親のそばにいるよりよほど幸せな時間を過ごせます。

もちろん、親が「子どもといると本当に幸せ。ずっと子どもといてもイライラしない。常に優しく接することができる」という人なら自分のもとにおいて育てたほうがいいかも知れません。それに勝る環境はないのですから。でも、そういう人がどれだけいるでしょうか?

ずっと子どもといればストレスがたまってくるのは当たり前のことです。どんなに愛し合っている恋人同士でもずっと一緒にいることはできません。適度に離れることで愛が深まるのです。

それに、人はみんな生まれつきの資質がありますので、ケアリングやナーサリングに向いている人ばかりではありません。向いていないからといって、「だから自分はダメなんだ」などと思う必要はありません。そういう人はそういう人で、バリバリ働く姿をうらやましがられているのです。

私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
皆さんに幸多かれとお祈り申し上げます。

ベネッセ 教育情報サイト

最終更新:6月29日(水)10時23分

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