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人生揺さぶる奨学金の返済苦 「給付型」創設の展望は

福井新聞ONLINE 6月29日(水)8時9分配信

 大学生、短大生の2人に1人が利用している奨学金は、将来返済が必要な「貸与型」がほとんどだ。非正規雇用の増加などを背景に、返済が滞ったり、生活苦に陥ったりする人も少なくない。参院選で与野党とも返済義務のない「給付型」創設を打ち出しているが、教育を受ける権利を保証する制度になるだろうか。

 仁愛大(福井県)の黒澤竜聖さん(20)は、月額約8万円の授業料のうち、奨学金で約5万円をまかなっている。残りは週3日、スーパーでアルバイトして捻出している。「遊ぶお金はほとんど残らない。何とかやりくりしているけれど厳しいっすね」

 福井県明るい選挙推進青年活動隊(CEPT)の一員として活動する福井県立大の本多鼓さん(19)も、月額約3万円の奨学金を受けている。「周りにも何人かもらっている学生がいる。将来(返済が)大丈夫かなって思う時もある」

 日本学生支援機構の2014年度調査によると、全国の大学生の51・3%(学部昼間部)が何らかの奨学金を利用している。同機構の奨学金利用者で返済が1日以上遅れた人は約9%に当たる約32万8千人。うち3カ月以上の遅れが約17万3千人に上る。

 奨学金問題対策全国会議の幹事、堺啓輔弁護士(43)=福井県=は「返済を考えると、就活で思い切った挑戦ができなくなっている。結婚や出産を控えたり、連帯保証人になった親が定年後の年金で払い続けたりする例も目立つ」と話し、利用者本人や親の人生設計にも影響を及ぼすと指摘する。

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 3年前に関西の国立大大学院の博士課程を修了した福井県出身の男性(30)は今年、ある私立大で任期付きの特任助教に就いた。低所得を理由に猶予されていた奨学金の返済が10月から始まる。大学入学から6年間の借入額は約800万円。「生活はぎりぎりのはず」。退職金で学費を支えた母親(66)は心配顔だ。

 一時は大手民間企業から内定を得た。大学の研究者になる道をあきらめきれずに結局は辞退した。非常勤講師を掛け持ちする生活。女性と交際しても将来の見通しが立たずに結婚話は全く出なかった。

 年収は今も500万円に届くかどうか。毎月4、5万円ずつ奨学金を返し、新任地で必要になった乗用車の維持費ものしかかる。「年金だけでは苦しい時に助けてあげられない。まだ仕事しないと」。母親は週3回、事務のアルバイトを続けている。

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 奨学金を巡る厳しい状況を受け、政府は「1億総活躍プラン」で給付型の創設方針を盛り込み、民進党など野党も導入を公約に掲げた。本多さんは「もっと早くつくってほしかったというのが正直な気持ち。まだ弟がいるから必ず実現してほしい」と訴える。

 堺弁護士は「貸与型にも返済免除規定はあるが、基準が非常に厳しくほとんどの人が当てはまらない。公約で各党が挙げた給付型の創設も、財源は不透明で制度の中身も不明。今後の議論を注視する必要がある」と強調した。

■奨学金に関する各政党の政策

【自民】
高校生らへの奨学給付金充実と、給付型奨学金創設の具体的検討。
【民進】
給付型奨学金の創設。利子をなくし、無理なく返済できる制度に。
【公明】
給付型奨学金を創設。低所得世帯は無利子奨学金の学力基準を撤廃。
【共産】
大学授業料の半減。月額3万円の給付制奨学金を70万人規模で創設。
【おおさか維新】
教育の全課程無償化を憲法の原則に定め、恒久立法と予算措置の義務化。
【社民】
大学、大学院の学費無償化。奨学金は無利子を原則。給付型奨学金の創設。
【生活】
給付型奨学金の創設、貸与型奨学金の無利子化、償還減免。
【こころ】
返済不要奨学金の充実など経済格差で不平等が生じない制度の確立。
【改革】
有利子の貸与型奨学金の無利子化、給付型奨学金の創設。

福井新聞社

最終更新:6月29日(水)8時9分

福井新聞ONLINE